]> git.donarmstrong.com Git - lilypond.git/blob - Documentation/ja/learning/tweaks.itely
Issue 3165: MultiMeasureTextEvent created by i.e. R1-1 did not take tweaks
[lilypond.git] / Documentation / ja / learning / tweaks.itely
1 @c -*- coding: utf-8; mode: texinfo; documentlanguage: ja -*-
2
3 @ignore
4     Translation of GIT committish: c95106f1c57562c3f863edb0221cb7892438f6db
5
6     When revising a translation, copy the HEAD committish of the
7     version that you are working on.  For details, see the Contributors'
8     Guide, node Updating translation committishes..
9 @end ignore
10
11 @c \version "2.17.11"
12
13 @c Translators: Yoshiki Sawada
14 @c Translation status: post-GDP
15
16
17 @node 出力を調整する
18 @chapter 出力を調整する
19 @translationof Tweaking output
20
21 この章では出力を変更する方法について議論します。@c
22 LilyPond は本当にさまざまな設定が可能です。@c
23 もしかすると出力のすべての部分が変更されるかもしれません。
24
25 @menu
26 * 調整の基本::
27 * 内部リファレンス マニュアル::
28 * オブジェクトの見た目::
29 * オブジェクトの配置::
30 * オブジェクトの衝突::
31 * 更なる調整::
32 @end menu
33
34 @node 調整の基本
35 @section 調整の基本
36 @translationof Tweaking basics
37
38 @menu
39 * 調整の紹介::
40 * オブジェクトとインタフェイス::
41 * オブジェクトとプロパティの命名規則::
42 * 調整手段::
43 @end menu
44
45
46 @node 調整の紹介
47 @subsection 調整の紹介
48 @translationof Introduction to tweaks
49
50 @q{調整} は入力ファイルの解釈中にとられるアクションを変更し、@c
51 譜刻される楽譜の見た目を変更するためにユーザが利用可能なさまざまな手段を指す
52 LilyPond の用語です。@c
53 いくつかの調整はとても簡単に使うことができます。@c
54 他の調整はもっと複雑です。@c
55 しかしながら、調整のために利用可能な手段を組み合わせることによって、@c
56 ほとんどいかなる望みの見た目を持った楽譜でも譜刻することが可能になります。
57
58 このセクションでは、調整を理解するのに必要な基礎となるコンセプトを@c
59 カバーします。@c
60 その後、コピーするだけで効果が得られる作成準備が完了している@c
61 さまざまなコマンドについての情報を提供し、@c
62 同時に、あなたがあなた自身の調整を開発する方法を学べるように@c
63 それらのコマンドがどのように構築されるのかを示します。
64
65 この章を読み始める前に、あなたは @ref{コンテキストとエングラーバ} を@c
66 再読することを望むかもしれません。@c
67 なぜなら、コンテキスト、エングラーバとそれらの中に含まれるプロパティは@c
68 調整について理解し、調整を構成するための基礎だからです。
69
70
71 @node オブジェクトとインタフェイス
72 @subsection オブジェクトとインタフェイス
73 @translationof Objects and interfaces
74
75 @cindex object (オブジェクト)
76 @cindex grob (グラフィカル オブジェクト)
77 @cindex spanner (スパナ)
78 @cindex interface (インタフェイス)
79 @cindex properties, object (オブジェクト プロパティ)
80 @cindex object properties (オブジェクト プロパティ)
81 @cindex layout object (レイアウト プロパティ)
82 @cindex object, layout (レイアウト プロパティ)
83
84 調整には LilyPond プログラムの内部オペレーションと構造体への変更も含まれます。@c
85 そのため、我々はまずそれらの内部オペレーションと構造体を記述するために@c
86 使用されるいくつかの用語を導入しなければなりません。
87
88 @q{オブジェクト} という用語は入力ファイルを処理している最中に LilyPond に@c
89 よってビルドされる多くの内部構造体を参照するために使われる汎用的な用語です。@c
90 LilyPond が @code{\new Staff} のようなコマンドに遭遇した場合、@c
91 タイプ @code{Staff} の新しいオブジェクトを構築します。@c
92 その @code{Staff} オブジェクトは、その譜のコンテキスト内部で機能するために@c
93 割り当てられているエングラーバの詳細とともに、その譜に関連付けられている@c
94 すべてのプロパティ -- 例えば、その譜の名前、調号 -- を保持します。@c
95 同様に、@code{Voice} オブジェクト、@code{Score} オブジェクト、@c
96 @code{Lyrics} オブジェクトなどの他のすべてのコンテキストのプロパティを@c
97 保持するためのオブジェクトが存在し、さらに、小節線、符頭、タイ、強弱記号などの@c
98 すべての記譜要素を表すためのオブジェクトも存在します。@c
99 各オブジェクトはそれ自体のプロパティ値のセットを持ちます。
100
101 いくつかのタイプのオブジェクトには特別な名前が与えられています。@c
102 符頭、符幹、スラー、タイ、運指記号、音部記号などの譜刻される出力上の記譜要素を@c
103 表すオブジェクトは @q{レイアウト オブジェクト} と呼ばれ、@c
104 しばしば @q{グラフィカル オブジェクト}
105 あるいは短くして @q{グロッブ (Grob: GRaphical OBject)} と呼ばれます。@c
106 これらのオブジェクトも上記の汎用的な観点から見るとオブジェクトであり、@c
107 それゆえ、それらもまたそれらのオブジェクトに関連付けされたプロパティ --
108 そのオブジェクトの位置、サイズ、色など -- を持ちます。
109
110 いくつかのレイアウト オブジェクトも特別です。@c
111 フレージング スラー、クレッシェンド、オッターバ記号、@c
112 他の多くのグラフィカル オブジェクトが置かれる場所は一点ではありません
113  -- それらは開始点、終了点、そしておそらくそれらの形に関係する@c
114 他のプロパティを持ちます。@c
115 これらのオブジェクトのように形が伸長されるオブジェクトは
116 @q{スパナ (Spanners)} と呼ばれます。
117
118 @q{インタフェイス} とは何なのかという説明が残っています。@c
119 多くのオブジェクト -- たとえそれらが非常に異なっていたとしても --
120 は同じ方法で処理される必要がある共通特徴を共有します。@c
121 例えば、すべてのグラフィカル オブジェクトは色、サイズ、位置などを持ち、@c
122 これらのプロパティはすべて LilyPond が入力ファイルを構文解釈する最中に@c
123 同じ方法で処理されます。@c
124 これらの内部オペレーションを簡潔にするために、これらの共通アクションと@c
125 プロパティは 1 つのグループとして
126 @code{grob-interface} と呼ばれるオブジェクトにまとめられています。@c
127 これと同じような共有プロパティのグループ化が他にも多くあり、@c
128 それぞれに対して最後に @code{interface} が付く名前が与えられています。@c
129 そのようなインタフェイスの総数は 100 を越えます。@c
130 我々は後でなぜこれがユーザにとって利益となり、役に立つのかを見ていきます。
131
132 これらは、我々がこの章で使用するオブジェクトと関係する主要な用語です。
133
134
135 @node オブジェクトとプロパティの命名規則
136 @subsection オブジェクトとプロパティの命名規則
137 @translationof Naming conventions of objects and properties
138
139 @cindex naming conventions for objects (オブジェクトの命名規則)
140 @cindex naming conventions for properties (プロパティの命名規則)
141 @cindex objects, naming conventions (オブジェクトの命名規則)
142 @cindex properties, naming conventions (プロパティの命名規則)
143
144 我々は以前にも @ref{コンテキストとエングラーバ} で@c
145 いくつかのオブジェクト命名規則を見てきました。@c
146 ここで参照のために、最も一般的なオブジェクトとプロパティをリストアップし、@c
147 それに加えてそれらの命名規則と実際の名前の例を挙げます。@c
148 何らかの大文字のアルファベットを表すために @q{A} を使用し、@c
149 いくつかの小文字のアルファベットを表すために @q{aaa} を使用しています。@c
150 他の文字は実際の命名でもそのまま使用されます。
151
152 @multitable @columnfractions .33 .33 .33
153 @headitem オブジェクト/プロパティのタイプ
154   @tab 命名規則
155   @tab 例
156 @item コンテキスト
157   @tab Aaaa や AaaaAaaaAaaa
158   @tab Staff, GrandStaff
159 @item レイアウト オブジェクト
160   @tab Aaaa や AaaaAaaaAaaa
161   @tab Slur, NoteHead
162 @item エングラーバ
163   @tab Aaaa_aaa_engraver
164   @tab Clef_engraver, Note_heads_engraver
165 @item インタフェイス
166   @tab aaa-aaa-interface
167   @tab grob-interface, break-aligned-interface
168 @item コンテキスト プロパティ
169   @tab aaa や aaaAaaaAaaa
170   @tab alignAboveContext, skipBars
171 @item レイアウト オブジェクト プロパティ
172   @tab aaa や aaa-aaa-aaa
173   @tab direction, beam-thickness
174 @end multitable
175
176 これから見ていくのですが、タイプが異なるオブジェクトのプロパティは@c
177 異なるコマンドによって変更されます。@c
178 そのため、プロパティの名前からオブジェクトの種類を識別できるようになると@c
179 役に立ちます。
180
181
182 @node 調整手段
183 @subsection 調整手段
184 @translationof Tweaking methods
185
186 @cindex tweaking methods (調性手段)
187
188 @strong{\override コマンド}
189
190 @cindex override command (override コマンド)
191 @cindex override syntax (override 構文)
192
193 @funindex \override
194 @funindex override
195
196 我々はすでに @ref{コンテキスト プロパティを変更する} と
197 @ref{エングラーバを追加 / 削除する} で @strong{コンテキスト} のプロパティを@c
198 変更したり、@strong{エングラーバ} を追加/削除したりするために使用するコマンド
199 @code{\set} と @code{\with} を見てきました。@c
200 ここでは更に重要ないくつかのコマンドについて見ていきます。
201
202 @strong{レイアウト オブジェクト} のプロパティを変更するためのコマンドは
203 @code{\override} です。@c
204 このコマンドは LilyPond の奥深くにある内部プロパティを@c
205 変更しなければならないため、@c
206 これまで見てきたコマンドのように単純な構文ではありません。@c
207 どのコンテキストの中にあるどのオブジェクトのどのプロパティを@c
208 変更しなければならないのか、そこにセットする新しい値を何にするのかを@c
209 正確に知っている必要があります。@c
210 どのようにこれを行うのかを見ていきましょう。
211
212 このコマンドの一般的な構文は以下のようなものです:
213
214 @example
215 \override @var{Context}.@var{LayoutObject} #'@var{layout-property} =
216 #@var{value}
217 @end example
218
219 @noindent
220 これは @var{Context} コンテキストのメンバである
221 @var{LayoutObject} という名前のレイアウトの
222 @var{layout-property} という名前のプロパティに値 @var{value} をセットします。
223
224 必要とされているコンテキストが明白であり、それが最下位レベルのコンテキストである
225 -- つまり、@code{Voice}, @code{ChordNames} や @code{Lyrics} である
226 -- 場合、その @var{Context} は省略可能可能であり (そして通常は省略されます)、@c
227 この後の例の多くでも省略します。@c
228 後ほど、コンテキストを指定しなければならない場合について見ていきます。
229
230 これから後のセクションでは広範囲に亘るプロパティとそれらの値を扱います
231 -- @ref{Types of properties} を参照してください。@c
232 しかしながら、このセクションではそれらのフォーマットとコマンドの使い方を示す@c
233 ために、容易に理解できる簡単なプロパティと値をいくつか使用してみるだけです。
234
235 今や、レイアウト プロパティの前に置かれなければならない @code{#'} や@c
236 プロパティ値の前に置かれなければならない @code{#} について心配する必要は@c
237 ありません。@c
238 これらは常にそのような形式で正確に記述されなければなりません。@c
239 これは調整では最も一般的に使用されるコマンドであり、この章の残りの部分の@c
240 大半ではプロパティ (変更コマンド) の使用方法を示すための例を記述しています。@c
241 ここでは符頭の色を変更する簡単な例を挙げます:
242
243
244 @cindex color property, example (color プロパティの例)
245 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
246
247 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
248 c4 d
249 \override NoteHead.color = #red
250 e4 f |
251 \override NoteHead.color = #green
252 g4 a b c |
253 @end lilypond
254
255 @strong{\revert コマンド}
256
257 @cindex revert command (revert コマンド)
258
259 @funindex \revert
260 @funindex revert
261
262 一旦オーバライドされると、そのプロパティは再度オーバライドされるか
263 @code{\revert} コマンドに遭遇するまで新しい値のままでいます。@c
264 @code{\revert} コマンドは以下の構文を持ち、@c
265 プロパティの値をオリジナルのデフォルト値に戻します。@c
266 何度か @code{\override} コマンドが発行されている場合は、@c
267 前の値に戻すわけではないということに注意してください。
268
269
270 @example
271 \revert @var{Context}.@var{LayoutObject} #'@var{layout-property}
272 @end example
273
274 繰り返しますが、@code{\override} コマンドでの @var{Context} と同様に、@c
275 多くの場合で @var{Context} を記述する必要はありません。@c
276 以下の例の多くで、@var{Context} は省略されます。@c
277 ここでは、最後の 2 つの音符の符頭の色をデフォルトに戻します:
278
279 @cindex color property, example (color プロパティの例)
280 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
281
282 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
283 c4 d
284 \override NoteHead.color = #red
285 e4 f |
286 \override NoteHead.color = #green
287 g4 a
288 \revert NoteHead.color
289 b4 c |
290 @end lilypond
291
292 @strong{\once 接頭辞}
293
294 @funindex \once
295 @funindex once
296
297 @code{\override} コマンドと @code{\set} コマンドには両方とも@c
298 接頭辞 @code{\once} が付く可能性があります。@c
299 これはその後に続く @code{\override} や @code{\set} コマンドを@c
300 その場一回限り有効にし、その後にそのプロパティの値をデフォルト値に戻します。@c
301 上と同じ例を使って、以下のように 1 つだけの音符の色を変更することができます:
302
303 @cindex color property, example (color プロパティの例)
304 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
305
306 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
307 c4 d
308 \override NoteHead.color = #red
309 e4 f |
310 \once \override NoteHead.color = #green
311 g4 a
312 \revert NoteHead.color
313 b c |
314 @end lilypond
315
316 @strong{\overrideProperty コマンド}
317
318 @cindex overrideProperty command (overrideProperty コマンド)
319
320 @funindex \overrideProperty
321 @funindex overrideProperty
322
323 オーバライド コマンドには @code{\overrideProperty} という@c
324 もう 1 つのフォーマットがあり、時々必要となります。@c
325 完璧を期すためにここでこれに言及しましたが、@c
326 詳細は @rextend{Difficult tweaks} を参照してください。
327 @c Maybe explain in a later iteration  -td
328
329 @strong{\tweak コマンド}
330
331 @cindex tweak command (tweak コマンド)
332
333 @funindex \tweak
334 @funindex tweak
335
336 利用可能な最後の調整コマンドは @code{\tweak} です。@c
337 これは同じ音楽タイミングで発生するいくつかのオブジェクトのうち、@c
338 1 つのオブジェクトだけを選択してプロパティを変更したい場合に@c
339 使用します
340 -- 例えば、和音の中にある 1 つの音符のプロパティを変更する場合です。@c
341 @code{\override} コマンドを使用すると和音の中にあるすべての音符に@c
342 影響を与えます。@c
343 一方、@code{\tweak} は入力ストリームの中でその @code{\tweak} の@c
344 すぐ後にある要素 1 つだけに影響を与えます。
345
346 ここで例を挙げます。@c
347 C メジャー コードの中にある真ん中の音符 (ミドル E) の符頭のサイズを@c
348 変更したいとします。@c
349 まず最初に、@code{\once \override} だとどうなるか見てみましょう:
350
351 @cindex font-size property, example (font-size プロパティの例)
352 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
353
354 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
355 <c e g>4
356 \once \override NoteHead.font-size = #-3
357 <c e g>4
358 <c e g>4
359 @end lilypond
360
361 このオーバライドは和音の中にある@emph{すべて}の符頭に影響を与えています。@c
362 これは和音の中にあるすべての音符が同じ @emph{タイミング} で起こるためであり、@c
363 @code{\once} のアクションは @code{\override} と同様に同じタイミングで起こる、@c
364 指定されたタイプすべてのレイアウト オブジェクトへのオーバライドに適用されます。
365
366 @code{\tweak} コマンドはこれとは異なるやり方で処理されます。@c
367 これは入力ストリームの中ですぐ後に続く要素にだけ作用します。@c
368 最もシンプルな形式の @code{\tweak} コマンドは、@c
369 コマンドの直後にある要素から直接作成されるオブジェクト
370 -- 本質的に符頭とアーティキュレーション -- にだけ効果を持ちます。@c
371
372 それでは例に戻り、この方法で和音の真ん中の音符のサイズを変更します:
373
374 @cindex font-size property, example (font-size プロパティの例)
375 @cindex @code{\tweak}, example (@code{\tweak} の例)
376
377 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
378 <c e g>4
379 <c \tweak font-size #-3 e g>4
380 @end lilypond
381
382 @code{\tweak} の構文は @code{\override} コマンドの構文とは@c
383 異なるということに注意してください。@c
384 コンテキストを指定しません -- 実際、指定するとエラーになります。@c
385 コンテキストとレイアウト オブジェクトはどちらも入力ストリームの中で@c
386 後に続く要素によって示されます。@c
387 さらに、イコール記号を使うべきではないということに注意してください。@c
388 そのため、簡単な形式の @code{\tweak} コマンドは以下のようになります:
389
390 @example
391 \tweak #'@var{layout-property} #@var{value}
392 @end example
393
394 さらに、@code{\tweak} コマンドは一連のアーティキュレーションの中にある@c
395 ただ 1 つのアーティキュレーションを変更されるためにも使用できます。@c
396 ここに例を挙げます:
397
398 @cindex color property, example (color プロパティの例)
399 @cindex @code{\tweak}, example (@code{\tweak} の例)
400
401 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
402 a4^"Black"
403   -\tweak color #red ^"Red"
404   -\tweak color #green _"Green"
405 @end lilypond
406
407 @noindent
408 @code{\tweak} コマンドはアーティキュレーション マークの前に配置する@c
409 必要があることに注意してください。@c
410 なぜなら、調整された表記がアーティキュレーションとして適用される必要がある@c
411 ためです。@c
412 複数の向き記号 (@code{^} または @code{_}) で上書きした場合、@c
413 最後に適用される左端の記号が勝ち残ります。
414
415 +@cindex @code{\tweak}, Accidental
416 +@cindex @code{\tweak}, specific layout object
417
418 符幹や臨時記号などのオブジェクトは後になってから作成されるもので、@c
419 @code{\tweak} コマンドの後に続くイベントから直接作成されません。@c
420 そのような直接作成されないオブジェクトの場合、明示的にレイアウト
421 オブジェクト名を指定して LilyPond がそれらのオブジェクトの起源を@c
422 追跡できるようにすることで、@code{\tweak} で調整することができます:
423
424 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
425 <\tweak Accidental.color #red   cis4
426  \tweak Accidental.color #green es
427                                   g>
428 @end lilypond
429
430 この長い形式の @code{\tweak} コマンドは以下のように記述することができます:
431 @example
432 \tweak @var{layout-object} #'@var{layout-property} @var{value}
433 @end example
434
435 @cindex tuplets, nested (ネストされた連符)
436 @cindex triplets, nested (ネストされた 3 連符)
437 @cindex bracket, tuplet (連符の囲み)
438 @cindex bracket, triplet (3 連符の囲み)
439 @cindex tuplet bracket (連符の囲み)
440 @cindex triplet bracket (3 連符の囲み)
441
442 @funindex TupletBracket
443
444 さらに、@code{\tweak} コマンドは、同時に起こるネストされた@c
445 連符記号のセットのうちの 1 つの見た目を変更するためにも使用されます。@c
446 以下の例では、長い連符記号と 3 つの短い連符記号のうちの最初の連符記号が@c
447 同時に起こります。@c
448 そのため、@code{\override} コマンドだと両方の連符記号に@c
449 適用されてしまいます。@c
450 この例では、@code{\tweak} は 2 つの連符記号を区別するために@c
451 使用されています。@c
452 最初の @code{\tweak} コマンドは長い連符記号を音符の上に置くことを@c
453 指定していて、2 番目の @code{\tweak} コマンドは最初の短い連符記号の数字を@c
454 赤で描くことを指定しています。
455
456 @cindex @code{\tweak}, example (@code{\tweak} の例)
457 @cindex direction property, example (direction プロパティの例)
458 @cindex color property, example (color プロパティの例)
459
460 @lilypond[quote,ragged-right,verbatim,fragment,relative=2]
461 \tweak direction #up
462 \tuplet 3/4 {
463   \tweak color #red
464   \tuplet 3/2 { c8[ c c] }
465   \tuplet 3/2 { c8[ c c] }
466   \tuplet 3/2 { c8[ c c] }
467 }
468 @end lilypond
469
470 ネストされた連符が同時に起こらない場合、それらの見た目は @code{\override}
471 コマンドを用いた通常通りの方法で変更されるかもしれません:
472
473 @cindex text property, example (text プロパティの例)
474 @cindex tuplet-number function, example (tuplet-number 関数の例)
475 @cindex transparent property, example (transparent プロパティの例)
476 @cindex TupletNumber, example of overriding (TupletNumber をオーバライドする例)
477
478 @c NOTE Tuplet brackets collide if notes are high on staff
479 @c See issue 509
480 @lilypond[quote,ragged-right,verbatim,fragment,relative=1]
481 \tuplet 3/2 { c8[ c c] }
482 \once \override TupletNumber.text = #tuplet-number::calc-fraction-text
483 \tuplet 3/2 {
484   c8[ c]
485   c8[ c]
486   \once \override TupletNumber.transparent = ##t
487   \tuplet 3/2 { c8[ c c] }
488   \tuplet 3/2 { c8[ c c] }
489 }
490 @end lilypond
491
492
493 @seealso
494 記譜法リファレンス:
495 @ruser{The tweak command}
496
497
498 @node 内部リファレンス マニュアル
499 @section 内部リファレンス マニュアル
500 @translationof The Internals Reference manual
501
502 @cindex Internals Reference (内部リファレンス)
503
504 @menu
505 * レイアウト オブジェクトのプロパティ::
506 * インタフェイスの中で見つかるプロパティ::
507 * プロパティのタイプ::
508 @end menu
509
510 @node レイアウト オブジェクトのプロパティ
511 @subsection レイアウト オブジェクトのプロパティ
512 @translationof Properties of layout objects
513
514 @cindex properties of layout objects (レイアウト オブジェクトのプロパティ)
515 @cindex properties of grobs (グラフィカル オブジェクトのプロパティ)
516 @cindex grobs, properties of (グラフィカル オブジェクトのプロパティ)
517 @cindex layout objects, properties of (レイアウト オブジェクトのプロパティ)
518 @cindex Internals Reference manual (内部リファレンス マニュアル)
519
520 あなたがスラーを楽譜に描き、@c
521 そのスラーが細すぎるためにもう少し太くしたいと思ったとします。@c
522 どうやってスラーを太くしますか?@c
523 以前に LilyPond の自由度の高さについて述べたので、@c
524 そのようなことが可能であることは知っています。@c
525 あなたはおそらく @code{\override} コマンドが必要であると推測するでしょう。@c
526 しかしながら、スラーの太さプロパティは存在するのでしょうか?@c
527 そして、それが存在するならどうやって変更するのでしょうか?@c
528 このようなことに内部リファレンス マニュアルは触れています。@c
529 内部リファレンス マニュアルには、あなたがスラーを太くするために必要な情報、@c
530 他のすべての @code{\override} コマンドを構築するために必要な情報が@c
531 含まれています。
532
533 内部リファレンスを見ていく前に一言警告です。@c
534 これは @strong{リファレンス} ドキュメントであり、@c
535 説明はほんの少しかまったく含まれていません:
536 リファレンスの目的は情報を正確に、かつ簡潔に提供することです。@c
537 そのため、内部リファレンスを一見してひるんでしまうかもしれません。@c
538 しかし、心配しないでください!@c
539 ここにあるガイダンスと説明を読めば、少し練習するだけで、@c
540 内部リファレンスから必要な情報を取り出せるようになります。
541
542 @cindex override example (オーバライドの例)
543 @cindex Internals Reference, example of using (内部リファレンスの使用例)
544 @cindex @code{\addlyrics} example (@code{\addlyrics} の例)
545
546 実際の音楽からの簡単な断片を持つ具体例を使用していきましょう:
547
548 @c Mozart, Die Zauberflöte Nr.7 Duett
549
550 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
551 {
552   \key es \major
553   \time 6/8
554   {
555     r4 bes8 bes[( g]) g |
556     g8[( es]) es d[( f]) as |
557     as8 g
558   }
559   \addlyrics {
560     The man who | feels love's sweet e -- | mo -- tion
561   }
562 }
563 @end lilypond
564
565 ここで、スラーをもう少し太くしようと決めたことにします。@c
566 それは可能でしょうか?@c
567 スラーは確かにレイアウト オブジェクトです。@c
568 そのため、その疑問は
569 @q{スラーに属していて、太さを制御するプロパティは存在するのか?}
570 ということになります。@c
571 その答えを得るために内部リファレンス -- 縮めて IR -- を見なければなりません。
572
573 あなたが使用しているバージョンの LilyPond のための内部リファレンスは
574 LilyPond ウェブサイト @uref{http://lilypond.org} で見つかるでしょう。@c
575 ドキュメント ページに行き、内部リファレンスへのリンクをクリックしてください。@c
576 学習目的のためには標準の HTML バージョンを使うべきであり、@c
577 @q{1 つの大きなページ} や PDF を使うべきではありません。@c
578 次の数段落を読めば、あなたが内部リファレンスを読むときに@c
579 実際にすべきことがわかるでしょう。
580
581 内部リファレンスの @strong{トップ ページ} 下には 5 つのリンクがあります。@c
582 @emph{Backend} へのリンクを選択してください。@c
583 そこにはレイアウト オブジェクトについての情報があります。@c
584 @strong{Backend} 下にある @emph{All layout objects} へのリンクを@c
585 選択してください。@c
586 そのページには、あなたが使用しているバージョンの LilyPond で使用される@c
587 すべてのレイアウト オブジェクトがアルファベット順で@c
588 リストアップされています。@c
589 Slur へのリンクを選択すると、Slur のプロパティがリスト アップされます。
590
591 記譜法リファレンスからこのページを見つける方法もあります。@c
592 スラーについて扱っているページで、内部リファレンスへのリンクが@c
593 見つかるかもしれません。@c
594 このリンクでこのページに直接行くことができます。@c
595 しかしながら、あなたが調整するレイアウト オブジェクトの名前を@c
596 想像できる場合は、すぐに内部リファレンスに行ってそこで探す方が簡単です。
597
598 内部リファレンスの Slur ページでは、まず Slur オブジェクトは
599 @code{Slur_engraver} によって作成されるということが述べられています。@c
600 それから、標準設定がをリストアップされています。@c
601 標準設定はアルファベット順にはなって @strong{いない} ということに@c
602 注意してください。@c
603 太さを制御していそうなプロパティを探してブラウザを@c
604 スクロール ダウンさせていくと、以下が見つかります:
605
606 @example
607 @code{thickness} (number)
608      @code{1.2}
609      Line thickness, generally measured in @code{line-thickness}
610 @end example
611
612 これが太さを変更するプロパティのようです。@c
613 @code{thickness} の値は @emph{数} であり、デフォルト値は 1.2、@c
614 この値は他のプロパティでは @code{line-thickness} と@c
615 呼ばれるということがわかります。
616
617 前にも言ったように、内部リファレンスには説明がほとんど、@c
618 あるいはまったくありません。@c
619 しかしながら、すでにスラーの太さを変えるための十分な情報を持っています。@c
620 レイアウト オブジェクトの名前は @code{Slur} であり、@c
621 変更するプロパティの名前は @code{thickness} であり、@c
622 スラーをもっと太くするには新しい値を 1.2 よりも大きくすべきであることが@c
623 わかります。
624
625 今度は、レイアウト オブジェクト名で見つけた値を置き換えることによって
626 @code{\override} コマンドを構築することができます。@c
627 コンテキストは省略します。@c
628 最初は太さに非常に大きな値を割り当ててみます。@c
629 それによって、そのコマンドが確かに機能していることを確かめることができます。@c
630 実行するコマンドは以下のようになります:
631
632 @example
633 \override Slur.thickness = #5.0
634 @end example
635
636 プロパティ名の前に @code{#'} を付けること、@c
637 新しい値の前に @code{#} を付けることを忘れないでください!
638
639 最後の疑問は @q{このコマンドをどこに置くべきか?} ということです。@c
640 そのことについて不確かであり、学んでいる最中であるのならば、@c
641 ベストな答えはこうです @q{音楽表記の内部で、最初のスラーの直前}。@c
642 ではやってみましょう:
643
644 @cindex Slur example of overriding (Slur をオーバライドする例)
645 @cindex thickness property, example (thickness プロパティの例)
646
647 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
648 {
649   \key es \major
650   \time 6/8
651   {
652     % Increase thickness of all following slurs from 1.2 to 5.0
653     \override Slur.thickness = #5.0
654     r4 bes8 bes[( g]) g |
655     g8[( es]) es d[( f]) as |
656     as8 g
657   }
658   \addlyrics {
659     The man who | feels love's sweet e -- | mo -- tion
660   }
661 }
662 @end lilypond
663
664 @noindent
665 確かにスラーが太くなっています。
666
667 これが @code{\override} コマンドを構築する基本的な方法です。@c
668 これより後のセクションで遭遇するものはもう少し複雑ですが、@c
669 必要な要点はすべて知っています
670 -- しかしながら、まだ練習が必要でしょう。@c
671 これは以下の例で提供されます。
672
673 @subheading コンテキストを見つけ出す
674
675 @cindex context, finding (コンテキストを見つけ出す)
676 @cindex context, identifying correct (正しいコンテキストを特定する)
677
678 しかしながら、まず最初にコンテキストを指定しなければならないとしたら@c
679 どうでしょうか?@c
680 指定すべきコンテキストは何でしょうか?@c
681 スラーとボイスは音楽表記の各行で明らかに関係が深いので、@c
682 スラーは @code{Voice} コンテキストの中にあると推測できるかもしれません。@c
683 しかし、それは確かでしょうか?@c
684 この問題を解決するには、Slur について記述している内部リファレンス ページの@c
685 先頭に戻ります。@c
686 そこには @q{Slur オブジェクトは Slur エングラーバによって作成される} と@c
687 書かれています。@c
688 そのため、スラーは @code{Slur_engraver} が存在しているコンテキストの@c
689 どれかで作成されるということになります。@c
690 @code{Slur_engraver} へのリンクを辿ります。@c
691 そのページの最後の方で @code{Slur_engraver} は 5 つのボイス コンテキスト
692 -- 標準のボイス コンテキストである @code{Voice} を含む
693 -- の一部であることが述べられています。@c
694 ですから、推測は正しかったのです。@c
695 そして、@code{Voice} は最下位のコンテキストの 1 つである
696 -- このことは、そこに音符を入力するという事実によって明らかに示されています
697 -- ため、ここではそのコンテキストを省略することができるのです。
698
699 @subheading 1 回だけオーバライドする
700
701 @cindex overriding once only (一度だけオーバライドする)
702 @cindex once override (一度だけオーバライドする)
703
704 @funindex \once
705 @funindex once
706
707 上記の最後の例では @emph{すべて} のスラーが太くなっています。@c
708 しかし、最初のスラーだけを太くしたい場合はどうでしょうか?@c
709 これは @code{\once} コマンドを使うことによって達成されます。@c
710 @code{\override} コマンドの直前に @code{\once} コマンドを@c
711 置くことによって、@code{\override} コマンドは @strong{直後にある} 音符から@c
712 始まるスラーだけを変更するようになります。@c
713 直後にある音符がスラーの開始点ではない場合、そのコマンドはまったく機能しません
714 -- それがスラーに遭遇するまで保持されるということはなく、@c
715 ただ切り捨てられるだけです。@c
716 そのため、@code{\once} コマンド付きの @code{\override} コマンドは@c
717 以下のように上記の例とは異なる場所に置かなくてはなりません:
718
719 @cindex Slur, example of overriding (Slur をオーバライドする例)
720 @cindex thickness property, example (thickness プロパティの例)
721
722 @c KEEP LY
723 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
724 {
725   \key es \major
726   \time 6/8
727   {
728     r4 bes8
729     % 直後にあるスラーのみを太くします
730     \once \override Slur.thickness = #5.0
731     bes8[( g]) g |
732     g8[( es]) es d[( f]) as |
733     as8 g
734   }
735   \addlyrics {
736     The man who | feels love's sweet e -- | mo -- tion
737   }
738 }
739 @end lilypond
740
741 @noindent
742 今度は、最初のスラーだけが太くなりました。
743
744 @code{\once} コマンドは @code{\set} コマンドの前でも使用される可能性があります。
745
746 @subheading 元に戻す
747
748 @cindex revert (元に戻す)
749 @cindex default properties, reverting to (デフォルトのプロパティに戻す)
750
751 @funindex \revert
752 @funindex revert
753
754 最後に、最初の 2 つだけのスラーを太くしたい場合はどうでしょうか?@c
755 その場合、2 つのコマンド -- それぞれの前に @code{\once} を付けた --
756 をスラーが始まる音符の直前に置きます:
757
758 @cindex Slur, example of overriding (Slur をオーバライドする例)
759 @cindex thickness property, example (thickness プロパティの例)
760
761 @c KEEP LY
762 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
763 {
764   \key es \major
765   \time 6/8
766   {
767     r4 bes8
768     % 直後にあるスラーのみを太くします
769     \once \override Slur.thickness = #5.0
770     bes[( g]) g |
771     % 直後にあるスラーのみを太くします
772     \once \override Slur.thickness = #5.0
773     g8[( es]) es d[( f]) as |
774     as8 g
775   }
776   \addlyrics {
777     The man who | feels love's sweet e -- | mo -- tion
778   }
779 }
780 @end lilypond
781
782 @noindent
783 あるいは、@code{\once} コマンドを省略して、2 番目のスラーの後に
784 @code{thickness} プロパティをデフォルト値に戻すために
785 @code{\revert} コマンドを使うこともできます:
786
787 @cindex Slur, example of overriding (Slur をオーバライドする例)
788 @cindex thickness property, example (thickness プロパティの例)
789
790 @c KEEP LY
791 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
792 {
793   \key es \major
794   \time 6/8
795   {
796     r4 bes8
797     % 以後のスラーの太さを 1.2 から 5.0 に増やします
798     \override Slur.thickness = #5.0
799     bes[( g]) g |
800     g8[( es]) es
801     % 以後のスラーの太さをデフォルトの 1.2 に戻します
802     \revert Slur.thickness
803     d8[( f]) as |
804     as8 g
805   }
806   \addlyrics {
807     The man who | feels love's sweet e -- | mo -- tion
808   }
809 }
810 @end lilypond
811
812 @noindent
813 @code{\revert} コマンドは @code{\override} コマンドで@c
814 変更されたどのプロパティでもデフォルト値に戻すことができます。@c
815 状況に相応しい方を使用してください。
816
817 これで内部リファレンスと調整の基本的な方法についての紹介を終わりにします。@c
818 この章で後に続くセクションの中にあるいくつのかの例でも一部では、@c
819 内部リファレンスの特徴についての追加の紹介や、そこから情報を取り出すための@c
820 更なる練習を提供します。@c
821 それらの例ではガイダンスや説明のための言葉はずっと少ないでしょう。
822
823
824 @node インタフェイスの中で見つかるプロパティ
825 @subsection インタフェイスの中で見つかるプロパティ
826 @translationof Properties found in interfaces
827
828 @cindex interface (インタフェイス)
829 @cindex interface properties (インタフェイス プロパティ)
830 @cindex properties in interfaces (インタフェイス内のプロパティ)
831
832 今度は歌詞をイタリック体で譜刻したいということにします。@c
833 そうするには @code{\override} コマンドをどのように使う必要があるのでしょうか?@c
834 以前と同様に、まず @q{すべてのレイアウト オブジェクト} をリストアップしている@c
835 内部リファレンス ページを開き、歌詞をコントロールしていそうなオブジェクトを@c
836 探します。@c
837 @code{LyricText} がそれであるようです。@c
838 これをクリックすると、歌詞のテキストに対してセットすることができる@c
839 プロパティが表示されます。@c
840 そこには @code{font-series} と @code{font-size} が含まれますが、@c
841 歌詞をイタリック体にするためのプロパティらしきものはありません。@c
842 これは、形に関するプロパティはすべてのフォント オブジェクトに共通なもの@c
843 であり、そのため、各レイアウト オブジェクトに含まれているのではなく、@c
844 他の同様な共通プロパティと一緒にグループ化されていて、@c
845 @strong{インタフェイス} の 1 つ @code{font-interface} の中に@c
846 置かれているからです。
847
848 そのため、インタフェイスのプロパティを見つける方法と、どのオブジェクトが@c
849 これらのインタフェイス プロパティを使うのかを調べる方法を学ぶ必要があります。
850
851 @code{LyricText} について記述している内部リファレンスのページを@c
852 再び開いてください。@c
853 そのページの最後に @code{LyricText} がサポートするインタフェイスへのリンクが@c
854 リスト アップされています。@c
855 そのリストには @code{font-interface} を含むいくつかの要素があります。@c
856 このリンクをクリックすると、このインタフェイスに@c
857 関連付けされているプロパティのところに行きます。@c
858 これらのプロパティは @code{LyricText} を含む @code{font-interface} を@c
859 サポートするすべてのオブジェクトのプロパティでもあります。
860
861 @code{font-shape(symbol)} を含むフォントを制御するユーザが@c
862 設定可能なプロパティをすべて見つけました。@c
863 @code{font-shape(symbol)} では @code{symbol} を @code{upright},
864 @code{italics}, あるいは @code{caps} にセットすることができます。
865
866 そこには、@code{font-series} と @code{font-size} もリスト アップされている@c
867 ことに気づくでしょう。@c
868 そこで次のような疑問が湧いてきます:
869 共通フォントプロパティ @code{font-series} と @code{font-size} は
870 @code{LyricText} とインタフェイス @code{font-interface} の両方で@c
871 リスト アップされているのに、なぜ @code{font-shape} はそうでないのか?@c
872 その答えは、@code{font-series} と @code{font-size} は、@c
873 @code{LyricText} オブジェクトが作成されるときに、@c
874 それらのグローバルなデフォルト値から変更されるのに対して、@c
875 @code{font-shape} はそうではないからです。@c
876 @code{LyricText} の中にあるエントリから @code{LyricText} に適用される@c
877 それら 2 つのプロパティの値がわかります。@c
878 @code{font-interface} をサポートする他のオブジェクトは、@c
879 それらのオブジェクトが作成されるときに、@c
880 それらのプロパティを異なる値にセットします。
881
882 今度は歌詞をイタリック体に変更するように @code{\override} コマンドを@c
883 構築できるかどうかを見ていきましょう。@c
884 オブジェクトは @code{LyricText} であり、@c
885 プロパティは @code{font-shape} であり、セットする値は @code{italic} です。@c
886 前と同様に、コンテキストを省略します。
887
888 話は逸れますが重要なことを 1 つ挙げます。@c
889 @code{font-shape} の値はシンボルなので、シングル アポストロフィ @code{'} を@c
890 付ける必要があるということに注意してください。@c
891 その理由は、以前の例での @code{thickness} や @code{font-shape} の前に@c
892 アポストロフィを付ける必要がある理由と同じです。@c
893 それらも両方ともシンボルです。@c
894 シンボルは LilyPond によって内部的に読み取られます。@c
895 それらのいくつかは @code{thickness} や @code{font-shape} のようなプロパティの@c
896 名前であり、他のものは @code{italic} のようにプロパティに与えられる値として@c
897 使用されます。@c
898 任意のテキスト文字列との違い -- 任意のテキスト文字列は @code{"a text string"}
899 のような形で表記されます -- に注意してください。@c
900 シンボルと文字列についてのより詳細な説明は、@rextend{Scheme tutorial} を@c
901 参照してください。
902
903 さて、それでは歌詞をイタリック体で譜刻するために必要となる
904 @code{\override} コマンドは以下のようになります:
905
906 @example
907 \override LyricText.font-shape = #'italic
908 @end example
909
910 @noindent
911 そして、これは以下のように影響を与える歌詞の前に、そして近くに置くべきです:
912
913 @cindex font-shape property, example (font-shape プロパティの例)
914 @cindex italic, example (italic の例)
915 @cindex LyricText, example of overriding (Lyric をオーバライドする例)
916 @cindex @code{\addlyrics}, example (@code{\addlyrics} の例)
917
918 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
919 {
920   \key es \major
921   \time 6/8
922   {
923     r4 bes8 bes[( g]) g |
924     g8[( es]) es d[( f]) as |
925     as8 g
926   }
927   \addlyrics {
928     \override LyricText.font-shape = #'italic
929     The man who | feels love's sweet e -- | mo -- tion
930   }
931 }
932 @end lilypond
933
934 @noindent
935 これで歌詞がすべてイタリック体で譜刻されました。
936
937 @subheading 歌詞モードの中でコンテキストを指定する
938
939 @cindex context, specifying in lyric mode (歌詞モード内でコンテキストを指定する)
940 @cindex lyric mode, specifying context (歌詞モード内でコンテキストを指定する)
941
942 歌詞の場合、以前のようなコマンドの発行の仕方の中でコンテキストを@c
943 指定しようとしても失敗するでしょう。@c
944 歌詞モードの中で入力される音節はスペース、改行、数字のいずれかで区切られます。@c
945 他のすべての文字は音節の一部と見なされます。@c
946 これが、終端の @code{@}} の前にはスペースか改行を@c
947 置かなければならない理由です。@c
948 そうしないと、終端の @code{@}} は最後の音節の一部に含まれてしまいます。@c
949 同様に、コンテキスト名とオブジェクト名を区切るために、@c
950 ピリオドまたはドット @q{.} の前と後ろにスペースを挿入しなければなりません。@c
951 さもないと 2 つの名前は一緒になってしまい、インタプリタはそれらを@c
952 認識できなくなります。@c
953 そのため、コマンドは以下のようにすべきです:
954
955 @example
956 \override Lyrics.LyricText.font-shape = #'italic
957 @end example
958
959 @warning{歌詞の中では、最後の音節と終端の波括弧の間に常にスペースを@c
960 置いてください。}
961
962 @warning{歌詞の中のオーバライドでは、コンテキスト名とオブジェクト名の@c
963 間にあるドットの両側に常にスペースを置いてください。}
964
965
966 @seealso
967 拡張: @rextend{Scheme tutorial}
968
969
970 @node プロパティのタイプ
971 @subsection プロパティのタイプ
972 @translationof Types of properties
973
974 @cindex property types (プロパティ タイプ)
975
976 これまでにプロパティのタイプを 2 つ見てきました:
977 @code{number} と @code{symbol} です。@c
978 プロパティに与える値が有効であるためには、その値は正しいタイプであり、@c
979 そのタイプのルールに従っていなければなりません。@c
980 プロパティのタイプは内部リファレンスの中で常にプロパティ名の後の括弧の中に@c
981 表示されています。@c
982 ここに、あなたが必要になるであろうプロパティのタイプを、@c
983 そのタイプのルールといくつかの例と共にリスト アップします。@c
984 もちろん、@code{\override} コマンドの中でプロパティの値を入力する時は、@c
985 常にそれらの値の前にハッシュ記号 @code{#} を付け加える必要があります。
986
987 @multitable @columnfractions .2 .45 .35
988 @headitem プロパティ タイプ
989   @tab 規則
990   @tab 例
991 @item Boolean
992   @tab 真か偽のどちらかで、それぞれ #t と #f で表されます
993   @tab @code{#t}, @code{#f}
994 @item Dimension (譜スペース)
995   @tab 正の小数 (譜スペース単位)
996   @tab @code{2.5}, @code{0.34}
997 @item Direction
998   @tab 有効な向きを表す定数またはそれと等価な数値 (-1 から 1 までの小数が@c
999 許可されます)
1000   @tab @code{LEFT}, @code{CENTER}, @code{UP},
1001        @code{1}, @w{@code{-1}}
1002 @item Integer
1003   @tab 正の整数
1004   @tab @code{3}, @code{1}
1005 @item List
1006   @tab 値のセット。@c
1007 セットの値はスペースで区切られ、前にアポストロフィが付いた括弧で囲まれます
1008   @tab @code{'(left-edge staff-bar)}, @code{'(1)},
1009        @code{'(1.0 0.25 0.5)}
1010 @item Markup
1011   @tab 有効なマークアップ
1012   @tab @code{\markup @{ \italic "cresc." @}}
1013 @item Moment
1014   @tab make-moment 関数で構築される全音符の分数
1015   @tab @code{(ly:make-moment 1/4)},
1016        @code{(ly:make-moment 3/8)}
1017 @item Number
1018   @tab 正または負の小数
1019   @tab @code{3.5}, @w{@code{-2.45}}
1020 @item (数の) Pair
1021   @tab @q{スペース . スペース} で区切られ、前にアポストロフィが付いた括弧で@c
1022 囲まれた 2 つの数値
1023   @tab @code{'(2 . 3.5)}, @code{'(0.1 . -3.2)}
1024 @item Symbol
1025   @tab プロパティに許可されているシンボルのセットのいずれかであり、@c
1026 前にアポロストロフィを付けます
1027   @tab @code{'italic}, @code{'inside}
1028 @item Unknown
1029   @tab 手続き。何のアクションも起こさない場合は @code{#f}
1030   @tab @code{bend::print}, @code{ly:text-interface::print},
1031        @code{#f}
1032 @item Vector
1033   @tab 前にアポストロフィ-ハッシュ @code{'#} が付いた括弧で囲まれた
1034 3 要素のリスト
1035   @tab @code{'#(#t #t #f)}
1036 @end multitable
1037
1038
1039 @seealso
1040 拡張: @rextend{Scheme tutorial}
1041
1042
1043 @node オブジェクトの見た目
1044 @section オブジェクトの見た目
1045 @translationof Appearance of objects
1046
1047 いくつかの例を使ってこれまでに学んだことを練習して、譜刻される楽譜の見た目を@c
1048 変更するためにどのように調整が使われるのかを見ていきましょう。
1049
1050 @menu
1051 * オブジェクトの可視性と色::
1052 * オブジェクトのサイズ::
1053 * オブジェクトの長さと太さ::
1054 @end menu
1055
1056
1057 @node オブジェクトの可視性と色
1058 @subsection オブジェクトの可視性と色
1059 @translationof Visibility and color of objects
1060
1061 教育目的の楽譜では、ある要素を省略した楽譜を譜刻して、@c
1062 学生にそれを付け足させるという訓練にしたいと思うかもしれません。@c
1063 簡単な例として、その訓練とは小節線の無い楽譜だと仮定してみましょう。@c
1064 しかしながら、通常、小節線は自動的に挿入されます。@c
1065 どうやって小節線が譜刻されることを防ぐのでしょうか?
1066
1067 このことに挑戦する前に、オブジェクト プロパティは @emph{インタフェイス} と@c
1068 呼ばれるものにグループ化されているということを思い出してください
1069 -- @ref{インタフェイスの中で見つかるプロパティ} を参照してください。@c
1070 これはあるグラフィカル オブジェクトを調整するために一緒に@c
1071 使用されるかもしれないプロパティをグループ化したものです
1072 -- あるオブジェクトに対してインタフェイス内のプロパティの 1 つを使うことが@c
1073 許可されるのなら、他のプロパティも許可されます。@c
1074 あるオブジェクトはいくつかのインタフェイス内にあるプロパティを使用し、@c
1075 別のオブジェクトはそれとは別のインタフェイス内にあるプロパティを使用します。@c
1076 ある特定のグラフィカルオブジェクトによって使用されるプロパティを保持している@c
1077 インタフェイスは、そのグラフィカル オブジェクトについて記述している@c
1078 内部リファレンス ページの最後にリスト アップされていて、@c
1079 それらのプロパティはそれらのインタフェイスを参照することによって閲覧できます。
1080
1081 グラフィカル オブジェクトについての情報を見つけ出す方法を
1082 @ref{レイアウト オブジェクトのプロパティ} で説明しました。@c
1083 同じアプローチを使って、内部リファレンスで小節線を@c
1084 譜刻するレイアウト オブジェクトを見つけ出します。@c
1085 @emph{Backend} を経由して @emph{All layout objects} に行くと、@c
1086 そこに @code{BarLine} と呼ばれる@c
1087 レイアウト オブジェクトがあることがわかります。@c
1088 そのレイアウト オブジェクトのプロパティには小節線の可視性をコントロールする
1089 2 つのプロパティが含まれています: @c
1090 @code{break-visibility} と @code{stencil} です。@c
1091 さらに、@code{BarLine} はインタフェイスのいくつかをサポートしています。@c
1092 @code{grob-interface} もサポートされていて、@c
1093 そこには @code{transparent} プロパティと @code{color} プロパティが@c
1094 含まれています。@c
1095 これらすべてが小節線の可視性に影響を与えます (そしてもちろん、@c
1096 拡大解釈すれば他の多くのレイアウト オブジェクトにも影響を与えます)。@c
1097 次はこれらのプロパティをそれぞれ見ていきましょう。
1098
1099 @subheading ステンシル (stencil)
1100
1101 @cindex stencil property (stencil プロパティ)
1102
1103 このプロパティは譜刻すべきシンボル (図柄) を指定することによって@c
1104 小節線の見た目を制御します。@c
1105 他の多くのプロパティでも共通に言えますが、このプロパティの値に
1106 @code{#f} をセットすることによって何も譜刻させなくすることができます。@c
1107 ではやってみましょう。@c
1108 以前と同様に、暗黙のコンテキスト @code{Voice} は省略します:
1109
1110 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1111 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1112
1113 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1114 {
1115   \time 12/16
1116   \override BarLine.stencil = ##f
1117   c4 b8 c d16 c d8 |
1118   g,8 a16 b8 c d4 e16 |
1119   e8
1120 }
1121 @end lilypond
1122
1123 小節線はまだ譜刻されています。@c
1124 何が間違っているのでしょうか?@c
1125 内部リファレンスに戻って、@code{BarLine} のプロパティを記述しているページを@c
1126 読み返してください。@c
1127 そのページの先頭に
1128 @qq{BarLine オブジェクトは Bar_engraver によって作成されます} と@c
1129 記述されています。@c
1130 @code{Bar_engraver} ページに行ってください。@c
1131 そのページの最後で、@code{Bar_engraver} を保持するコンテキストが@c
1132 リスト アップされています。@c
1133 それらのコンテキストのタイプはすべて @code{Staff} です。@c
1134 ですから、@code{\override} コマンドが予期したように機能しなかったのは、@c
1135 @code{BarLine} はデフォルトの @code{Voice} コンテキストの中には@c
1136 いなかったからなのです。@c
1137 コンテキストが間違って指定された場合、そのコマンドは機能しません。@c
1138 エラー メッセージは生成されず、ログ ファイルには何もログが残りません。@c
1139 正しいコンテキストを付け加えることによってコマンドを修正してみましょう:
1140
1141 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1142 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1143
1144 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1145 {
1146   \time 12/16
1147   \override Staff.BarLine.stencil = ##f
1148   c4 b8 c d16 c d8 |
1149   g,8 a16 b8 c d4 e16 |
1150   e8
1151 }
1152 @end lilypond
1153
1154 今度は小節線が消えました。
1155
1156 しかしながら、@code{stencil} プロパティを @code{#f} にセットするのではなく、@c
1157 オブジェクトの大きさを修正する必要があるオブジェクトも存在するということに@c
1158 注意してください。@c
1159 そのようなオブジェクトの @code{stencil} プロパティを @code{#f} にセットすると@c
1160 エラーになります。
1161 例えば、@code{NoteHead} オブジェクトの @code{stencil} プロパティを
1162 @code{#f} にセットするとエラーになります。@c
1163 この場合、@code{point-stencil} を使ってサイズが 0 のステンシル (型、型紙) を@c
1164 オブジェクトにセットします:
1165
1166 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
1167 {
1168   c4 c
1169   \once \override NoteHead.stencil = #point-stencil
1170   c4 c
1171 }
1172 @end lilypond
1173
1174 @subheading 可視性の破棄 (break-visibility)
1175
1176 @cindex break-visibility property (break-visibility プロパティ)
1177
1178 内部リファレンスの @code{BarLine} のプロパティから
1179 @code{break-visibility} プロパティには 3 つのブール値からなるベクトルが@c
1180 必要であることがわかります。@c
1181 これらはそれぞれ、小節線が行の最後、行の途中、行の最初に譜刻されるかどうかを@c
1182 制御します。@c
1183 以下の例ではすべての小節線を消したいので、必要となる値は
1184 @code{'#(#f #f #f)} です。@c
1185 それではやってみましょう。@c
1186 @code{Staff} コンテキストを含めることを忘れないでください。@c
1187 また、この値を書くときに括弧を始める前に @code{#'#} を@c
1188 付ける必要があることにも注意してください。@c
1189 @code{'#} はベクトルを導入するときに値の一部として必要とされ、@c
1190 先頭の @code{#} は @code{\override} コマンドの中で常に値の前に@c
1191 置くことが必要とされます。
1192
1193 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1194 @cindex break-visibility property, example (break-visibility プロパティの例)
1195
1196 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1197 {
1198   \time 12/16
1199   \override Staff.BarLine.break-visibility = #'#(#f #f #f)
1200   c4 b8 c d16 c d8 |
1201   g,8 a16 b8 c d4 e16 |
1202   e8
1203 }
1204 @end lilypond
1205
1206 今度もすべての小節線が消えました。
1207
1208 @subheading 透過性 (transparent)
1209
1210 @cindex transparent property (transparent プロパティ)
1211 @cindex transparency (透明性)
1212
1213 内部リファレンスの @code{grob-interface} ページにあるプロパティから
1214 @code{transparent} プロパティはブール値であることがわかります。@c
1215 これはグラフィカル オブジェクトを透明にする場合には @code{#t} に@c
1216 セットします。@c
1217 次の例では、小節線ではなく拍子記号を不可視にしてみましょう。@c
1218 そうするには、まず、拍子記号のグラフィカル オブジェクト名を@c
1219 見つける必要があります。@c
1220 @code{TimeSignature} レイアウト オブジェクトのプロパティを見つけるために@c
1221 内部リファレンスの @q{すべてのレイアウト オブジェクト} ページに@c
1222 戻ってください。@c
1223 @code{TimeSigunature} は @code{Time_signature_engraver} によって作り出され、@c
1224 さらに、@code{Time_signature_engraver} は @code{Staff} コンテキストに含まれ、@c
1225 さらに、@code{Staff} コンテキストは @code{grob-interface} を@c
1226 サポートしているということがわかります。@c
1227 そのため、拍子記号を透明にするためのコマンドは以下のようになります:
1228
1229 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1230 @cindex transparent property, example (transparent プロパティの例)
1231
1232 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1233 {
1234   \time 12/16
1235   \override Staff.TimeSignature.transparent = ##t
1236   c4 b8 c d16 c d8 |
1237   g,8 a16 b8 c d4 e16 |
1238   e8
1239 }
1240 @end lilypond
1241
1242 @noindent
1243 拍子記号は消えました。@c
1244 しかしながら、このコマンドは拍子記号があるべき場所に隙間を残しています。@c
1245 たぶん、これは学生がその部分を埋めるための練習としては望ましいでしょうが、@c
1246 他の状況ではこの隙間は望ましくありません。@c
1247 この隙間を取り除くには、拍子記号の @code{transparent} の代わりに@c
1248 ステンシル (型、型紙) を @code{#f} にセットします:
1249
1250 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1251 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1252
1253 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1254 {
1255   \time 12/16
1256   \override Staff.TimeSignature.stencil = ##f
1257   c4 b8 c d16 c d8 |
1258   g,8 a16 b8 c d4 e16 |
1259   e8
1260 }
1261 @end lilypond
1262
1263 @noindent
1264 違いは明白です: ステンシルを @code{#f} にセットすると、@c
1265 オブジェクト自体が削除されます。@c
1266 一方、オブジェクトを @code{transparent} (透明) にするとそのオブジェクトは@c
1267 消えますが、オブジェクトは不可視になっただけです。
1268
1269 @subheading 色 (color)
1270
1271 @cindex color property (color プロパティ)
1272
1273 最後に、小節線の色を白にすることによって小節線を不可視にしてみましょう。@c
1274 (これには白い小節線が譜線と交差したところで@c
1275 譜線を見えたり見えなくしてしまうかもしれないという問題があります。@c
1276 以下のいくつかの例で、このことを予測することはできないと思うかもしれません。@c
1277 そうなる理由と、それを制御する方法についての詳細は、@c
1278 @ruser{Painting objects white} でカバーされています。@c
1279 しかしここでは色について学んでいるところなので、@c
1280 オブジェクトを白で描くことの限界を受け入れるだけにしてください。)
1281
1282 @code{grob-interface} はカラー プロパティの値はリストであると指定しています。@c
1283 しかしながら、そのリストが何であるべきなのかの説明はありません。@c
1284 カラー プロパティで必要とされるリストは実際のところ内部ユニットの中にある@c
1285 値のリストです。@c
1286 しかし、内部ユニットの中にある値を知らなくても済むように、@c
1287 カラーを指定するための手段がいくつか用意されています。@c
1288 最初の方法は @ruser{List of colors} にある最初の表でリスト アップされている
1289 @q{標準} のカラーの 1 つを使用する方法です。@c
1290 小節線を白にするには以下のように記述します:
1291
1292 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1293 @cindex color property, example (color プロパティの例)
1294
1295 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1296 {
1297   \time 12/16
1298   \override Staff.BarLine.color = #white
1299   c4 b8 c d16 c d8 |
1300   g,8 a16 b8 c d4 e16 |
1301   e8
1302 }
1303 @end lilypond
1304
1305 @noindent
1306 今度も再び小節線は見えなくなりました。@c
1307 @emph{white} の前にアポストロフィは付かないということに注意してください
1308 -- これはシンボルではなく@emph{関数}です。@c
1309 この関数が呼び出されると、この関数はカラーを白にセットするために@c
1310 必要とされる内部値のリストを提供します。@c
1311 標準カラー リストにある他のカラーもまた関数です。@c
1312 これが機能していることをあなた自身が納得するために、@c
1313 カラーをこのリストの中にある他の関数の 1 に変更しようと思うかもしれません。
1314
1315 @cindex color, X11 (X11 カラー)
1316 @cindex X11 colors (X11 カラー)
1317
1318 @funindex x11-color
1319
1320 カラーを変えるための 2 番目の方法は、@ruser{List of colors} の
1321 2 番目のリストの中にある X11 カラー名のリストを使用する方法です。@c
1322 しかしながら、以下のように、これらの前には X11 カラー名を内部値のリストに@c
1323 変更するもう 1 つの関数 -- @code{x11-color} -- がなければなりません:
1324
1325 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1326 @cindex color property, example (color プロパティの例)
1327
1328 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1329 {
1330   \time 12/16
1331   \override Staff.BarLine.color = #(x11-color 'white)
1332   c4 b8 c d16 c d8 |
1333   g,8 a16 b8 c d4 e16 |
1334   e8
1335 }
1336 @end lilypond
1337
1338 @noindent
1339 この場合、関数 @code{x11-color} はシンボルを引数として扱うので、@c
1340 シンボルの前にはアポストロフィをつけなくてはならず、@c
1341 @code{x11-color} とシンボルは括弧で囲まれていなければならないということに@c
1342 注意してください。
1343
1344 @cindex rgb colors (RGB カラー)
1345 @cindex color, rgb (RGB カラー)
1346
1347 @funindex rgb-color
1348
1349 まだ 3 番目の方法が残っています。@c
1350 これは RGB 値を内部カラーに変換する @code{rgb-color} 関数を使用する方法です。@c
1351 この関数は赤、緑、青の輝度を表す 3 つの引数をとります。@c
1352 これらの引数は 0 から 1 までの値をとります。@c
1353 ですから、カラーを赤にセットする場合の値は @code{(rgb-color 1 0 0)} となり、@c
1354 白の場合は @code{(rgb-color 1 1 1)} となります:
1355
1356 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1357 @cindex color property, example (color プロパティの例)
1358
1359 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1360 {
1361   \time 12/16
1362   \override Staff.BarLine.color = #(rgb-color 1 1 1)
1363   c4 b8 c d16 c d8 |
1364   g,8 a16 b8 c d4 e16 |
1365   e8
1366 }
1367 @end lilypond
1368
1369 最後に、X11 カラー セットの一部であるグレー スケールを用いる方法もあります。@c
1370 グレー スケールの範囲は黒 @code{'grey0'} から白 @code{'grey100'} まで
1371 1 段階ずつあります。@c
1372 グレー スケールの使用方法を示すために、@c
1373 例の中にあるすべてのレイアウト オブジェクトのカラーをさまざまな濃度の@c
1374 グレーにセットしてみましょう:
1375
1376 @cindex StaffSymbol, example of overriding (StaffSymbol をオーバライドする例)
1377 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1378 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1379 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
1380 @cindex Stem, example of overriding (Stem をオーバライドする例)
1381 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1382 @cindex color property, example (color プロパティの例)
1383 @cindex x11-color, example of using (x11-color の使用例)
1384
1385 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1386 {
1387   \time 12/16
1388   \override Staff.StaffSymbol.color = #(x11-color 'grey30)
1389   \override Staff.TimeSignature.color = #(x11-color 'grey60)
1390   \override Staff.Clef.color = #(x11-color 'grey60)
1391   \override Voice.NoteHead.color = #(x11-color 'grey85)
1392   \override Voice.Stem.color = #(x11-color 'grey85)
1393   \override Staff.BarLine.color = #(x11-color 'grey10)
1394   c4 b8 c d16 c d8 |
1395   g,8 a16 b8 c d4 e16 |
1396   e8
1397 }
1398 @end lilypond
1399
1400 @noindent
1401 各レイアウト オブジェクトに関連付けされているコンテキストに注意してください。@c
1402 これらのコンテキストを正しく取得することが重要であり、@c
1403 そうしなければコマンドは機能しません!@c
1404 コンテキストの中には特定のエングラーバが置かれているということを@c
1405 忘れないでください。@c
1406 エングラーバに対するデフォルト コンテキストを見つけ出すには、@c
1407 内部リファレンスのレイアウト オブジェクトからスタートして、@c
1408 そこからそれを作り出すエングラーバのページに行きます。@c
1409 エングラーバのページには、@c
1410 通常はどのコンテキストにそのエングラーバが含まれているのかが記述されています。
1411
1412
1413 @node オブジェクトのサイズ
1414 @subsection オブジェクトのサイズ
1415 @translationof Size of objects
1416
1417 @cindex changing size of objects (オブジェクトのサイズを変更する)
1418 @cindex size of objects (オブジェクトのサイズ)
1419 @cindex objects, size of (オブジェクトのサイズ)
1420 @cindex objects, changing size of (オブジェクトのサイズを変更する)
1421
1422 以前の例を見直すことから始めてみましょう (@ref{音楽表記をネストする} を@c
1423 参照してください)。@c
1424 そこでは @rglos{ossia} として新たに一時的な譜を導入する方法が示されています。
1425
1426 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1427 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1428
1429 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1430 \new Staff ="main" {
1431   \relative g' {
1432     r4 g8 g c4 c8 d |
1433     e4 r8
1434     <<
1435       { f8 c c }
1436       \new Staff \with {
1437         alignAboveContext = #"main" }
1438       { f8 f c }
1439     >>
1440     r4 |
1441   }
1442 }
1443 @end lilypond
1444
1445 通常、オッシアは音部記号と拍子記号無しで記述され、@c
1446 メインの譜よりもわずかに小さく譜刻されます。@c
1447 今度は、すでに音部記号と拍子記号を削除する方法を知っています
1448 -- 以下のようにそれぞれのステンシルを @code{#f} にセットするだけです:
1449
1450 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1451 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1452 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1453 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1454 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1455
1456 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1457 \new Staff ="main" {
1458   \relative g' {
1459     r4 g8 g c4 c8 d |
1460     e4 r8
1461     <<
1462       { f8 c c }
1463       \new Staff \with {
1464         alignAboveContext = #"main"
1465       }
1466       {
1467         \override Staff.Clef.stencil = ##f
1468         \override Staff.TimeSignature.stencil = ##f
1469         { f8 f c }
1470       }
1471     >>
1472     r4 |
1473   }
1474 }
1475 @end lilypond
1476
1477 @noindent
1478 ここで、@code{\with} 節の後にある追加の括弧のペアが、@c
1479 その括弧に囲まれているオーバライドと音楽がオッシア譜に適用されることを@c
1480 保証するために、必要となります。
1481
1482 しかし、@code{\with} を使った譜コンテキストの変更と
1483 @code{\override} を使った音部記号と拍子記号のステンシルの変更との違いは@c
1484 何なのでしょうか?@c
1485 主な違いは、@code{\with} 節の中で行われた変更はそのコンテキストが@c
1486 作成されるときに行われ、@c
1487 そのコンテキストでは @strong{デフォルト} 値として残ります。@c
1488 一方、音楽の中に埋め込まれた @code{\set} コマンドや
1489 @code{\override} コマンドは動的です
1490 -- それらは音楽のある特定のポイントに同期して変更を行います。@c
1491 変更が @code{\unset} や @code{\revert} を使ってセットを解除されたり@c
1492 元に戻された場合、デフォルト値
1493 -- これは @code{\with} 節でセットされていた場合はその値、@c
1494 そうでない場合は通常のデフォルト値 -- に戻ります。
1495
1496 いくつかのコンテキスト プロパティは @code{\with} 節でのみ変更可能です。@c
1497 これらは、コンテキストが作成された後では、変更されることのないプロパティです。@c
1498 @code{alignAboveContext} とそのパートナー @code{alignBelowContext} が@c
1499 そのようなプロパティです -- いったん譜が作成されると、@c
1500 譜のアラインメントは決定され、@c
1501 それを後で変更しようとすることには意味がありません。
1502
1503 レイアウト オブジェクトのデフォルト値は @code{\with} 節で@c
1504 セットすることもできます。@c
1505 通常の @code{\override} コマンドをコンテキスト名を省いて@c
1506 使用するだけです。@c
1507 コンテキスト名を省略するのは、そのコンテキストは明らかに
1508 @code{\with} 節が変更しようとしているコンテキストだからです。@c
1509 実際、@code{\with} 節の中でコンテキストを指定するとエラーが発生します。
1510
1511 それでは上記の例を以下のように書き換えます:
1512
1513 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1514 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1515 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1516 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1517
1518 @c KEEP LY
1519 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1520 \new Staff ="main" {
1521   \relative g' {
1522     r4 g8 g c4 c8 d |
1523     e4 r8
1524     <<
1525       { f8 c c }
1526       \new Staff \with {
1527         alignAboveContext = #"main"
1528         % この譜には音部記号を譜刻しません
1529         \override Clef.stencil = ##f
1530         % この譜には拍子記号を譜刻しません
1531         \override TimeSignature.stencil = ##f
1532       }
1533       { f8 f c }
1534     >>
1535     r4 |
1536   }
1537 }
1538 @end lilypond
1539
1540 最後に、レイアウト オブジェクトのサイズを変更してみます。
1541
1542 いくつかのレイアウト オブジェクトはある書体から選択された図柄として@c
1543 作成されます。@c
1544 これには符頭、臨時記号、マークアップ、音部記号、拍子記号、強弱記号、@c
1545 歌詞が含まれます。@c
1546 それらのサイズは、これから見ていくように、@code{font-size} プロパティを@c
1547 変更することによって変更されます。@c
1548 スラーやタイのような他のレイアウト オブジェクト
1549 -- 一般には、スパナ オブジェクト (spanner objects)
1550 -- は個々に描かれるため、@c
1551 @code{font-size} プロパティとは関係がありません。@c
1552 一般に、それらのオブジェクトはそれらを取り付けられるオブジェクトからサイズを@c
1553 決定する (訳者: 例えば、スラーはそのスラーが付着する音符から@c
1554 そのスラーのサイズを決定する) ので、@c
1555 通常はサイズを手動で変更する必要はありません。@c
1556 さらに、符幹や小節線の長さ、連桁や他の線の太さ、譜線の間隔などといった@c
1557 他のプロパティはすべて特別な方法で変更する必要があります。
1558
1559 オッシアの例に戻って、まず @code{font-size} を変更してみましょう。@c
1560 これを行うには 2 通りの方法があります。@c
1561 以下のようなコマンドで @code{NoteHead} のような各オブジェクト タイプの@c
1562 フォント サイズを変更する:
1563
1564 @example
1565 \override NoteHead.font-size = #-2
1566 @end example
1567
1568 あるいは、@code{\set} を使って特別なプロパティ @code{fontSize} を設定するか、@c
1569 それを @code{\with} 節に含める
1570 (ただし、@code{\set} は含めません) ことによって@c
1571 すべてのフォントのサイズを変更します:
1572
1573 @example
1574 \set fontSize = #-2
1575 @end example
1576
1577 これらの命令文は両方ともフォント サイズを前の値から 2 段階減らします。@c
1578 各段階でサイズはおよそ 12% 増減します。
1579
1580 それではオッシアの例でフォント サイズを変更してみましょう:
1581
1582 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1583 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1584 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1585 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1586 @cindex fontSize property, example (fontSize プロパティの例)
1587
1588 @c KEEP LY
1589 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1590 \new Staff ="main" {
1591   \relative g' {
1592     r4 g8 g c4 c8 d |
1593     e4 r8
1594     <<
1595       { f8 c c }
1596       \new Staff \with {
1597         alignAboveContext = #"main"
1598         \override Clef.stencil = ##f
1599         \override TimeSignature.stencil = ##f
1600         % すべてのフォント サイズを約 24% 減らします
1601         fontSize = #-2
1602       }
1603       { f8 f c }
1604     >>
1605     r4 |
1606   }
1607 }
1608 @end lilypond
1609
1610 これでもまだ完璧ではありません。@c
1611 符頭とフラグは小さくなりましたが、符幹はそれに対して長すぎ、@c
1612 譜線は離れすぎています。@c
1613 これらをフォント サイズの減少に比例してスケール ダウンさせる必要があります。@c
1614 次のサブ セクションでそれを行う方法について議論します。
1615
1616
1617 @node オブジェクトの長さと太さ
1618 @subsection オブジェクトの長さと太さ
1619 @translationof Length and thickness of objects
1620
1621 @cindex distances (距離)
1622 @cindex thickness (太さ)
1623 @cindex length (長さ)
1624 @cindex magstep
1625 @cindex size, changing (サイズを変更する)
1626 @cindex stem length, changing (符幹の長さを変更する)
1627 @cindex staff line spacing, changing (譜線の間隔を変更する)
1628
1629 LilyPond では距離と長さは一般に譜スペース -- 譜の中の隣り合う線の間隔 --
1630 で測ります (特別な場合では、譜スペースの半分で測ることもあります)。@c
1631 一方、たいていの @code{thickness} プロパティは @code{line-thickness} と@c
1632 呼ばれる内部プロパティを単位として測ります。@c
1633 例えば、デフォルトでは、ヘアピン (訳者: 強弱記号) の線の太さは
1634 1 単位の @code{line-thickness} であり、@c
1635 音符の符幹の @code{thickness} は 1.3 です。@c
1636 けれども、それとは単位の異なる太さプロパティがあるということにも@c
1637 注意してください。@c
1638 例えば、連桁の太さプロパティは譜スペースで測ります。
1639
1640 それでは、どうやって長さをフォント サイズに比例させるのでしょうか?@c
1641 これは、まさにこの目的のために提供されている @code{magstep} と呼ばれる@c
1642 特別な関数の助けを借りることによって達成できます。@c
1643 この関数は引数を 1 つ -- フォント サイズの変化 (前の例では #-2) --
1644 をとり、他のオブジェクトの縮小に比例したスケーリング ファクタを返します。@c
1645 以下のように使用します:
1646
1647 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1648 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1649 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1650 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1651 @cindex fontSize property, example (fontSize プロパティの例)
1652 @cindex StaffSymbol, example of overriding (StaffSymbol をオーバライドする例)
1653 @cindex magstep function, example of using (magstep 関数の使用例)
1654 @cindex staff-space property, example (staff-space プロパティの例)
1655 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1656
1657 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1658 \new Staff ="main" {
1659   \relative g' {
1660     r4 g8 g c4 c8 d |
1661     e4 r8
1662     <<
1663       { f8 c c }
1664       \new Staff \with {
1665         alignAboveContext = #"main"
1666         \override Clef.stencil = ##f
1667         \override TimeSignature.stencil = ##f
1668         fontSize = #-2
1669         % 符幹の長さと譜線の間隔を減らします
1670         \override StaffSymbol.staff-space = #(magstep -2)
1671       }
1672       { f8 f c }
1673     >>
1674     r4 |
1675   }
1676 }
1677 @end lilypond
1678
1679 @noindent
1680 符幹の長さと他の多くの長さに関係するプロパティは常に
1681 @code{staff-space} プロパティの値と比例関係になるよう算出されるため、@c
1682 それらの長さも自動的にスケール ダウンされます。@c
1683 これはオッシアの垂直方向のスケールだけに効果を及ぼすということに@c
1684 注意してください -- 水平方向のスケールは、メインの音楽と同期するよう、@c
1685 メインの音楽のレイアウトによって決定されるため、水平方向のスケールは
1686 @code{staff-space} の変更によっていかなる影響も受けません。@c
1687 もちろん、メインの音楽のすべてのスケールがこの方法で変更された場合、@c
1688 水平方向のスペースも影響を受けます。@c
1689 このことについては、後のレイアウト セクションで議論します。
1690
1691 そして、これでオッシアの作成は完了です。@c
1692 他のすべてのオブジェクトのサイズと長さが類似の方法で変更されるかもしれません。
1693
1694 上記の例のようなスケールのちょっとした変更に対して、小節線、連桁、ヘアピン、@c
1695 スラーなどのさまざまな描画線の太さは通常はグローバルな調節を必要としません。@c
1696 ある特定のレイアウト オブジェクトの太さを調節する必要がある場合、@c
1697 それを達成する最良の方法はそのオブジェクトの @code{thickness} プロパティを@c
1698 オーバライドすることです。@c
1699 スラーの太さを変更する例は @ref{レイアウト オブジェクトのプロパティ} で@c
1700 示されています。@c
1701 すべての描画オブジェクト (つまり、フォントから作り出される@c
1702 オブジェクトではないもの) の太さが同様の方法で変更されるかもしれません。
1703
1704
1705 @node オブジェクトの配置
1706 @section オブジェクトの配置
1707 @translationof Placement of objects
1708
1709 @menu
1710 * 自動配置::
1711 * 譜内部オブジェクト::
1712 * 譜外部オブジェクト::
1713 @end menu
1714
1715
1716 @node 自動配置
1717 @subsection 自動配置
1718 @translationof Automatic behavior
1719
1720 @cindex within-staff objects (譜内部オブジェクト)
1721 @cindex outside-staff objects (譜内部オブジェクト)
1722 @cindex objects, within-staff (譜内部オブジェクト)
1723 @cindex objects, outside-staff (譜外部オブジェクト)
1724
1725 音楽記譜法には譜に属するオブジェクトがいくつかあり、@c
1726 他のオブジェクトは譜の外側に置かれるべきです。@c
1727 それらはそれぞれ譜内部オブジェクトと譜外部オブジェクトと呼ばれます。
1728
1729 譜内部オブジェクトは譜上に置かれます
1730 -- 符頭、符幹、臨時記号などです。@c
1731 通常、それらの位置は音楽自体によって決定されます
1732 -- 譜内部オブジェクトは譜のある特定の線と同じ垂直位置に置かれたり、@c
1733 そこに置かれるべき他のオブジェクトにくっつけられたりします。@c
1734 近接する和音の中にある符頭、符幹、臨時記号の衝突は普通は自動的に回避されます。@c
1735 これから見ていくように、この自動配置を変更することができるコマンドと@c
1736 オーバライドがあります。
1737
1738 譜の外部にあるオブジェクトには、リハーサル記号、テキスト、@c
1739 強弱記号などがあります。@c
1740 LilyPond が持つ譜外部オブジェクトの垂直位置のルールは、@c
1741 譜外部オブジェクトをできるだけ譜の近くに、しかし他のオブジェクトと@c
1742 衝突しない程度の近さに置くというものです。@c
1743 以下で示すように、LilyPond はオブジェクトを配置する順番を決定するために
1744 @code{outside-staff-priority} プロパティを使用します。
1745
1746 最初に、LilyPond はすべての譜内部オブジェクトを配置します。@c
1747 それから、@code{outside-staff-priority} に従って譜外部オブジェクトを@c
1748 並べます。@c
1749 譜外部オブジェクトは最小の @code{outside-staff-priority} を@c
1750 持つオブジェクトから順番に 1 つずつ並べられ、すでに配置されたオブジェクトと@c
1751 衝突しないように配置されます。@c
1752 つまり、2 つの譜外部オブジェクトが同じスペースを巡って競合する場合、@c
1753 より小さな @code{outside-staff-priority} を持つオブジェクトが@c
1754 譜の近くに配置されます。@c
1755 2 つのオブジェクトが同じ @code{outside-staff-priority} を持つ場合、@c
1756 先に発生するオブジェクトが譜の近くに配置されます。
1757
1758 以下の例では、すべてのマークアップ テキストが同じ優先度を持っています
1759 (なぜなら、優先度が明示的にセットされていないからです)。@c
1760 @q{Text3} が自動的に譜の近く、@q{Text2} の@c
1761 すぐ下に納まるよう配置されていることに注意してください。
1762
1763 @cindex markup example (マークアップの例)
1764
1765 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1766 c2^"Text1"
1767 c2^"Text2" |
1768 c2^"Text3"
1769 c2^"Text4" |
1770 @end lilypond
1771
1772 デフォルトでは、譜も互いにできるだけ近くなるよう配置されます
1773 (最小間隔に従います)。@c
1774 音符が隣接する譜に向かって長く突き出てている場合、譜を離さないと@c
1775 記譜したものが重なり合ってしまう場合にのみ譜は離されます。@c
1776 以下の例は譜の調整によって音符が @q{ぴったりと納まる} 様子を示しています:
1777
1778 @lilypond[quote,ragged-right,verbatim]
1779 <<
1780   \new Staff {
1781     \relative c' { c4 a, }
1782   }
1783   \new Staff {
1784     \relative c'''' { c4 a, }
1785   }
1786 >>
1787 @end lilypond
1788
1789
1790 @node 譜内部オブジェクト
1791 @subsection 譜内部オブジェクト
1792 @translationof Within-staff objects
1793
1794 これまでにコマンド @code{\voiceXXX} がスラー、タイ、運指法記号、@c
1795 符幹の向きに依存する他のすべてに対してどのように影響を与えるかを見てきました。@c
1796 これらのコマンドは、多声部音楽を記述しているときに上下する旋律を@c
1797 見分けられるようにすることを可能にするために不可欠なものです。@c
1798 しかしながら、この自動機能をオーバライドする必要がある場合もあります。@c
1799 このオーバライドは音楽全体に対しても、個々の音符に対してもできます。@c
1800 この自動機能を制御しているプロパティは各レイアウト オブジェクトの
1801 @code{direction} プロパティです。@c
1802 まず、これは何をするのかを説明し、それから、作成済みのコマンドを@c
1803 いくつか紹介します。@c
1804 それらのコマンドを使うと、一般的な変更のための明示的なオーバライドを@c
1805 コードしなくて済みます。
1806
1807 スラーやタイのようなレイアウト オブジェクトはカーブを描き、曲がり、@c
1808 上下します。@c
1809 符幹やフラグのような他のオブジェクトも上下の向きによって位置が左右します。@c
1810 @code{direction} がセットされているときは、これは自動的に制御されます。
1811
1812 @cindex down (下)
1813 @cindex up (上)
1814 @cindex center (中央)
1815 @cindex neutral (ニュートラル)
1816
1817 以下の例は、小節 1 で符幹のデフォルトの振る舞いを示しています。@c
1818 高い位置にある音符の符幹は下向きで、低い位置にある音符の符幹は上向きです。@c
1819 続いて 4 つの音符の符幹をすべて強制的に下向きにし、4 つの音符の符幹を@c
1820 すべて強制的に上向きにし、最後に 4 つの音符の符幹をデフォルトに戻します。
1821
1822 @cindex Stem, example of overriding (Stem をオーバライドする例)
1823 @cindex direction property, example (direction プロパティの例)
1824
1825 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1826 a4 g c a |
1827 \override Stem.direction = #DOWN
1828 a4 g c a |
1829 \override Stem.direction = #UP
1830 a4 g c a |
1831 \revert Stem.direction
1832 a4 g c a |
1833 @end lilypond
1834
1835 ここで定数 @code{DOWN} と @code{UP} を使っています。@c
1836 これらはそれぞれ値 @w{@code{-1}} と @code{+1} を持ち、定数の代わりに@c
1837 それらの数値を使うこともできまはす。@c
1838 さらに値 @code{0} を使う場合もあります。@c
1839 この値は符幹では @code{UP} を意味するものとして扱われますが、@c
1840 いくつかのオブジェクトでは @q{center} という意味になります。@c
1841 値 @code{0} を持つ定数に @code{CENTER} があります。
1842
1843 しかしながら、これらの明示的なオーバライドは普通は使われません。@c
1844 もっと簡単で定義済みのコマンドが利用可能だからです。@c
1845 ここに一般的なコマンドの表を挙げます。@c
1846 それぞれのコマンドの意味が明白でない場合は、そのコマンドの意味を述べています。
1847
1848 @multitable @columnfractions .2 .2 .25 .35
1849 @headitem 下/左
1850   @tab 上/右
1851   @tab 元に戻す
1852   @tab 効果
1853 @item @code{\arpeggioArrowDown}
1854   @tab @code{\arpeggioArrowUp}
1855   @tab @code{\arpeggioNormal}
1856   @tab 矢印が下に付く、上に付く、付かない
1857 @item @code{\dotsDown}
1858   @tab @code{\dotsUp}
1859   @tab @code{\dotsNeutral}
1860   @tab 譜線を避けるための移動方向
1861 @item @code{\dynamicDown}
1862   @tab @code{\dynamicUp}
1863   @tab @code{\dynamicNeutral}
1864   @tab
1865 @item @code{\phrasingSlurDown}
1866   @tab @code{\phrasingSlurUp}
1867   @tab @code{\phrasingSlurNeutral}
1868   @tab Note: スラー コマンドとは別になります
1869 @item @code{\slurDown}
1870   @tab @code{\slurUp}
1871   @tab @code{\slurNeutral}
1872   @tab
1873 @item @code{\stemDown}
1874   @tab @code{\stemUp}
1875   @tab @code{\stemNeutral}
1876   @tab
1877 @item @code{\textSpannerDown}
1878   @tab @code{\textSpannerUp}
1879   @tab @code{\textSpannerNeutral}
1880   @tab スパナとして挿入されるテキストが譜の下/上にくる
1881 @item @code{\tieDown}
1882   @tab @code{\tieUp}
1883   @tab @code{\tieNeutral}
1884   @tab
1885 @item @code{\tupletDown}
1886   @tab @code{\tupletUp}
1887   @tab @code{\tupletNeutral}
1888   @tab 連符記号が音符の下/上にくる
1889 @end multitable
1890
1891 これらの定義済みコマンドの前には @code{\once} が@c
1892 付か @strong{ない} かもしれません。@c
1893 コマンドの効果を単一の音符に制限したい場合、@c
1894 等価の @code{\once \override} コマンドを使用するか、@c
1895 あるいは、定義済みコマンドを使用して、効果を受けた音符の後に@c
1896 対応する @code{\xxxNeutral} コマンドを置かなければなりません。
1897
1898 @subheading 運指法記号 (Fingering)
1899
1900 @cindex fingering, placement (運指法記号の配置)
1901 @cindex fingering, chords (和音の運指法記号)
1902
1903 単一の音符に対する運指法記号の配置も @code{direction} プロパティによって@c
1904 制御できますが、@code{direction} を変更しても和音の運指法記号は影響を@c
1905 受けません。@c
1906 これから見ていくように、和音の中の個々の音符の運指法記号を制御するための@c
1907 特別なコマンドがあります。@c
1908 このコマンドを使うことで運指法記号を各音符の上、下、左、右に@c
1909 配置することができます。
1910
1911 まず、単一の音符の運指法記号に対する @code{direction} を効果を示します。@c
1912 最初の小節はデフォルト状態で、その後で @code{DOWN} と @code{UP} を@c
1913 指定したときの効果を示します:
1914
1915 @cindex Fingering, example of overriding (Fingering をオーバライドする例)
1916 @cindex direction property, example (direction プロパティの例)
1917
1918 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
1919 c4-5 a-3 f-1 c'-5 |
1920 \override Fingering.direction = #DOWN
1921 c4-5 a-3 f-1 c'-5 |
1922 \override Fingering.direction = #UP
1923 c4-5 a-3 f-1 c'-5 |
1924 @end lilypond
1925
1926 しかしながら、@code{direction} プロパティをオーバライドすることは、@c
1927 手動で運指法記号を音符の上または下に配置するもっとも簡単な方法ではありません。@c
1928 運指法番号の前に @code{-} の代わりに @code{_} または @code{^} を使う方が@c
1929 普通は適切です。@c
1930 ここで、上記の例にこの方法を用いた例を挙げます:
1931
1932 @cindex fingering example (運指法記号の例)
1933
1934 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
1935 c4-5 a-3 f-1 c'-5 |
1936 c4_5 a_3 f_1 c'_5 |
1937 c4^5 a^3 f^1 c'^5 |
1938 @end lilypond
1939
1940 @code{direction} プロパティは和音では無視されますが、@c
1941 方向を示す接頭辞 @code{_} と @code{^} は機能します。@c
1942 以下で示すように、デフォルトでは、運指法記号は和音の音符の@c
1943 上と下の両方に自動的に配置されます:
1944
1945 @cindex fingering example (運指法記号の例)
1946
1947 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
1948 <c-5 g-3>4
1949 <c-5 g-3 e-2>4
1950 <c-5 g-3 e-2 c-1>4
1951 @end lilypond
1952
1953 @noindent
1954 しかし、以下で示すように、運指法番号のすべてまたはいずれかを手動で強制的に@c
1955 和音の上または下に配置するために、これはオーバライドされるかもしれません:
1956
1957 @cindex fingering example (運指法記号の例)
1958
1959 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
1960 <c-5 g-3 e-2 c-1>4
1961 <c^5 g_3 e_2 c_1>4
1962 <c^5 g^3 e^2 c_1>4
1963 @end lilypond
1964
1965 @code{\set fingeringOrientations} コマンドを使うことによって和音の中に@c
1966 ある個々の音符の運指法記号の配置をより細かく制御することさえできます。@c
1967 このコマンドのフォーマットは以下のようなものです:
1968
1969 @example
1970 @code{\set fingeringOrientations = #'([up] [left/right] [down])}
1971 @end example
1972
1973 @noindent
1974 @code{fingeringOrientations} は @code{Voice} コンテキストのプロパティであり、@c
1975 @code{New_fingering_engraver} によって作成、使用されるため、@c
1976 @code{\set} が使用されます。
1977
1978 このプロパティには 1 つから 3 つまでの値のリストがセットされるかもしれません。@c
1979 このプロパティは運指法記号を上 (リストに @code{up} がある場合)、@c
1980 下 (リストに @code{down} がある場合)、@c
1981 左 (リストに @code{left} がある場合。リストに @code{right} がある場合は右)
1982 に配置します。@c
1983 逆に配置位置がリストされていない場合、その位置に運指法記号は配置されません。@c
1984 LilyPond はこれらの制約を受け取り、
1985 後に続く和音の音符への運指法記号をうまく配置します。@c
1986 @code{left} と @code{right} は相互排他的であるということに注意してください --
1987 運指法記号は左右のどちらかにしか配置されないか、どちらにも配置されません。
1988
1989 @warning{このコマンドを使って単一の音符への運指法記号の配置を@c
1990 コントロールするには、その音符を山括弧で囲んで単一音符の和音として@c
1991 記述する必要があります。}
1992
1993 いくつか例を挙げます:
1994
1995 @cindex fingering example (運指法記号の例)
1996 @cindex @code{\set}, example of using (@code{\set} の使用例)
1997 @cindex fingeringOrientations property, example (fingeringOrientations プロパティの例)
1998
1999 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
2000 \set fingeringOrientations = #'(left)
2001 <f-2>4
2002 <c-1 e-2 g-3 b-5>4
2003 \set fingeringOrientations = #'(left)
2004 <f-2>4
2005 <c-1 e-2 g-3 b-5>4 |
2006 \set fingeringOrientations = #'(up left down)
2007 <f-2>4
2008 <c-1 e-2 g-3 b-5>4
2009 \set fingeringOrientations = #'(up left)
2010 <f-2>4
2011 <c-1 e-2 g-3 b-5>4 |
2012 \set fingeringOrientations = #'(right)
2013 <f-2>4
2014 <c-1 e-2 g-3 b-5>4
2015 @end lilypond
2016
2017 @noindent
2018 運指法記号が少し込み合っているように見える場合は、@c
2019 @code{font-size} でサイズを下げることができます。@c
2020 デフォルト値は内部リファレンスの @code{Fingering} オブジェクトのページから
2021 @w{@code{-5}} であることがわかるので、@w{@code{-7}} にセットしてみましょう:
2022
2023 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
2024 \override Fingering.font-size = #-7
2025 \set fingeringOrientations = #'(left)
2026 <f-2>4
2027 <c-1 e-2 g-3 b-5>4
2028 \set fingeringOrientations = #'(left)
2029 <f-2>4
2030 <c-1 e-2 g-3 b-5>4 |
2031 \set fingeringOrientations = #'(up left down)
2032 <f-2>4
2033 <c-1 e-2 g-3 b-5>4
2034 \set fingeringOrientations = #'(up left)
2035 <f-2>4
2036 <c-1 e-2 g-3 b-5>4 |
2037 \set fingeringOrientations = #'(right)
2038 <f-2>4
2039 <c-1 e-2 g-3 b-5>4
2040 @end lilypond
2041
2042
2043 @node 譜外部オブジェクト
2044 @subsection 譜外部オブジェクト
2045 @translationof Outside-staff objects
2046
2047 譜外部オブジェクトは自動的に衝突を回避するよう配置されます。@c
2048 小さな値の @code{outside-staff-priority} プロパティを持つオブジェクトは@c
2049 譜の近くに配置され、他の譜外部オブジェクトは衝突を避けるのに必要な分だけ@c
2050 離されます。@c
2051 @code{outside-staff-priority} は @code{grob-interface} の中で@c
2052 定義されているため、すべてのレイアウト  オブジェクトのプロパティです。@c
2053 デフォルトでは、すべての譜内部オブジェクトの @code{outside-staff-priority} は
2054 @code{#f} にセットされていて、譜外部オブジェクトが作成されたときに@c
2055 その譜外部オブジェクトの @code{outside-staff-priority} に適当な数値が@c
2056 セットされます。@c
2057 以下の表はいくつかの一般的な譜外部オブジェクトのデフォルトの
2058 @code{outside-staff-priority} 値を示しています。
2059
2060 @multitable @columnfractions .3 .3 .3
2061 @headitem レイアウト オブジェクト
2062   @tab 優先度
2063   @tab 以下のオブジェクトの配置を制御する:
2064 @item @code{RehearsalMark}
2065   @tab @code{1500}
2066   @tab リハーサル記号
2067 @item @code{MetronomeMark}
2068   @tab @code{1000}
2069   @tab メトロノーム記号
2070 @item @code{VoltaBracketSpanner}
2071   @tab @code{600}
2072   @tab Volta (番号付きのリピート) の囲み
2073 @item @code{TextScript}
2074   @tab @code{450}
2075   @tab マークアップ テキスト
2076 @item @code{MultiMeasureRestText}
2077   @tab @code{450}
2078   @tab 全休符上のテキスト
2079 @item @code{OttavaBracket}
2080   @tab @code{400}
2081   @tab オッターバ (オクターブを上下させる記号) の囲み
2082 @item @code{TextSpanner}
2083   @tab @code{350}
2084   @tab テキスト スパナ
2085 @item @code{DynamicLineSpanner}
2086   @tab @code{250}
2087   @tab すべての強弱記号
2088 @item @code{BarNumber}
2089   @tab @code{100}
2090   @tab 小節番号
2091 @item @code{TrillSpanner}
2092   @tab @code{50}
2093   @tab トリル記号
2094 @end multitable
2095
2096 これらのうちのいくつかのデフォルトでの配置を示している例を挙げます。
2097
2098 @cindex text spanner (テキスト スパナ)
2099 @cindex ottava bracket (オッターバ囲み)
2100
2101 @funindex \startTextSpan
2102 @funindex startTextSpan
2103 @funindex \stopTextSpan
2104 @funindex stopTextSpan
2105
2106 @cindex TextSpanner, example of overriding (TextSpanner をオーバライドする例)
2107 @cindex bound-details property, example (bound-details プロパティの例)
2108
2109 @c KEEP LY
2110 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
2111 % 以降のテキスト スパナの詳細を設定します
2112 \override TextSpanner.bound-details.left.text
2113     = \markup { \small \bold Slower }
2114 % 強弱記号を譜の上に配置します
2115 \dynamicUp
2116 % オッターバ囲みの開始
2117 \ottava #1
2118 c'4 \startTextSpan
2119 % 強弱テキストとヘアピンを付け加えます
2120 c4\pp\<
2121 c4
2122 % テキスト スクリプトを付け加えます
2123 c4^Text |
2124 c4 c
2125 % 強弱テキストを付け加え、強弱ヘアピンを終わらせます
2126 c4\ff c \stopTextSpan |
2127 % オッターバ囲みを終わらせます
2128 \ottava #0
2129 c,4 c c c |
2130 @end lilypond
2131
2132 この例はテキスト スパナ -- 音楽の上に置かれる延長線付きのテキスト -- の@c
2133 作成方法についても示しています。@c
2134 スパナは @code{\startTextSpan} コマンドから
2135 @code{\stopTextSpan} コマンドまで延び、テキストのフォーマットは
2136 @code{\override TextSpanner} コマンドによって定義されます。@c
2137 詳細は @ruser{テキスト スパナ} を参照してください。
2138
2139 この例はさらにオッターバ囲みを作成する方法についても示しています。
2140
2141 @cindex tweaking bar number placement (小節番号の配置を調節する)
2142 @cindex bar numbers, tweaking placement (小節番号の配置を調節する)
2143 @cindex tweaking metronome mark placement (メトロノーム記号の配置を調節する)
2144 @cindex metronome mark, tweaking placement (メトロノーム記号の配置を調節する)
2145 @cindex tweaking rehearsal mark placement (リハーサル記号の配置を調節する)
2146 @cindex rehearsal marks, tweaking placement (リハーサル記号の配置を調節する)
2147
2148 @code{outside-staff-priority} のデフォルト値による配置が@c
2149 あなたの望みに合わない場合、いずれかのオブジェクトの優先度を@c
2150 オーバライドすることになるかもしれません。@c
2151 上記の例で、オッターバ囲みをテキスト スパナの下に配置したいとします。@c
2152 すべきことは、@code{OttavaBracket} は @code{Staff} コンテキストの中に@c
2153 作成されるということを思い出し、@code{OttavaBracket} の優先度を@c
2154 内部リファレンスか上記の表で調べて、それを @code{TextSpanner} の値よりも@c
2155 小さくすることです:
2156
2157 @cindex TextSpanner, example of overriding (TextSpanner をオーバライドする例)
2158 @cindex bound-details property, example (bound-details プロパティの例)
2159
2160 @c KEEP LY
2161 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
2162 % 以降のテキスト スパナの詳細を設定します
2163 \override TextSpanner.bound-details.left.text
2164     = \markup { \small \bold Slower }
2165 % 強弱記号を譜の上に配置します
2166 \dynamicUp
2167 % 以降のオッターバ囲みをテキスト スパナの下に配置します
2168 \once \override Staff.OttavaBracket.outside-staff-priority = #340
2169 % オッターバ囲みの開始
2170 \ottava #1
2171 c'4 \startTextSpan
2172 % 強弱テキストを付け加えます
2173 c4\pp
2174 % 強弱の線スパナを付け加えます
2175 c4\<
2176 % テキスト スクリプトを付け加えます
2177 c4^Text |
2178 c4 c
2179 % 強弱テキストを付け加えます
2180 c4\ff c \stopTextSpan |
2181 % オッターバ囲みを終わらせます
2182 \ottava #0
2183 c,4 c c c |
2184 @end lilypond
2185
2186 これらのオブジェクトのいくつか
2187 -- 特に、小節番号、メトロノーム記号、それにリハーサル記号 --
2188 はデフォルトでは @code{Score} コンテキストの中にあるため、@c
2189 それらのプロパティをオーバライドする場合は適切なコンテキストを@c
2190 指定する必要があることに注意してください。
2191
2192 @cindex slurs and outside-staff-priority (スラーと outside-staff-priority)
2193 @cindex slurs and articulations (スラーとアーティキュレーション)
2194 @cindex articulations and slurs (アーティキュレーションとスラー)
2195
2196 スラーはデフォルトでは譜内部オブジェクトに分類されています。@c
2197 しかしながら、譜の上部に配置された音符に付くスラーは@c
2198 しばしば譜の上に表示されます。@c
2199 このことは、スラーがまず最初に配置されるため、アーティキュレーションなどの@c
2200 譜外部オブジェクトをあまりにも高い位置に押し上げる可能性があります。@c
2201 アーティキュレーションの @code{avoid-slur} プロパティに
2202 @code{'inside} をセットすることでアーティキュレーションを@c
2203 スラーよりも内側に配置することができます。@c
2204 しかし、@code{avoid-slur} プロパティはアーティキュレーションの
2205 @code{outside-staff-priority} が @code{#f} にセットされている場合にのみ@c
2206 効果を持ちます。@c
2207 代替手段として、スラーの @code{outside-staff-priority} に数値を@c
2208 セットすることによって、スラーを他の譜外部オブジェクトとともに
2209 @code{outside-staff-priority} 値に従って配置することができます。@c
2210 ここで、2 つの方法の効果を示す例を挙げます:
2211
2212 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
2213 c4( c^\markup { \tiny \sharp } d4.) c8 |
2214 c4(
2215 \once \override TextScript.avoid-slur = #'inside
2216 \once \override TextScript.outside-staff-priority = ##f
2217 c4^\markup { \tiny \sharp } d4.) c8 |
2218 \once \override Slur.outside-staff-priority = #500
2219 c4( c^\markup { \tiny \sharp } d4.) c8 |
2220 @end lilypond
2221
2222 @code{outside-staff-priority} は、個々のオブジェクトの垂直方向の配置を@c
2223 制御するために使用することもできます。@c
2224 しかしながら、その結果は常に望み通りになるわけではありません。@c
2225 @ref{自動配置} にある例で @qq{Text3} を @qq{Text4} の上に@c
2226 配置したいとします。@c
2227 すべきことは @code{TextScript} の優先度を内部リファレンスか上記の表で調べて、@c
2228 @qq{Text3} の優先度を大きくすることです:
2229
2230 @cindex TextScript, example of overriding (TextScript をオーバライドする例)
2231 @cindex outside-staff-priority property, example (outside-staff-priority プロパティの例)
2232
2233 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2234 c2^"Text1"
2235 c2^"Text2" |
2236 \once \override TextScript.outside-staff-priority = #500
2237 c2^"Text3"
2238 c2^"Text4" |
2239 @end lilypond
2240
2241 これはたしかに @qq{Text3} を @qq{Text4} の上に配置しています。@c
2242 しかし、@qq{Text3}を @qq{Text2} の上に配置して、@c
2243 @qq{Text4} を押し下げてもいます。@c
2244 おそらく、これはそれほど望ましい結果ではないでしょう。@c
2245 本当に望んでいることは、すべての注釈を@c
2246 譜の上に譜から同じ距離だけ離して配置することです。@c
2247 そうするには明らかに、テキストのためにもっと広いスペースを確保するために、@c
2248 音符を水平方向に広げる必要があります。@c
2249 これは @code{\textLengthOn} コマンドを用いることで達成できます。
2250
2251 @subheading \textLengthOn
2252
2253 @cindex notes, spreading out with text (テキストに合わせて音符の間隔を広げる)
2254
2255 @funindex \textLengthOn
2256 @funindex textLengthOn
2257 @funindex \textLengthOff
2258 @funindex textLengthOff
2259
2260 デフォルトでは、音楽のレイアウトが考慮されている限り、@c
2261 マークアップによって作り出されるテキストは水平方向のスペースと関係しません。@c
2262 @code{\textLengthOn} コマンドはこの動作を逆にして、@c
2263 テキストの配置に便宜をはかる必要がある限り、音符の間隔を広げます:
2264
2265 @c KEEP LY
2266 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2267 \textLengthOn  % 音符の間隔を広げてテキストに揃えます
2268 c2^"Text1"
2269 c2^"Text2" |
2270 c2^"Text3"
2271 c2^"Text4" |
2272 @end lilypond
2273
2274 デフォルトの動作に戻すためのコマンドは @code{\textLengthOff} です。@c
2275 @code{\once} は @code{\override}, @code{\set}, @code{\revert}
2276 それに @code{\unset} だけに付けることができるということを@c
2277 思い出してください。@c
2278 そのため、@code{\textLengthOn} で @code{\once} を使うことはできません。
2279
2280 @cindex markup text, allowing collisions (マークアップ テキストの衝突を許可する)
2281
2282 マークアップ テキストは譜の上に突き出している音符を避けます。@c
2283 このことが望ましくない場合、優先度を @code{#f} にセットすることによって@c
2284 上方向への自動再配置を Off にすることになるかもしれません。@c
2285 ここで、マークアップ テキストがそのような音符とどのように相互作用するかを@c
2286 示す例を挙げます。
2287
2288 @cindex TextScript, example of overriding (TextScript をオーバライドする例)
2289 @cindex outside-staff-priority property, example (outside-staff-priority プロパティの例)
2290
2291 @c KEEP LY
2292 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2293 % このマークアップは短いため衝突は起きません
2294 c2^"Tex" c'' |
2295 R1 |
2296
2297 % このマークアップは長くて納まりきらないため、上に押し上げられます
2298 c,,2^"Text" c'' |
2299 R1 |
2300
2301 % 衝突回避を OFF にします
2302 \once \override TextScript.outside-staff-priority = ##f
2303 c,,2^"Long Text   " c'' |
2304 R1 |
2305
2306 % 衝突回避を OFF にします
2307 \once \override TextScript.outside-staff-priority = ##f
2308 \textLengthOn        % そして textLengthOn を ON にします
2309 c,,2^"Long Text   "  % 後ろにスペースが付け加えられます
2310 c''2 |
2311 @end lilypond
2312
2313 @subheading 強弱記号
2314
2315 @cindex tweaking dynamics placement (強弱記号の配置を調整する)
2316 @cindex dynamics, tweaking placement (強弱記号の配置を調整する)
2317
2318 通常、強弱記号は譜の下に配置されます。@c
2319 しかしながら、@code{dynamicUp} コマンドを使うことで上に@c
2320 配置されるかもしれません。@c
2321 強弱記号は、その記号が付いている音符と垂直方向の関係で配置され、@c
2322 フレージング スラーや小節番号などの譜内部オブジェクトのすべてよりも@c
2323 下 (あるいは上) に配置されます。@c
2324 このことは、以下の例のように、@c
2325 到底受け入れられない結果を生み出す可能性があります:
2326
2327 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
2328 \clef "bass"
2329 \key aes \major
2330 \time 9/8
2331 \dynamicUp
2332 bes4.~\f\< \( bes4 bes8 des4\ff\> c16 bes\! |
2333 ees,2.~\)\mf ees4 r8 |
2334 @end lilypond
2335
2336 しかしながら、音符とそれに付けられた強弱記号が互いに近い場合、@c
2337 自動配置は後の方にある強弱記号を譜から離すことによって衝突を避けます。@c
2338 しかし、以下のかなり不自然な例が示すように、@c
2339 それは最適な配置ではないかもしれません:
2340
2341 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2342 \dynamicUp
2343 a4\f b\mf c\mp b\p
2344 @end lilypond
2345
2346 @noindent
2347 @q{実際} の音楽で同じような状況があった場合、音符の間隔をもう少し広げて、@c
2348 すべての強弱記号が譜から垂直方向に同じだけ離れるようにする方が@c
2349 望ましいかもしれません。@c
2350 マークアップ テキストの場合は @code{\textLengthOn} コマンドを@c
2351 用いることによってそうすることができますが、@c
2352 強弱記号には等価のコマンドがありません。@c
2353 そのため、@code{\override} コマンドを用いてそれを達成する方法を@c
2354 見出す必要があります。
2355
2356 @subheading グラフィカル オブジェクトのサイズ
2357
2358 @cindex grob sizing (グラフィカル オブジェクトのサイズを決定する)
2359 @cindex sizing grobs (グラフィカル オブジェクトのサイズを決定する)
2360
2361 まず最初に、グラフィカル オブジェクトのサイズがどのように決定されるかを@c
2362 学ばなくてはなりません。@c
2363 すべてのグラフィカル オブジェクトの内部では参照ポイントが定義され、@c
2364 それはそれらの親オブジェクトとの相対位置を決定するために使用されます。@c
2365 このポイントは親オブジェクトから垂直方向に @code{X-offset}、@c
2366 垂直方向に @code{Y-offset} 離れた位置になります。@c
2367 オブジェクトの水平方向の広がりは数値のペア @code{X-extent} で与えられ、@c
2368 そのペアはオブジェクトの左端と右端の参照ポイントとの相対関係について@c
2369 述べています。@c
2370 垂直方向の広がりも同様に数値のペア @code{Y-extent} によって与えられます。@c
2371 これらは @code{grob-interface} をサポートする@c
2372 すべてのグラフィカル オブジェクトが持つプロパティです。
2373
2374 @cindex @code{extra-spacing-width}
2375
2376 デフォルトでは、譜外部オブジェクトには 0 の幅が与えられているため、@c
2377 水平方向で重なる可能性があります。@c
2378 これは @code{extra-spacing-width} に @code{'(+inf.0 . -inf.0)} を@c
2379 セットすることによって、左端の広がりにプラス無限大、右端の広がりに@c
2380 マイナス無限大を付け加えるというトリックによって達成されています。@c
2381 そのため、譜外部オブジェクトが水平方向で重ならないことを保証するには、@c
2382 @code{extra-spacing-width} の値を @code{'(0 . 0)} に@c
2383 オーバライドする必要があります。@c
2384 これにより、本当の幅が明らかになります。@c
2385 以下は強弱記号テキストに対してこれを行うコマンドです:
2386
2387 @example
2388 \override DynamicText.extra-spacing-width = #'(0 . 0)
2389 @end example
2390
2391 @noindent
2392 これが前の例で機能するかどうかを見てみましょう:
2393
2394 @cindex DynamicText, example of overriding (DynamicText をオーバライドする例)
2395 @cindex extra-spacing-width property, example (extra-spacing-width プロパティの例)
2396
2397 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2398 \dynamicUp
2399 \override DynamicText.extra-spacing-width = #'(0 . 0)
2400 a4\f b\mf c\mp b\p |
2401 @end lilypond
2402
2403 @noindent
2404 確かに強弱記号の再配置をストップさせています。@c
2405 しかし、2 つの問題が残っています。@c
2406 強弱記号を互いにもう少し離すべきであり、それらは譜から@c
2407 同じ距離にあるほうが望ましいです。@c
2408 最初の問題は簡単に解決できます。@c
2409 @code{extra-spacing-width} を 0 にする代わりに、@c
2410 もう少し大きな値を与えるのです。@c
2411 単位は 2 本の譜線の間隔なので、左端を 1 単位の半分だけ左に移動させ、@c
2412 右端を 1 単位の半分だけ右に移動させると解決になります:
2413
2414 @cindex DynamicText, example of overriding (DynamicText をオーバライドする例)
2415 @cindex extra-spacing-width property, example (extra-spacing-width プロパティの例)
2416
2417 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2418 \dynamicUp
2419 % Extend width by 1 staff space
2420 \override DynamicText.extra-spacing-width = #'(-0.5 . 0.5)
2421 a4\f b\mf c\mp b\p
2422 @end lilypond
2423
2424 @noindent
2425 これで前よりも良くなりました。@c
2426 しかし、強弱記号が音符に合わせて上下するよりも、@c
2427 同じベースラインで揃っている方が望ましいでしょう。@c
2428 それを行うためのプロパティは @code{staff-padding} であり、@c
2429 後に続くセクションでカバーされています。
2430
2431
2432 @node オブジェクトの衝突
2433 @section オブジェクトの衝突
2434 @translationof Collisions of objects
2435
2436 @menu
2437 * オブジェクトを移動させる::
2438 * 表記の重なりを修正する::
2439 * 実際の音楽からの例::
2440 @end menu
2441
2442
2443 @node オブジェクトを移動させる
2444 @subsection オブジェクトを移動させる
2445 @translationof Moving objects
2446
2447 @cindex moving overlapping objects (重なり合っているオブジェクトを移動させる)
2448 @cindex moving colliding objects (衝突しているオブジェクトを移動させる)
2449 @cindex moving colliding grobs (衝突しているグラフィカル オブジェクトを移動させる)
2450 @cindex objects, moving colliding (衝突しているオブジェクトを移動させる)
2451 @cindex grobs, moving colliding (衝突しているグラフィカル オブジェクトを移動させる)
2452
2453 これを聞いて驚くかもしれませんが、LilyPond は完璧ではありません。@c
2454 いくつかの記譜要素が重なりある可能性があります。@c
2455 これは遺憾なことですが、実際にはごく稀です。@c
2456 通常、オブジェクトを移動させる必要性は読みやすさや美しさのためです
2457 -- オブジェクトの周りにもう少しスペースを多く/少なくとった方が@c
2458 より良くなるといった場合です。
2459
2460 記譜要素の重なりを解決する主要なアプローチが 3 つあります。@c
2461 それらは以下の順番で考慮されるべきです:
2462
2463 @enumerate
2464 @item
2465 重なり合っているオブジェクトの 1 つの @strong{direction} を
2466 @ref{譜内部オブジェクト} でリストアップした内部オブジェクトのための@c
2467 定義済みコマンドを用いて変更することになるかもしれません。@c
2468 符幹、スラー、連桁、タイ、強弱記号、テキスト、@c
2469 連符はこの方法で容易に再配置できるかもしれません。@c
2470 この方法の限界は配置の仕方の選択肢が 2 つしかないことであり、@c
2471 どちらも適当でないかもしれません。
2472
2473 @item
2474 LilyPond がレイアウト オブジェクトを配置するときに使用する@c
2475 @strong{オブジェクト プロパティ}を @code{\override} を用いて@c
2476 変更することになるかもしれません。@c
2477 オブジェクト プロパティに変更を加えることの利点は、@c
2478 (a) スペースをとる必要がある場合に他のいくつかのオブジェクトは@c
2479 自動的に移動させられます、@c
2480 (b) 1 回のオーバライドを同じオブジェクト タイプの@c
2481 インスタンスすべてに適用することができます。@c
2482 変更するプロパティには以下のものが含まれます:
2483
2484 @itemize
2485
2486 @item
2487 @code{direction}
2488
2489 これはすでに詳しくカバーされています --
2490 @ref{譜内部オブジェクト} を参照してください。
2491
2492 @item
2493 @code{padding}, @code{left-padding},
2494 @code{right-padding}, @code{staff-padding}
2495
2496 @cindex padding (パディング)
2497 @cindex left-padding property (left-padding プロパティ)
2498 @cindex padding property (padding プロパティ)
2499 @cindex right-padding property (right-padding プロパティ)
2500 @cindex staff-padding property (staff-padding プロパティ)
2501
2502 あるオブジェクトが配置されるとき、そのオブジェクトの
2503 @code{padding} プロパティが、そのオブジェクトとそのオブジェクトに@c
2504 最も隣接するオブジェクトの端との間に置かれる間隔を指定します。@c
2505 @strong{配置される最中}のオブジェクトの @code{padding} 値が@c
2506 使用されるということに注意してください。@c
2507 すでに配置されたオブジェクトの @code{padding} 値は無視されます。@c
2508 @code{padding} によって指定された間隔は @code{side-position-interface} を@c
2509 サポートするオブジェクトすべてに適用することができます。
2510
2511 臨時記号のグループの配置は、@code{padding} の代わりに、@code{left-padding} と
2512 @code{right-padding} によって制御されます。@c
2513 これらのプロパティは @code{AccidentalPlacement} オブジェクトの中にあり、@c
2514 注意すべきことに、そのオブジェクトは
2515 @strong{Staff} コンテキストの中にあります。@c
2516 譜刻プロセスでは、符頭が最初に譜刻され、臨時記号 (がある場合は) が@c
2517 次に符頭の左側に付け加えられます。@c
2518 このとき、臨時記号と符頭の間隔は
2519 @code{right-padding} プロパティによって指定されます。@c
2520 そのため、@code{AccidentalPlacement} オブジェクトの
2521 @code{right-padding} プロパティだけが臨時記号の配置に影響を与えます。
2522
2523 @code{staff-padding} プロパティは @code{padding} プロパティと@c
2524 深い関わりがあります:
2525 @code{padding} プロパティは、@code{side-position-interface} を@c
2526 サポートするオブジェクトとそれに最隣接する他のオブジェクト
2527 (一般には音符や譜線) との間のスペースの最小量を制御します。@c
2528 一方、@code{staff-padding} は常に譜の外側に配置される@c
2529 レイアウト オブジェクトにのみ適用されます --
2530 これは譜の外側に配置されるオブジェクトと譜の間に挿入されるべき@c
2531 スペースの最小量を制御します。@c
2532 @code{staff-paddin} は譜ではなく音符との相対関係で配置されるオブジェクトには@c
2533 影響を与えないということに注意してください。@c
2534 そのようなオブジェクトに対して @code{staff-padding} のオーバライドを@c
2535 行ったとしてもエラーは起きないかもしれませんが、無視されます。
2536
2537 あなたが再配置しようとしているオブジェクトに対して求められる
2538 @code{padding} プロパティはどれなのかを見つけるには、内部リファレンスに@c
2539 戻ってそのオブジェクトのプロパティを調べる必要があります。@c
2540 @code{padding} プロパティはあなたが再配置しようとしているオブジェクトの中には@c
2541 無いかもしれないということに注意してください。@c
2542 その場合は、そのオブジェクトに関係があるオブジェクトを調べてください。
2543
2544 すべての @code{padding} 値は譜スペースで測られます。@c
2545 たいていのオブジェクトでは、この値はデフォルトで約 1.0 か@c
2546 それ以下にセットされています (それぞれのオブジェクトで値はさまざまです)。@c
2547 間隔を大きく (あるいは小さく) する必要がある場合、@c
2548 その値はオーバライドされるかもしれません。
2549
2550 @item
2551 @code{self-alignment-X}
2552
2553 @cindex self-alignment-X property (self-alignment-X プロパティ)
2554
2555 このプロパティを使うことで、親オブジェクトの参照ポイントに従って、@c
2556 オブジェクトを左、右、中央に揃えることができます。@c
2557 このプロパティは @code{self-alignment-interface} をサポートする@c
2558 オブジェクトすべてに対して使用することができます。@c
2559 一般に、テキストを保持するオブジェクトです。@c
2560 値は @code{Left}, @code{RIGHT}, @code{CENTER} です。@c
2561 代替手段として、@w{@code{-1}} から @code{+1} までの数値を@c
2562 指定することもできます。@c
2563 @code{-1} は左揃えであり、@code{+1} は右揃え、@c
2564 その間の数値は左揃えから右揃えへのテキストを移動させます
2565 (訳者: @code{-0.5} であれば、左揃えと中央揃えの中間ということ)。@c
2566 @code{1} よりも大きな数値を指定することでテキストをさらに左へ、@c
2567 @w{@code{-1}} よりも小さな数値を指定することでテキストを@c
2568 さらに右へ移動させることができます。@c
2569 この値を @code{1} 増減することによる移動量はそのテキストの長さの半分です。
2570
2571 @item
2572 @code{extra-spacing-width}
2573
2574 @cindex extra-spacing-width property (extra-spacing-width プロパティ)
2575
2576 このプロパティは @code{item-interface} をサポートするオブジェクトすべてで@c
2577 利用可能です。@c
2578 このプロパティは 2 つの数値をとり、最初の数値はオブジェクトの左側に@c
2579 余白を追加し、2 番目の数値はオブジェクトの右側に余白を追加します。@c
2580 負値はオブジェクトの端を左に移動させ、正値は右に移動させます。@c
2581 そのため、オブジェクトを広くするには、最初の数値を負値にして、@c
2582 2 番目の数値を正値にする必要があります。@c
2583 すべてのオブジェクトが両方の数値を遵守するわけではないということに@c
2584 注意してください。@c
2585 例えば、@code{Accidental} オブジェクトは最初の数値 (左端) にしか@c
2586 注意を払いません。
2587
2588 @item
2589 @code{staff-position}
2590
2591 @cindex staff-position property (staff-position プロパティ)
2592
2593 @code{staff-position} は @code{staff-symbol-referencer-interface} の@c
2594 プロパティです。@c
2595 これは、譜との相対関係で配置されるオブジェクトによってサポートされます。@c
2596 このプロパティはオブジェクトの垂直方向の位置を、譜の中央にある譜線から@c
2597 譜スペースの半分を単位として、指定します。@c
2598 このプロパティは複数小節に亘る休符、タイ、異なるボイスの中にある音符といった@c
2599 レイアウト オブジェクトの衝突を解決する場合に有用です。
2600
2601 @item
2602 @code{force-hshift}
2603
2604 @cindex force-hshift property (force-hshift プロパティ)
2605
2606 和音の中で近接して配置された音符や異なるボイスの中にあって同時に起こる音符は、@c
2607 符頭の衝突を避けるために、2 つ (場合によってはそれ以上) の列に@c
2608 配置されます。@c
2609 この列は音符列と呼ばれ、その列に音符をレイアウトするために @code{NoteColumn}
2610 と呼ばれるオブジェクトが作成されます。
2611
2612 @code{force-hshift} プロパティは @code{NoteColumn} のプロパティです
2613 (実際には @code{note-column-interface} のプロパティです)。@c
2614 このプロパティを変更することで音符列を、音符列特有の単位 --
2615 すなわち、最初のボイスの中にある音符の符頭の幅 -- に従って、@c
2616 移動させることができます。@c
2617 このプロパティは、通常の
2618 @code{\shiftOn} コマンド
2619 (@ref{ボイスを明示的にインスタンス化する} を参照してください)
2620 が音符の衝突を解決できないような複雑な状況で使用されるべきです。@c
2621 この目的のためには、@code{extra-offset} プロパティを用いるよりも
2622 @code{force-hshift} プロパティを用いる方が好ましいです。@c
2623 なぜなら、譜スペースを単位とした距離を算出する必要が無く、@c
2624 @code{NoteColumn} の内外に音符を移動させることは符頭のマージといった@c
2625 他のアクションに影響を与えるからです。
2626
2627 @end itemize
2628
2629 @item
2630 最後に、他の方法がすべて失敗した場合、オブジェクトを手動で譜の中央線からの@c
2631 垂直方向の相対位置に従って、あるいは新たに設定した位置との距離に従って、@c
2632 再配置することになるかもしれません。@c
2633 この方法の欠点は、再配置のための正確な値を算出する必要がある --
2634 しばしば、その算出はそれぞれのオブジェクトに対して個々に、トライ&エラーで@c
2635 行われます -- 必要があるということ、さらに、この方法による移動は
2636 LilyPond が他のオブジェクトをすべて配置した後に行われるため、@c
2637 ユーザはその結果として起こるかもしれない衝突を@c
2638 すべて回避する責任があるということです。@c
2639 しかし、この方法の最大の問題点は、音楽が後で変更された場合に、@c
2640 再配置用の値を再び算出する必要があるということです。@c
2641 このタイプの手動再配置のために使用されるプロパティは以下のようなものです:
2642
2643 @table @code
2644 @item extra-offset
2645
2646 @cindex extra-offset property (extra-offset プロパティ)
2647
2648 このプロパティは @code{grob-interface} をサポートするレイアウト オブジェクトの@c
2649 いずれかに適用されます。@c
2650 このプロパティはペアになった数値をとり、それぞれの数値は@c
2651 水平方向と垂直方向の移動を指定します。@c
2652 負値はオブジェクトを左または下へ移動させます。@c
2653 単位は譜スペースです。@c
2654 この移動はオブジェクトの譜刻が完了した後に行われるため、あるオブジェクトを@c
2655 任意の位置へ、他のオブジェクトに影響を与えることなく、再配置することができます。
2656
2657 @item positions
2658
2659 @cindex positions property (positions プロパティ)
2660
2661 このプロパティは、連桁、スラー、連符の傾きと高さを手動で調節するために@c
2662 最も有用なプロパティです。@c
2663 このプロパティはペアになった数値をとり、それぞれの数値は連桁、@c
2664 スラーなどの左端と右端の位置を譜の中央線との距離で指定します。@c
2665 単位は譜スペースです。@c
2666 けれども、スラーとフレージング スラーを任意の値で@c
2667 再配置することはできないということに注意してください。@c
2668 LilyPond はまずスラーが取り得る位置のリストを生成し、それからデフォルトでは
2669 @qq{最良に見える} スラーを探します。@c
2670 @code{positions} がオーバライドされていた場合、@c
2671 そのリストの中からリクエストされた位置に最も近いスラーが選択されます。
2672 @end table
2673
2674 @end enumerate
2675
2676 あるオブジェクトがこれらのプロパティすべてを持っているわけではありません。@c
2677 内部リファレンスに行き、そのオブジェクトではどのプロパティが@c
2678 利用可能なのかを調べる必要があります。
2679
2680 ここで、衝突に関係しそうなオブジェクトをリスト アップします。@c
2681 内部リファレンスを調べるためのオブジェクト名を付けるので、@c
2682 それらのオブジェクトを移動させるのに使うプロパティを見つけ出すのに@c
2683 使ってください。
2684
2685 @multitable @columnfractions .5 .5
2686 @headitem オブジェクト タイプ                    @tab オブジェクト名
2687 @item アーティキュレーション (Articulation)      @tab @code{Script}
2688 @item 連桁 (Beam)                                @tab @code{Beam}
2689 @item 強弱記号 (Dynamic) (垂直方向)              @tab @code{DynamicLineSpanner}
2690 @item 強弱記号 (Dynamic) (水平方向)              @tab @code{DynamicText}
2691 @item 運指法記号 (Fingering)                     @tab @code{Fingering}
2692 @item リハーサル / テキスト記号 (Rehearsal / Text mark) @tab @code{RehearsalMark}
2693 @item スラー (Slur)                                @tab @code{Slur}
2694 @item テキスト -- つまり、@code{^"text"} (Text)  @tab @code{TextScript}
2695 @item タイ (Tie)                                 @tab @code{Tie}
2696 @item 連符 (Tuplet)                              @tab @code{TupletBracket}
2697 @end multitable
2698
2699
2700 @node 表記の重なりを修正する
2701 @subsection 表記の重なりを修正する
2702 @translationof Fixing overlapping notation
2703
2704 今度は、前のセクションで扱ったプロパティが記譜の重なりを解決する手助けを@c
2705 どのようにできるかを見ていきましょう。
2706
2707 @subheading padding プロパティ
2708
2709 @cindex padding (パディング)
2710 @cindex fixing overlapping notation (記譜要素の重なりを修正する)
2711 @cindex overlapping notation (重なり合っている記譜要素)
2712
2713 @code{padding} プロパティに値をセットすることによって、音符とその上または下に@c
2714 譜刻される記号との間の距離を増減することができます。
2715
2716 @cindex Script, example of overriding (Script をオーバライドする例)
2717 @cindex padding property, example (padding プロパティの例)
2718
2719 @lilypond[quote,fragment,relative=1,verbatim]
2720 c2\fermata
2721 \override Script.padding = #3
2722 b2\fermata
2723 @end lilypond
2724
2725 @cindex MetronomeMark, example of overriding (MetronomeMark をオーバライドする例)
2726 @cindex padding property, example (padding プロパティの例)
2727
2728 @c KEEP LY
2729 @lilypond[quote,fragment,relative=1,verbatim]
2730 % これは機能しません。この下を見てください
2731 \override MetronomeMark.padding = #3
2732 \tempo 4 = 120
2733 c1 |
2734 % これは機能します
2735 \override Score.MetronomeMark.padding = #3
2736 \tempo 4 = 80
2737 d1 |
2738 @end lilypond
2739
2740 2 番目の例では、ある特定のオブジェクトを扱うのはどのコンテキストなのかを@c
2741 突き止めることが重要であるということに注意してください。@c
2742 @code{MetronomeMark} オブジェクトは @code{Score} コンテキストの中で@c
2743 処理されるため、@code{Voice} コンテキストの中でのプロパティの変更は@c
2744 無視されます。@c
2745 更に詳細を知りたければ、@ruser{Modifying properties} を参照してください。
2746
2747 @code{outside-staff-priority} に従って配置されているオブジェクトの並びの中の@c
2748 あるオブジェクトの @code{padding} プロパティが増やされた場合、@c
2749 そのオブジェクトとそれよりも外側にあるすべてオブジェクトが移動させられます。
2750
2751 @subheading right-padding
2752
2753 @cindex right-padding property (right-padding プロパティ)
2754
2755 @code{right-padding} プロパティは臨時記号とそれが適用される音符との間の@c
2756 スペースに影響を与えます。@c
2757 このプロパティを変更することは必ずしも必要ではありませんが、@c
2758 微分音の音楽で使われる特殊な臨時記号の図柄や図柄の組み合わせに対して@c
2759 デフォルトのスペースが適切ではない場合に必要となるかもしれません。@c
2760 臨時記号のステンシルを望みのシンボルを保持するマークアップにオーバライド@c
2761 する必要があります:
2762
2763 @cindex Accidental, example of overriding (Accidental をオーバライドする例)
2764 @cindex text property, example (text プロパティの例)
2765 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
2766 @cindex AccidentalPlacement, example of overriding (AccidentalPlacement をオーバライドする例)
2767 @cindex right-padding property, example (right-padding プロパティの例)
2768
2769 @c KEEP LY
2770 @lilypond[quote,ragged-right,verbatim]
2771 sesquisharp = \markup { \sesquisharp }
2772 \relative c'' {
2773   c4
2774   % これは 1.5 倍シャープを譜刻しますが、スペースが小さすぎます
2775   \once \override Accidental.stencil = #ly:text-interface::print
2776   \once \override Accidental.text = #sesquisharp
2777   cis4 c
2778   % これはスペースを改善しています
2779   \once \override Score.AccidentalPlacement.right-padding = #0.6
2780   \once \override Accidental.stencil = #ly:text-interface::print
2781   \once \override Accidental.text = #sesquisharp
2782   cis4 |
2783 }
2784 @end lilypond
2785
2786 @noindent
2787 これは必然的に臨時記号のステンシルをオーバライドすることになります。@c
2788 このオーバライドについては後々までカバーされません。@c
2789 ステンシル タイプは手続きでなければならず、ここでは @code{Accidental} の
2790 @code{text} プロパティの内容
2791 -- 内容には 1.5 倍シャープがセットされています
2792 -- を譜刻するように変更されています。@c
2793 それらの記号は @code{right-padding} のオーバライドによって@c
2794 符頭からさらに遠くへ移動させられています。
2795
2796 @noindent
2797
2798 @subheading staff-padding プロパティ
2799
2800 @cindex aligning objects on a baseline (オブジェクトをベースラインに揃える)
2801 @cindex objects, aligning on a baseline (オブジェクトをベースラインに揃える)
2802
2803 @code{staff-padding} を使うことで、強弱記号などのオブジェクトを、@c
2804 それらが取り付けられる音符の位置に依存した高さではなく、@c
2805 譜上のある固定した高さのベースラインに揃えることができます。@c
2806 このプロパティは @code{DynamicText} のプロパティではなく、@c
2807 @code{DynamicSpanner} のプロパティです。@c
2808 この理由は、このベースラインは延長スパナを含む @strong{すべて} の強弱記号に@c
2809 等しく適用されるべきだからです。@c
2810 そのため、これは以前のセクションでの例の中にある強弱記号を@c
2811 揃えるための方法になります:
2812
2813 @cindex DynamicText, example of overriding (DynamicText をオーバライドする例)
2814 @cindex extra-spacing-width property, example (extra-spacing-width プロパティの例)
2815 @cindex DynamicLineSpanner, example of overriding (DynamicLineSpanner をオーバライドする例)
2816 @cindex staff-padding property, example (staff-padding プロパティの例)
2817
2818 @c KEEP LY
2819 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2820 \dynamicUp
2821 % 幅を 1 単位広げます
2822 \override DynamicText.extra-spacing-width = #'(-0.5 . 0.5)
2823 % 強弱記号を譜から 2 単位上のベース ラインに揃えます
2824 \override DynamicLineSpanner.staff-padding = #2
2825 a4\f b\mf c\mp b\p
2826 @end lilypond
2827
2828 @subheading self-alignment-X プロパティ
2829
2830 以下の例はこのプロパティが、運指法記号オブジェクトの右端を親の音符の@c
2831 参照ポイントに揃えることによって、@c
2832 弦楽器の運指法記号オブジェクトと音符の符幹とのこのプロパティが衝突を@c
2833 解決している様子を示しています:
2834
2835 @cindex StringNumber, example of overriding (StringNumber をオーバライドする例)
2836 @cindex self-alignment-X property, example (self-alignment-X プロパティの例)
2837
2838 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=3]
2839 \voiceOne
2840 <a\2>
2841 \once \override StringNumber.self-alignment-X = #RIGHT
2842 <a\2>
2843 @end lilypond
2844
2845 @subheading staff-position プロパティ
2846
2847 @cindex object collision within a staff (譜内部でのオブジェクトの衝突)
2848
2849 あるボイスの中にある複数小節に亘る休符は他のボイスの中にある音符と@c
2850 衝突する可能性があります。@c
2851 このような休符は小節線と小節線の間の中央に譜刻されるため、@c
2852 LilyPond がそれと衝突するかもしれない音符を突き止めるのは非常に困難です。@c
2853 なぜなら、現在の音符間それに音符-休符間の衝突対応は、@c
2854 同時に起こる音符と休符に対してのみ行われるからです。@c
2855 以下に、このタイプの衝突の例を挙げます:
2856
2857 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right, relative=1]
2858 << { c4 c c c } \\ { R1 } >>
2859 @end lilypond
2860
2861 ここでの最良の解決策は、複数小節に亘る休符を下へ移動させることです。@c
2862 なぜなら、その休符はボイス 2 の中にあるからです。@c
2863 @code{\voiceTwo} (すなわち、@code{<<@{...@} \\ @{...@}>>} 構造の
2864 2 番目のボイス) のデフォルト状態では、@c
2865 @code{MultiMeasureRest} の @code{staff-position} は @code{-4} に@c
2866 セットされています。@c
2867 そのため、そのプロパティを、例えば半譜スペース 4 つ分押し下げるには、@c
2868 @w{@code{-8}} に変更する必要があります。
2869
2870 @cindex MultiMeasureRest, example of overriding (MultiMeasureRest をオーバライドする例)
2871 @cindex staff-position property, example (staff-position プロパティの例)
2872
2873 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right, relative=1]
2874 <<
2875   { c4 c c c }
2876   \\
2877   \override MultiMeasureRest.staff-position = #-8
2878   { R1 }
2879 >>
2880 @end lilypond
2881
2882 これは、例えば @code{extra-offset} を使うよりも良い解決方法です。@c
2883 なぜなら、その休符の上に加線が自動的に挿入されるからです。
2884
2885 @subheading extra-offset プロパティ
2886
2887 @cindex positioning objects (オブジェクトの位置を決定する)
2888 @cindex positioning grobs (グラフィカル オブジェクトの位置を決定する)
2889 @cindex objects, positioning (オブジェクトの位置を決定する)
2890 @cindex grobs, positioning (グラフィカル オブジェクトの位置を決定する)
2891
2892 @code{extra-offset} プロパティは、あるオブジェクトの水平方向と垂直方向の@c
2893 配置を完全に制御します。
2894
2895 以下の例では、2 番目の運指法記号が少し左に、そして 1.8 譜スペース下に@c
2896 移動させられています:
2897
2898 @cindex Fingering, example of overriding (Fingering をオーバライドする例)
2899 @cindex extra-offset property, example (extra-offset プロパティの例)
2900
2901 @lilypond[quote,fragment,relative=1,verbatim]
2902 \stemUp
2903 f4-5
2904 \once \override Fingering.extra-offset = #'(-0.3 . -1.8)
2905 f4-5
2906 @end lilypond
2907
2908 @subheading positions プロパティ
2909
2910 @cindex controlling tuplets, slurs, phrasing slurs, and beams manually (連符、スラー、フレージング スラーそれに連桁を手動で制御する)
2911 @cindex manually controlling tuplets, slurs, phrasing slurs, and beams (連符、スラー、フレージング スラーそれに連桁を手動で制御する)
2912 @cindex tuplet beams, controlling manually (連譜の連桁を手動で制御する)
2913 @cindex slurs, controlling manually (スラーを手動で制御する)
2914 @cindex phrasing slurs, controlling manually (フレージング スラーを手動で制御する)
2915 @cindex beams, controlling manually (連桁を手動で制御する)
2916
2917 @code{positions} プロパティは連符、スラー、フレージング スラー、@c
2918 連桁の位置と傾きを手動で制御することを可能にします。@c
2919 ここで、装飾音符に付いたスラーを避けようとしているために@c
2920 醜いフレージング スラーを持つ例を挙げます。
2921
2922 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right,relative=1]
2923 r4 \acciaccatura e8\( d8 c~ c d c d\)
2924 @end lilypond
2925
2926 @noindent
2927 フレージング スラーを音符の上へ移動させることで、より良い結果が得られます:
2928
2929 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right,relative=1]
2930 r4
2931 \phrasingSlurUp
2932 \acciaccatura e8\( d8 c~ c d c d\)
2933 @end lilypond
2934
2935 @noindent
2936 しかし、何らかの理由でそうすることができない場合、それに代わる解決策は、@c
2937 @code{positions} プロパティを使ってフレージング スラーの左端を@c
2938 少し下げることです。@c
2939 この方法でも見栄えの悪さを解決できます。
2940
2941 @cindex PhrasingSlur, example of overriding (PhrasingSlur をオーバライドする例)
2942 @cindex positions property, example (positions プロパティの例)
2943
2944 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right,relative=1]
2945 r4
2946 \once \override PhrasingSlur.positions = #'(-4 . -3)
2947 \acciaccatura e8\( d8 c~ c d c d\)
2948 @end lilypond
2949
2950
2951 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right]
2952 {
2953   \time 4/2
2954   <<
2955     { c'1 ~ c'2. e'8 f' }
2956     \\
2957     { e''8 e'' e'' e''  e'' e'' e'' e''  f''2 g'' }
2958   >>
2959   <<
2960     { c'1 ~ c'2. e'8 f' }
2961     \\
2962     { e''8 e'' e'' e''  e'' e'' e'' e''  f''2 g'' }
2963  >>
2964 }
2965 @end lilypond
2966
2967 @noindent
2968 これは、譜の中央線から 1.81 譜スペース上の位置にある連桁の両端を、例えば、1
2969 に手動で上げることによって解決することができます:
2970
2971 @cindex Beam, example of overriding (Beam をオーバライドする例)
2972 @cindex positions property, example (positions プロパティの例)
2973
2974 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right]
2975 {
2976   \time 4/2
2977   <<
2978     { c'1 ~ c'2. e'8 f' }
2979     \\
2980     {
2981       \override Beam.positions = #'(-1 . -1)
2982       e''8 e'' e'' e''  e'' e'' e'' e''  f''2 g''
2983     }
2984   >>
2985   <<
2986     { c'1 ~ c'2. e'8 f' }
2987     \\
2988     { e''8 e'' e'' e''  e'' e'' e'' e''  f''2 g'' }
2989   >>
2990 }
2991 @end lilypond
2992
2993 @noindent
2994 オーバライドの効果は継続して第 2 小節のボイス 1 の 8 分音符にも@c
2995 適用されていますが、@c
2996 ボイス 2 の連桁にはまったく適用されていないということに注意してください。
2997
2998 @subheading force-hshift プロパティ
2999
3000 今や、@ref{私はボイスを聴いている} の最後で挙げた Chopin の例に@c
3001 どのように修正を加えるべきかを知っています。@c
3002 この例は以下のような状態でした:
3003
3004 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right]
3005 \new Staff \relative c'' {
3006   \key aes \major
3007   <<
3008     { c2 aes4. bes8 }
3009     \\
3010     { <ees, c>2 des }
3011     \\
3012     \\
3013     { aes'2 f4 fes }
3014   >> |
3015   <c ees aes c>1 |
3016 }
3017 @end lilypond
3018
3019 @noindent
3020 最初の和音の内声の音 (つまり、4 番目のボイスにある A-フラット) を上の音符の@c
3021 音符列からずらす必要はありません。@c
3022 これを修正するには、下の音符の @code{force-hshift} --
3023 これは @code{NoteColumn} のプロパティです -- を 0 にセットします。@c
3024
3025 2 番目の和音では、F を A に揃えて、符幹の衝突を避けるために最下段の音符を@c
3026 少し右に移動させるべきでしょう。@c
3027 そうするには、D-フラットの @code{NoteColumn} の @code{force-hshift}
3028 を設定して譜スペースの半分だけ右にずらします。
3029 2 番目の和音の下の方の音符は、上の方の音符のすぐ右に置くのが最良です。@c
3030 そうするには、この音符の @code{force-hshift} を 0.5 にセットします --
3031 つまり、上の方の音符の音符列から符頭の幅の半分だけ右にずらします。
3032
3033 ここで、最終結果を挙げます:
3034
3035 @cindex NoteColumn, example of overriding (NoteColumn をオーバライドする例)
3036 @cindex force-hshift property, example (force-hshift プロパティの例)
3037
3038 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right]
3039 \new Staff \relative c'' {
3040   \key aes \major
3041   <<
3042     { c2 aes4. bes8 }
3043     \\
3044     {
3045       <ees, c>2
3046       \once \override NoteColumn.force-hshift = #0.5
3047       des2
3048     }
3049     \\
3050     \\
3051     {
3052       \override NoteColumn.force-hshift = #0
3053       aes'2 f4 fes
3054     }
3055   >> |
3056   <c ees aes c>1 |
3057 }
3058 @end lilypond
3059
3060
3061 @node 実際の音楽からの例
3062 @subsection 実際の音楽からの例
3063 @translationof Real music example
3064
3065 調整についてのセクションを、望みの出力を作り出すためにいくつかの調整を@c
3066 必要とするトリッキーな例を処理するときにとられるステップを示すことで@c
3067 締めくくります。@c
3068 この例は、記譜法についての普通ではない問題を解決するための記譜法リファレンスの@c
3069 使い方を示すために慎重に選ばれたものです。@c
3070 この例は一般的な譜刻プロセスを代表するものではありません。@c
3071 ですから、この例の複雑さでやる気を失わないでください!@c
3072 幸いなことに、このように複雑な問題は非常に稀です!
3073
3074 この例は Chopin の Première Ballade, Op. 23 の第 6 - 9 小節からとりました。@c
3075 序盤の Lento から Moderato へと移調する部分です。@c
3076 まず最初に望んでいる出力挙げますが、例があまりにも複雑になり過ぎないように@c
3077 強弱記号、運指法記号、ペダル記号は省きました。
3078
3079 @c The following should appear as music without code
3080 @c This example should not be indexed
3081 @c line-width ensures no break
3082 @c KEEP LY
3083 @lilypond[quote,ragged-right,line-width=6\in]
3084 rhMusic = \relative c'' {
3085   \new Voice {
3086     r2 c4.\( g8 |
3087     \once \override Tie.staff-position = #3.5
3088     bes1~ |
3089     \bar "||"
3090     \time 6/4
3091     \mergeDifferentlyHeadedOn
3092     \mergeDifferentlyDottedOn
3093     bes2.^\markup { \bold "Moderato" } r8
3094     <<
3095       { c,8 d fis bes a }
3096       \new Voice {
3097         \voiceTwo
3098         c,8~
3099         % マージされる音符の右にある c2 を再配置します
3100         \once \override NoteColumn.force-hshift = #1.0
3101         % c2 をメインの音符列から外したため、
3102         % マージが機能します
3103         \shiftOnn
3104         c2
3105       }
3106       \new Voice {
3107         \voiceThree
3108         s8
3109         % マージさせるために d2 の符幹を下向きにする必要があります
3110         \stemDown
3111         % d2 の符幹を不可視にします
3112         \tweak Stem.transparent ##t
3113         \tweak Flag.transparent ##t
3114         d2
3115       }
3116       \new Voice {
3117         \voiceFour
3118         s4 fis4.
3119       }
3120     >> |
3121     \mergeDifferentlyHeadedOff
3122     \mergeDifferentlyDottedOff
3123     g2.\)
3124   }
3125 }
3126
3127 lhMusic = \relative c' {
3128   r2 <c g ees>2( |
3129   <d g, d>1)\arpeggio |
3130   r2. d,,4 r4 r |
3131   r4
3132 }
3133
3134 \score {
3135   \new PianoStaff <<
3136     \new Staff = "RH"  <<
3137       \key g \minor
3138       \rhMusic
3139     >>
3140     \new Staff = "LH" <<
3141       \key g \minor
3142       \clef "bass"
3143       \lhMusic
3144     >>
3145   >>
3146 }
3147 @end lilypond
3148
3149 まず、第 3 小節の右手パートには 4 つのボイスが必要であることに注目します。@c
3150 それぞれのボイスは、連桁でつながれた 5 つの 8 分音符、タイで結ばれた C、@c
3151 半音符の D (これは 8 分音符の D とマージされています)、@c
3152 付点 4 分音符の F シャープ (これも同じピッチの 8 分音符とマージされています)
3153 です。@c
3154 他の部分はすべて単一のボイスなので、最も容易な方法は
3155 4 つのボイスを必要になったときに一時的に導入する方法です。@c
3156 一時的に多声にする方法を忘れてしまったのならば、@c
3157 @ref{私はボイスを聴いている} と @ref{ボイスを明示的にインスタンス化する}
3158 を参照してください。@
3159 ここでは、多声パッセージに明示的にインスタンス化されたボイスを使うことにします。@c
3160 なぜなら、すべてのボイスが明示的にインスタンス化されている方が、@c
3161 LilyPond はうまく衝突を回避できるからです。
3162
3163 音符を 2 つの変数として入力し、@c
3164 譜構造を Score ブロックの中でセットアップすることから始めて、@c
3165 それで LilyPond がデフォルトでどのような出力を作り出すのか見てみましょう:
3166
3167 @c line-width ensures no break
3168 @c KEEP LY
3169 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right,line-width=6\in]
3170 rhMusic = \relative c'' {
3171   \new Voice {
3172     r2 c4. g8 |
3173     bes1~ |
3174     \time 6/4
3175     bes2. r8
3176     % 4 つのボイスの多声セクションの開始
3177     <<
3178       { c,8 d fis bes a }  % メイン ボイスの続き
3179       \new Voice {
3180         \voiceTwo
3181         c,8~ c2
3182       }
3183       \new Voice {
3184         \voiceThree
3185         s8 d2
3186       }
3187       \new Voice {
3188         \voiceFour
3189         s4 fis4.
3190       }
3191     >> |
3192     g2.  % メイン ボイスの続き
3193   }
3194 }
3195
3196 lhMusic = \relative c' {
3197   r2 <c g ees>2 |
3198   <d g, d>1 |
3199   r2. d,,4 r4 r |
3200   r4
3201 }
3202
3203 \score {
3204   \new PianoStaff <<
3205     \new Staff = "RH"  <<
3206       \key g \minor
3207       \rhMusic
3208     >>
3209     \new Staff = "LH" <<
3210       \key g \minor
3211       \clef "bass"
3212       \lhMusic
3213     >>
3214   >>
3215 }
3216 @end lilypond
3217
3218 すべての音符は間違っていません。@c
3219 しかしながら、見た目は満足とは程遠いものです。@c
3220 タイは移調する拍子記号と衝突していて、第 3 小節の連桁の付け方は@c
3221 間違っていて、音符はマージされておらず、いくつかの記譜要素は欠けています。@c
3222 簡単なものから片付けていきましょう。@c
3223 連桁の付け方は手動で連桁を挿入することで修正でき、左手パートのスラーと@c
3224 右手パートのフレージング スラーは簡単に追加できます
3225 -- なぜなら、これらはすべてチュートリアルでカバーされているからです。@c
3226 これらの修正を加えると、以下のようになります:
3227
3228 @c line-width ensures no break
3229 @c KEEP LY
3230 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right,line-width=6\in]
3231 rhMusic = \relative c'' {
3232   \new Voice {
3233     r2 c4.\( g8 |
3234     bes1~ |
3235     \time 6/4
3236     bes2. r8
3237     % 4 つのボイスの多声セクションの開始
3238     <<
3239       { c,8 d fis bes a }  % メイン ボイスの続き
3240       \new Voice {
3241         \voiceTwo
3242         c,8~ c2
3243       }
3244       \new Voice {
3245         \voiceThree
3246         s8 d2
3247       }
3248       \new Voice {
3249         \voiceFour
3250         s4 fis4.
3251       }
3252     >> |
3253     g2.\)  % メイン ボイスの続き
3254   }
3255 }
3256
3257 lhMusic = \relative c' {
3258   r2 <c g ees>2( |
3259   <d g, d>1) |
3260   r2. d,,4 r4 r |
3261   r4
3262 }
3263
3264 \score {
3265   \new PianoStaff <<
3266     \new Staff = "RH"  <<
3267       \key g \minor
3268       \rhMusic
3269     >>
3270     \new Staff = "LH" <<
3271       \key g \minor
3272       \clef "bass"
3273       \lhMusic
3274     >>
3275   >>
3276 }
3277 @end lilypond
3278
3279 第 1 小節は正しくなりました。@c
3280 第 2 小節にはアルペジオが含まれていて、2 重の小節線で終わります。@c
3281 この学習マニュアルではこれらのことは言及されてこなかったのに、@c
3282 どうやってやればいいのでしょうか?@c
3283 ここで、記譜法リファレンスに移行する必要があります。@c
3284 索引で @q{arpeggio} と @q{bar line} を探せばすぐに、アルペジオは
3285 @code{\arpeggio} を和音の後に付け加えることによって作り出され、@c
3286 2 重小節線は @code{\bar "||"} コマンドによって作り出されることが@c
3287 わかります。@c
3288 それは簡単にできます。@c
3289 次に、タイと拍子記号の衝突を修正する必要があります。@c
3290 これはタイを上に移動させる方法が最善です。@c
3291 オブジェクトの移動については以前に @ref{オブジェクトを移動させる} でカバーしました。@c
3292 そこでは、譜との相対位置で配置されるオブジェクトは、@c
3293 そのオブジェクトの @code{staff-position} プロパティを@c
3294 オーバライドすることによって、移動させることができると述べられています。@c
3295 このプロパティは譜スペースの半分を単位として、譜の中央線からの距離で@c
3296 指定されます。@c
3297 ですから、以下の以下のオーバライドをタイで結ばれる最初の音符の前に置けば、@c
3298 タイは中央線から 3.5 半譜スペースだけ上の位置に移動させられます:
3299
3300 @code{\once \override Tie.staff-position = #3.5}
3301
3302 これで第 2 小節の修正も完了で、以下のようになります:
3303
3304 @c line-width ensures no break
3305 @c KEEP LY
3306 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right,line-width=6\in]
3307 rhMusic = \relative c'' {
3308   \new Voice {
3309     r2 c4.\( g8 |
3310     \once \override Tie.staff-position = #3.5
3311     bes1~ |
3312     \bar "||"
3313     \time 6/4
3314     bes2. r8
3315     % 4 つのボイスの多声セクションの開始
3316     <<
3317       { c,8 d fis bes a }  % メイン ボイスの続き
3318       \new Voice {
3319         \voiceTwo
3320         c,8~ c2
3321       }
3322       \new Voice {
3323         \voiceThree
3324         s8 d2
3325       }
3326       \new Voice {
3327         \voiceFour
3328         s4 fis4.
3329       }
3330     >> |
3331     g2.\)  % メイン ボイスの続き
3332   }
3333 }
3334
3335 lhMusic = \relative c' {
3336   r2 <c g ees>2( |
3337   <d g, d>1)\arpeggio |
3338   r2. d,,4 r4 r |
3339   r4
3340 }
3341
3342 \score {
3343   \new PianoStaff <<
3344     \new Staff = "RH"  <<
3345       \key g \minor
3346       \rhMusic
3347     >>
3348     \new Staff = "LH" <<
3349       \key g \minor
3350       \clef "bass"
3351       \lhMusic
3352     >>
3353   >>
3354 }
3355 @end lilypond
3356
3357 第 3 小節 -- Moderato セクションの開始部分 -- に取り掛かります。@c
3358 チュートリアルで @code{\markup} コマンドを使ってボールド体のテキストを@c
3359 付け加える方法を示しましたので、@q{Moderato} をボールド体で付け加えることは@c
3360 容易です。@c
3361 しかし、異なるボイスの中にある音符をマージするにはどうするのでしょうか?@c
3362 ここで、助けを求めて記譜法リファレンスに移行する必要があります。@c
3363 記譜法リファレンスで @qq{merge} を探せばすぐに、@c
3364 @ruser{Collision resolution} で符頭や付点の付き方が異なる音符を@c
3365 マージするためのコマンドにたどり着きます。@c
3366 今回の例では、多声部セクションで両方のタイプの音符をマージする
3367 (異なる符頭を持つ音符のマージと、付点の付き方が異なる音符のマージ)
3368 必要があるので、記譜法リファレンスで見つけた情報を使って、以下のコマンド:
3369
3370 @example
3371 \mergeDifferentlyHeadedOn
3372 \mergeDifferentlyDottedOn
3373 @end example
3374
3375 @noindent
3376 を多声部セクションの開始点に置き、以下のコマンド:
3377
3378 @example
3379 \mergeDifferentlyHeadedOff
3380 \mergeDifferentlyDottedOff
3381 @end example
3382
3383 @noindent
3384 をセクションの終了点に置きます。これで、例は以下のようになります:
3385
3386 @c line-width ensures no break
3387 @c KEEP LY
3388 @lilypond[quote,ragged-right,line-width=6\in]
3389 rhMusic = \relative c'' {
3390   \new Voice {
3391     r2 c4.\( g8 |
3392     \once \override Tie.staff-position = #3.5
3393     bes1~ |
3394     \bar "||"
3395     \time 6/4
3396     bes2.^\markup { \bold "Moderato" } r8
3397     \mergeDifferentlyHeadedOn
3398     \mergeDifferentlyDottedOn
3399     % 4 つのボイスの多声セクションの開始
3400     <<
3401       { c,8 d fis bes a }  % メイン ボイスの続き
3402       \new Voice {
3403         \voiceTwo
3404         c,8~ c2
3405       }
3406       \new Voice {
3407         \voiceThree
3408         s8 d2
3409       }
3410       \new Voice {
3411         \voiceFour
3412         s4 fis4.
3413       }
3414     >> |
3415     \mergeDifferentlyHeadedOff
3416     \mergeDifferentlyDottedOff
3417     g2.\)  % メイン ボイスの続き
3418   }
3419 }
3420
3421 lhMusic = \relative c' {
3422   r2 <c g ees>2( |
3423   <d g, d>1)\arpeggio |
3424   r2. d,,4 r4 r |
3425   r4
3426 }
3427
3428 \score {
3429   \new PianoStaff <<
3430     \new Staff = "RH"  <<
3431       \key g \minor
3432       \rhMusic
3433     >>
3434     \new Staff = "LH" <<
3435       \key g \minor
3436       \clef "bass"
3437       \lhMusic
3438     >>
3439   >>
3440 }
3441 @end lilypond
3442
3443 オーバライドは 2 つの F シャープの音符をマージしましたが、@c
3444 2 つの D をマージしませんでした。@c
3445 なぜマージしなかったのでしょうか?@c
3446 その答えは記譜法リファレンスの同じセクションにあります
3447 -- マージされる音符は反対向きの符幹を持っていなくてはならず、@c
3448 同じ音符列に 3 つ目の音符がある場合は 2 つの音符をマージさせることは@c
3449 できません。@c
3450 今回の例では、2 つの D は両方とも上向きの符幹を持っていて、@c
3451 3 つ目の音符 -- C -- が存在します。@c
3452 我々は @code{\stemDown} を用いて符幹の向きを変更する方法を知っていて、@c
3453 記譜法リファレンスも C を移動させる方法について述べています --
3454 @code{\shift} コマンドの 1 つを用いてシフトを行います。@c
3455 しかし、どのシフトを行えばよいのでしょうか?@c
3456 C はシフト off のボイス 2 の中にあり、2 つの D はボイス 1 とボイス 3 --
3457 それぞれ、シフト off とシフト on -- の中にあります。@c
3458 ですから、C が 2 つの D と衝突するのを避けるために、@c
3459 @code{\shiftOnn} を用いて C を更にシフトさせる必要があります。@c
3460 これらの変更を加えると、以下のようになります:
3461
3462 @cindex Tie, example of overriding (Tie をオーバライドする例)
3463 @cindex staff-position property, example (staff-position プロパティの例)
3464
3465 @c line-width ensures no break
3466 @c KEEP LY
3467 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right,line-width=6\in]
3468 rhMusic = \relative c'' {
3469   \new Voice {
3470     r2 c4.\( g8 |
3471     \once \override Tie.staff-position = #3.5
3472     bes1~ |
3473     \bar "||"
3474     \time 6/4
3475     bes2.^\markup { \bold "Moderato" } r8
3476     \mergeDifferentlyHeadedOn
3477     \mergeDifferentlyDottedOn
3478     % 4 つのボイスの多声セクションの開始
3479     <<
3480       { c,8 d fis bes a }  % メイン ボイスの続き
3481       \new Voice {
3482         \voiceTwo
3483         % c2 をメインの音符列から外したため、
3484         % マージが機能します
3485         c,8~ \shiftOnn c2
3486       }
3487       \new Voice {
3488         \voiceThree
3489         % マージさせるために d2 の符幹を下向きにする必要があります
3490         s8 \stemDown d2
3491       }
3492       \new Voice {
3493         \voiceFour
3494         s4 fis4.
3495       }
3496     >> |
3497     \mergeDifferentlyHeadedOff
3498     \mergeDifferentlyDottedOff
3499     g2.\)  % メイン ボイスの続き
3500   }
3501 }
3502
3503 lhMusic = \relative c' {
3504   r2 <c g ees>2( |
3505   <d g, d>1)\arpeggio |
3506   r2. d,,4 r4 r |
3507   r4
3508 }
3509
3510 \score {
3511   \new PianoStaff <<
3512     \new Staff = "RH"  <<
3513       \key g \minor
3514       \rhMusic
3515     >>
3516     \new Staff = "LH" <<
3517       \key g \minor
3518       \clef "bass"
3519       \lhMusic
3520     >>
3521   >>
3522 }
3523 @end lilypond
3524
3525 もうちょっとです。@c
3526 残っている問題は 2 つだけです:
3527 マージされた D の下向きの符幹はあるべきではなく、C は D の右側に配置した方が@c
3528 良いということです。@c
3529 以前に行った調整からこれらを行う方法を両方とも知っています:
3530 符幹を透明にして、@code{force-hshift} プロパティを用いて C を移動させます。@c
3531 ここで、最終結果を示します:
3532
3533 @cindex NoteColumn, example of overriding (NoteColumn をオーバライドする例)
3534 @cindex force-hshift property, example (force-hshift プロパティの例)
3535 @cindex Stem, example of overriding (Stem をオーバライドする例))
3536 @cindex transparent property, example (transparent プロパティの例)
3537
3538 @c line-width ensures no break
3539 @c KEEP LY
3540 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right,line-width=6\in]
3541 rhMusic = \relative c'' {
3542   \new Voice {
3543     r2 c4.\( g8 |
3544     \once \override Tie.staff-position = #3.5
3545     bes1~ |
3546     \bar "||"
3547     \time 6/4
3548     bes2.^\markup { \bold "Moderato" } r8
3549     \mergeDifferentlyHeadedOn
3550     \mergeDifferentlyDottedOn
3551     % 4 つのボイスの多声セクションの開始
3552     <<
3553       { c,8 d fis bes a }  % メイン ボイスの続き
3554       \new Voice {
3555         \voiceTwo
3556         c,8~
3557         % マージされる音符の右にある c2 を再配置します
3558         \once \override NoteColumn.force-hshift = #1.0
3559         % c2 をメインの音符列から外したため、マージが機能します
3560         \shiftOnn
3561         c2
3562       }
3563       \new Voice {
3564         \voiceThree
3565         s8
3566         % マージさせるために d2 の符幹を下向きにする必要があります
3567         \stemDown
3568         % d2 の符幹を不可視にします
3569         \tweak Stem.transparent ##t
3570         \tweak Flag.transparent ##t
3571         d2
3572       }
3573       \new Voice {
3574         \voiceFour
3575         s4 fis4.
3576       }
3577     >> |
3578     \mergeDifferentlyHeadedOff
3579     \mergeDifferentlyDottedOff
3580     g2.\)  % メイン ボイスの続き
3581   }
3582 }
3583
3584 lhMusic = \relative c' {
3585   r2 <c g ees>2( |
3586   <d g, d>1)\arpeggio |
3587   r2. d,,4 r4 r |
3588   r4
3589 }
3590
3591 \score {
3592   \new PianoStaff <<
3593     \new Staff = "RH"  <<
3594       \key g \minor
3595       \rhMusic
3596     >>
3597     \new Staff = "LH" <<
3598       \key g \minor
3599       \clef "bass"
3600       \lhMusic
3601     >>
3602   >>
3603 }
3604 @end lilypond
3605
3606
3607 @node 更なる調整
3608 @section 更なる調整
3609 @translationof Further tweaking
3610
3611 @menu
3612 * 調整のその他の使用方法::
3613 * 調整のために変数を使用する::
3614 * スタイル シート::
3615 * その他の情報源::
3616 * Scheme を用いた高度な調整::
3617 @end menu
3618
3619 @node 調整のその他の使用方法
3620 @subsection 調整のその他の使用方法
3621 @translationof Other uses for tweaks
3622
3623 @cindex transparent property, use of (transparent プロパティの使用方法)
3624 @cindex objects, making invisible (オブジェクトを不可視にする)
3625 @cindex removing objects (オブジェクトを削除する)
3626 @cindex objects, removing (オブジェクトを削除する)
3627 @cindex hiding objects (オブジェクトを隠す)
3628 @cindex objects, hiding (オブジェクトを隠す)
3629 @cindex invisible objects (不可視のオブジェクト)
3630 @cindex objects, invisible (不可視のオブジェクト)
3631 @cindex tying notes across voices (異なるボイスの中にある音符をタイで結ぶ)
3632
3633 @subheading 異なるボイスの中にある音符をタイで結ぶ
3634
3635 以下の例は異なるボイスの中にある音符をタイで結ぶ方法を示しています。@c
3636 通常、タイで結べるのは同じボイスの中にある 2 つ音符だけです。@c
3637 2 つのボイスを使い、そのうちの 1 つにタイで結んだ音符を置きます:
3638
3639 @lilypond[quote,fragment,relative=2]
3640 << { b8~ b\noBeam } \\ { b8[ g] } >>
3641 @end lilypond
3642
3643 @noindent
3644 そして、そのボイスの最初の上向き符幹を消します。@c
3645 これで、タイはボイスをまたがっているように見えます:
3646
3647 @cindex Stem, example of overriding (Stem をオーバライドする例)
3648 @cindex transparent property, example (transparent プロパティの例)
3649
3650 @lilypond[quote,fragment,relative=2,verbatim]
3651 <<
3652   {
3653     \tweak Stem.transparent ##t
3654     \tweak Flag.transparent ##t
3655     b8~ b\noBeam
3656   }
3657 \\
3658   { b8[ g] }
3659 >>
3660 @end lilypond
3661
3662 符幹は表示されなくなっただけなので、タイの長さが十分ではありません。@c
3663 符幹の @code{length} を @code{8} にセットすることで符幹を伸ばすことができます:
3664
3665 @lilypond[quote,fragment,relative=2,verbatim]
3666 <<
3667   {
3668     \tweak Stem.transparent ##t
3669     \tweak Flag.transparent ##t
3670     \tweak Stem.length #8
3671     b8~ b\noBeam
3672   }
3673 \\
3674   { b8[ g] }
3675 >>
3676 @end lilypond
3677
3678 @subheading MIDI でフェルマータをシミュレートする
3679
3680 @cindex stencil property, use of (stencil プロパティの使用方法)
3681 @cindex fermata, implementing in MIDI (MIDI でフェルマータ を実装する)
3682
3683 譜外部オブジェクトを出力から削除しようとする場合、そのオブジェクトの
3684 @code{transparent} プロパティではなく @code{stencil} プロパティを@c
3685 オーバライドする方が通常は望ましいです。@c
3686 あるオブジェクトの @code{stencil} プロパティを
3687 @code{#f} にセットすると、@c
3688 そのオブジェクトは出力から完全に削除されます。@c
3689 このことは、削除されたオブジェクトがそのオブジェクトとの相対位置で@c
3690 配置される他のオブジェクトの配置にまったく影響を及ぼさないということを@c
3691 意味します。
3692
3693 例えば、MIDI 出力でフェルマータをシミュレートするためにメトロノーム設定を@c
3694 変更したいとします。@c
3695 その場合、メトロノーム記号を出力に表示させたくありません。@c
3696 そして、それが 2 つのシステム (小節とその中にある表記) 間のスペースと、@c
3697 譜上にある隣接する注釈の位置に影響を与えることを望みません。@c
3698 そのため、そのメトロノーム記号の @code{stencil} プロパティを
3699 @code{#f} にセットする方法が最良です。@c
3700 ここで、2 つの手法の結果を示します:
3701
3702 @cindex MetronomeMark, example of overriding (MetronomeMark をオーバライドする例)
3703 @cindex transparent property, example (transparent プロパティの例)
3704
3705 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3706 \score {
3707   \relative c'' {
3708     % Visible tempo marking
3709     \tempo 4=120
3710     a4 a a
3711     \once \override Score.MetronomeMark.transparent = ##t
3712     % Invisible tempo marking to lengthen fermata in MIDI
3713     \tempo 4=80
3714     a4\fermata |
3715     % New tempo for next section
3716     \tempo 4=100
3717     a4 a a a |
3718   }
3719   \layout { }
3720   \midi { }
3721 }
3722 @end lilypond
3723
3724 @cindex MetronomeMark, example of overriding (MetronomeMark をオーバライドする例)
3725 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
3726
3727 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3728 \score {
3729   \relative c'' {
3730     % Visible tempo marking
3731     \tempo 4=120
3732     a4 a a
3733     \once \override Score.MetronomeMark.stencil = ##f
3734     % Invisible tempo marking to lengthen fermata in MIDI
3735     \tempo 4=80
3736     a4\fermata |
3737     % New tempo for next section
3738     \tempo 4=100
3739     a4 a a a |
3740   }
3741   \layout { }
3742   \midi { }
3743 }
3744 @end lilypond
3745
3746 @noindent
3747 両方の手段とも、フェルマータ部分の演奏時間を伸ばすメトロノーム記号を@c
3748 出力から削除していて、両方とも MIDI の演奏に必要な効果を与えています。@c
3749 しかし、1 番目の例の透明なメトロノーム記号がそれに続く拍子指示を@c
3750 上に押し上げているのに対して、2 番目のメトロノーム記号 (ステンシルが@c
3751 削除されたもの) は押し上げていません。
3752
3753 @seealso
3754 音楽用語集:
3755 @rglos{system}
3756
3757
3758 @node 調整のために変数を使用する
3759 @subsection 調整のために変数を使用する
3760 @translationof Using variables for tweaks
3761
3762 @cindex variables, using for tweaks (調整のために変数を使用する)
3763 @cindex using variables for tweaks (調整のために変数を使用する)
3764 @cindex tweaks, using variables for (調整のために変数を使用する)
3765
3766 オーバライド コマンドはしばしば長く、入力するのが大変なものになります。@c
3767 そして、それらは完全に正しく記述されなければなりません。@c
3768 同じオーバライドが何度も使用される場合、それらを保持する変数を定義すると@c
3769 非常に役に立ちます。
3770
3771 歌詞の中のある特定の単語をボールド イタリック体で譜刻することによって、@c
3772 それらを強調したいと仮定します。@c
3773 歌詞の中では、@code{\italic} と @code{\bold} は (書式を) 変更したい@c
3774 単語や文と一緒に @code{\markup} ブロックの中に入れた場合にのみ@c
3775 機能しますが、それを毎回入力するのは大変です。@c
3776 埋め込む必要のある単語自体が、2 つのコマンドを簡単な変数を用いて使うことを@c
3777 妨げます。@c
3778 代替手段として、@code{\override} コマンドと @code{\revert} コマンドを@c
3779 使うことはできないでしょうか?
3780
3781 @example
3782 @code{\override Lyrics.LyricText.font-shape = #'italic}
3783 @code{\override Lyrics.LyricText.font-series = #'bold}
3784
3785 @code{\revert Lyrics.LyricText.font-shape}
3786 @code{\revert Lyrics.LyricText.font-series}
3787 @end example
3788
3789 これらも、強調する必要のある単語がたくさんある場合、入力するのが@c
3790 非常に大変です。@c
3791 しかしながら、これらは 2 つの変数として定義することが@emph{でき}、@c
3792 それらの変数で単語を囲むことによって使ってその単語を強調することが@c
3793 @emph{できます}。@c
3794 これらのオーバライドに変数を用いることのもう 1 つの利点は、@c
3795 ドットの両側にスペースを置く必要が無いことです。@c
3796 なぜなら、これらのオーバライドは @code{\lyricmode} の中で@c
3797 直接解釈されるわけではないからです。@c
3798 ここで変数を用いる例を挙げますが、実際には早く打ち込めるように@c
3799 もっと短い変数名を使用します:
3800
3801 @cindex LyricText, example of overriding (LyricText をオーバライドする例)
3802 @cindex font-shape property, example (font-shape プロパティの例)
3803 @cindex font-series property, example (font-series プロパティの例)
3804
3805 @lilypond[quote,verbatim]
3806 emphasize = {
3807   \override Lyrics.LyricText.font-shape = #'italic
3808   \override Lyrics.LyricText.font-series = #'bold
3809 }
3810
3811 normal = {
3812   \revert Lyrics.LyricText.font-shape
3813   \revert Lyrics.LyricText.font-series
3814 }
3815
3816 global = { \key c \major \time 4/4 \partial 4 }
3817
3818 SopranoMusic = \relative c' { c4 | e4. e8 g4 g    | a4   a   g  }
3819 AltoMusic    = \relative c' { c4 | c4. c8 e4 e    | f4   f   e  }
3820 TenorMusic   = \relative c  { e4 | g4. g8 c4.  b8 | a8 b c d e4 }
3821 BassMusic    = \relative c  { c4 | c4. c8 c4 c    | f8 g a b c4 }
3822
3823 VerseOne = \lyrics {
3824   E -- | ter -- nal \emphasize Fa -- ther, | \normal strong to save,
3825 }
3826
3827 VerseTwo = \lyricmode {
3828   O | \once \emphasize Christ, whose voice the | wa -- ters heard,
3829 }
3830
3831 VerseThree = \lyricmode {
3832   O | \emphasize Ho -- ly Spi -- rit, | \normal who didst brood
3833 }
3834
3835 VerseFour = \lyricmode {
3836   O | \emphasize Tri -- ni -- ty \normal of | love and pow'r
3837 }
3838
3839 \score {
3840   \new ChoirStaff <<
3841     \new Staff <<
3842       \clef "treble"
3843       \new Voice = "Soprano"  { \voiceOne \global \SopranoMusic }
3844       \new Voice = "Alto" { \voiceTwo \AltoMusic }
3845       \new Lyrics \lyricsto "Soprano" { \VerseOne }
3846       \new Lyrics \lyricsto "Soprano" { \VerseTwo }
3847       \new Lyrics \lyricsto "Soprano" { \VerseThree }
3848       \new Lyrics \lyricsto "Soprano" { \VerseFour }
3849     >>
3850     \new Staff <<
3851       \clef "bass"
3852       \new Voice = "Tenor" { \voiceOne \TenorMusic }
3853       \new Voice = "Bass"  { \voiceTwo \BassMusic }
3854     >>
3855   >>
3856 }
3857 @end lilypond
3858
3859
3860 @node スタイル シート
3861 @subsection スタイル シート
3862 @translationof Style sheets
3863
3864 LilyPond が作り出す出力にはさまざまな変更を加えることができます
3865 (詳細は @ref{出力を調整する} を参照してください)。@c
3866 しかしながら、調整を加えたい入力ファイルがたくさんあるとしたらどうでしょう?@c
3867 また、単に調整を実際の音楽表記から分離したいとしたらどうでしょう?@c
3868 これはとても簡単なことです。
3869
3870 以下の例を見てみましょう。@c
3871 @code{#()} を持つ部分を理解できなくても心配しないでください。@c
3872 @ref{Scheme を用いた高度な調整} で説明されています。
3873
3874 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3875 mpdolce =
3876 #(make-dynamic-script
3877   #{ \markup { \hspace #0
3878                \translate #'(5 . 0)
3879                \line { \dynamic "mp"
3880                        \text \italic "dolce" } }
3881   #})
3882
3883 inst =
3884 #(define-music-function
3885      (parser location string)
3886      (string?)
3887    #{ <>^\markup \bold \box #string #})
3888
3889 \relative c'' {
3890   \tempo 4=50
3891   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a |
3892   b4 bes a2 |
3893   \inst "Clarinet"
3894   cis4.\< d8 e4 fis |
3895   g8(\! fis)-. e( d)-. cis2 |
3896 }
3897 @end lilypond
3898
3899 @code{mpdolce} と @code{tempoMark} の定義に手を加えてみることにします。@c
3900 それらは望みの出力を作り出していますが、それらを別の楽曲で使いたいとします。@c
3901 単純にそれらを各ファイルの先頭部分にカット&ペーストすることもできますが、@c
3902 わずらわしいです。@c
3903 その方法では定義は依然として入力ファイルの中にあり、@c
3904 私は個人的にすべての @code{#()} は何か醜いと感じます。@c
3905 それらを他のファイルの中に隠すことにしましょう:
3906
3907 @example
3908 %%% これを "definitions.ily" というファイル名で保存してください
3909 mpdolce =
3910 #(make-dynamic-script
3911   #@{ \markup @{ \hspace #0
3912                \translate #'(5 . 0)
3913                \line @{ \dynamic "mp"
3914                        \text \italic "dolce" @} @}
3915   #@})
3916
3917 inst =
3918 #(define-music-function
3919      (parser location string)
3920      (string?)
3921    #@{ <>^\markup \bold \box #string #@})
3922 @end example
3923
3924 音楽ファイルの先頭付近で @code{\include} コマンドを使ってこのファイルを@c
3925 参照します。@c
3926 (インクルードされるファイルをコンパイルされるメイン ファイルと区別するため、@c
3927 拡張子 @file{.ily} を使っています。)
3928 今度は音楽ファイルを変更しましょう
3929 (このファイルを @file{"music.ly"} として保存してください)。
3930
3931 @c  We have to do this awkward example/lilypond-non-verbatim
3932 @c  because we can't do the \include stuff in the manual.
3933
3934 @example
3935 \include "definitions.ily"
3936
3937 \relative c'' @{
3938   \tempo 4=50
3939   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a |
3940   b4 bes a2 |
3941   \inst "Clarinet"
3942   cis4.\< d8 e4 fis |
3943   g8(\! fis)-. e( d)-. cis2 |
3944 @}
3945 @end example
3946
3947 @lilypond[quote,ragged-right]
3948 mpdolce =
3949 #(make-dynamic-script
3950   #{ \markup { \hspace #0
3951                \translate #'(5 . 0)
3952                \line { \dynamic "mp"
3953                        \text \italic "dolce" } }
3954   #})
3955
3956 inst =
3957 #(define-music-function
3958      (parser location string)
3959      (string?)
3960    #{ <>^\markup \bold \box #string #})
3961
3962 \relative c'' {
3963   \tempo 4=50
3964   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a |
3965   b4 bes a2 |
3966   \inst "Clarinet"
3967   cis4.\< d8 e4 fis |
3968   g8(\! fis)-. e( d)-. cis2 |
3969 }
3970 @end lilypond
3971
3972 これで前よりも良くなりましたが、いくつか変更を加えることにします。@c
3973 グリッサンド (訳者: 第 1 小節の C シャープと A の間) は見え難いので、@c
3974 もっと太く、符頭に近づけます。@c
3975 メトロノーム記号を、最初の音符の上ではなく、@c
3976 音部記号の上に持ってきます。@c
3977 最後に、私の作曲の先生は @q{C} 拍子記号を嫌っているので、@c
3978 @q{4/4} に変更した方が良さそうです。
3979
3980 @file{music.ly} には変更を加えないでください。@c
3981 @file{definitions.ily} を以下のように書き換えます:
3982
3983 @example
3984 %%%  definitions.ily
3985 mpdolce =
3986 #(make-dynamic-script
3987   #@{ \markup @{ \hspace #0
3988                \translate #'(5 . 0)
3989                \line @{ \dynamic "mp"
3990                        \text \italic "dolce" @} @}
3991   #@})
3992
3993 inst =
3994 #(define-music-function
3995      (parser location string)
3996      (string?)
3997    #@{ <>^\markup \bold \box #string #@})
3998
3999 \layout@{
4000   \context @{
4001     \Score
4002     \override MetronomeMark.extra-offset = #'(-9 . 0)
4003     \override MetronomeMark.padding = #'3
4004   @}
4005   \context @{
4006     \Staff
4007     \override TimeSignature.style = #'numbered
4008   @}
4009   \context @{
4010     \Voice
4011     \override Glissando.thickness = #3
4012     \override Glissando.gap = #0.1
4013   @}
4014 @}
4015 @end example
4016
4017 @lilypond[quote,ragged-right]
4018 mpdolce =
4019 #(make-dynamic-script
4020   #{ \markup { \hspace #0
4021                \translate #'(5 . 0)
4022                \line { \dynamic "mp"
4023                        \text \italic "dolce" } }
4024   #})
4025
4026 inst =
4027 #(define-music-function
4028      (parser location string)
4029      (string?)
4030    #{ <>^\markup \bold \box #string #})
4031
4032 \layout{
4033   \context {
4034     \Score
4035     \override MetronomeMark.extra-offset = #'(-9 . 0)
4036     \override MetronomeMark.padding = #'3
4037   }
4038   \context {
4039     \Staff
4040     \override TimeSignature.style = #'numbered
4041   }
4042   \context {
4043     \Voice
4044     \override Glissando.thickness = #3
4045     \override Glissando.gap = #0.1
4046   }
4047 }
4048
4049 \relative c'' {
4050   \tempo 4=50
4051   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a |
4052   b4 bes a2 |
4053   \inst "Clarinet"
4054   cis4.\< d8 e4 fis |
4055   g8(\! fis)-. e( d)-. cis2 |
4056 }
4057 @end lilypond
4058
4059 もっと良くなりました!@c
4060 今度はこれを公表したいとします。@c
4061 私の作曲の先生は @q{C} 拍子記号を嫌っていますが、@c
4062 私はそちらを好みます。@c
4063 現在の @code{definitions.ily} を @code{web-publish.ily} にコピーして、@c
4064 それにを変更を加えてみましょう。@c
4065 この音楽はスクリーンに表示される PDF を作り出すことを意図したものなので、@c
4066 出力のフォントを全体に大きくすることにします。
4067
4068 @example
4069 %%%  definitions.ily
4070 mpdolce =
4071 #(make-dynamic-script
4072   #@{ \markup @{ \hspace #0
4073                \translate #'(5 . 0)
4074                \line @{ \dynamic "mp"
4075                        \text \italic "dolce" @} @}
4076   #@})
4077
4078 inst =
4079 #(define-music-function
4080      (parser location string)
4081      (string?)
4082    #@{ <>^\markup \bold \box #string #@})
4083
4084 #(set-global-staff-size 23)
4085
4086 \layout@{
4087   \context @{
4088     \Score
4089     \override MetronomeMark.extra-offset = #'(-9 . 0)
4090     \override MetronomeMark.padding = #'3
4091   @}
4092   \context @{
4093     \Staff
4094   @}
4095   \context @{
4096     \Voice
4097     \override Glissando.thickness = #3
4098     \override Glissando.gap = #0.1
4099   @}
4100 @}
4101 @end example
4102
4103 @lilypond[quote,ragged-right]
4104 mpdolce =
4105 #(make-dynamic-script
4106   #{ \markup { \hspace #0
4107                \translate #'(5 . 0)
4108                \line { \dynamic "mp"
4109                        \text \italic "dolce" } }
4110   #})
4111
4112 inst =
4113 #(define-music-function
4114      (parser location string)
4115      (string?)
4116    #{ <>^\markup \bold \box #string #})
4117
4118 #(set-global-staff-size 23)
4119
4120 \layout{
4121   \context { \Score
4122     \override MetronomeMark.extra-offset = #'(-9 . 0)
4123     \override MetronomeMark.padding = #'3
4124   }
4125   \context { \Voice
4126     \override Glissando.thickness = #3
4127     \override Glissando.gap = #0.1
4128   }
4129 }
4130
4131 \relative c'' {
4132   \tempo 4=50
4133   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a |
4134   b4 bes a2 |
4135   \inst "Clarinet"
4136   cis4.\< d8 e4 fis |
4137   g8(\! fis)-. e( d)-. cis2 |
4138 }
4139 @end lilypond
4140
4141 音楽ファイルの中では、単に @code{\include "definitions.ily"} を
4142 @code{\include "web-publish.ily"} に置き換えるだけです。@c
4143 もちろん、これをもっと便利なようにすることができます。@c
4144 @file{definitions.ily} ファイルには
4145 @code{mpdolce} と @code{tempoMark} の定義だけを持たせて、@c
4146 @file{web-publish.ily} ファイルには@c
4147 上で記述した @code{\layout} セクションだけを持たせ、@c
4148 @file{university.ily} ファイルには@c
4149 私の先生の好む出力を作り出すための調整だけを持たせます。@c
4150 @file{music.ly} の先頭部分は以下のようになります:
4151
4152 @example
4153 \include "definitions.ily"
4154
4155 %%%  以下の 2 行のどちらか片方のコメントを外してください!
4156 \include "web-publish.ily"
4157 %\include "university.ily"
4158 @end example
4159
4160 このアプローチは、@c
4161 あなたがパーツ一式を作っているだけだとしても役に立つ可能性があります。@c
4162 私は自分のプロジェクトのために@c
4163 半ダースの @q{スタイル シート} ファイルを使います。@c
4164 私はそれぞれの音楽ファイルを
4165 @code{\include "../global.ily"} で始め、@c
4166 @file{gloval.ily} には以下の内容を記述しています:
4167
4168 @example
4169 %%%   global.ily
4170 \version @w{"@version{}"}
4171
4172 #(ly:set-option 'point-and-click #f)
4173
4174 \include "../init/init-defs.ly"
4175 \include "../init/init-layout.ly"
4176 \include "../init/init-headers.ly"
4177 \include "../init/init-paper.ly"
4178 @end example
4179
4180
4181 @node その他の情報源
4182 @subsection その他の情報源
4183 @translationof Other sources of information
4184
4185 内部リファレンスは LilyPond についての多くの情報を持っていますが、@c
4186 LilyPond の内部ファイルを調べることによって@c
4187 さらに多くの情報を収集することができます。@c
4188 内部ファイルを探究するには、@c
4189 まずあなたの使っているシステム特有のディレクトリを見つけ出す必要があります。@c
4190 このディレクトリの場所は、(a) あなたが lilypond.org からコンパイル済みの@c
4191 バイナリをダウンロードすることによって LilyPond を手に入れたのか、@c
4192 それとも、パッケージ マネージャから LilyPond をインストールした
4193 (つまり、Linux と一緒に配布されたか、fink や cygwin でインストールされた)
4194 のか、(b) LilyPond はどの OS 上で使用されているのか、に依存します:
4195
4196 @strong{lilypond.org からダウンロードした}
4197
4198 @itemize @bullet
4199 @item Linux
4200
4201 @example
4202 @file{@var{INSTALLDIR}/lilypond/usr/share/lilypond/current/}
4203 @end example
4204 に進んでください
4205
4206 @item MacOS X
4207
4208 @example
4209 @file{@var{INSTALLDIR}/LilyPond.app/Contents/Resources/share/lilypond/current/}
4210 @end example
4211 に進んでください。@c
4212 ターミナルからこのディレクトリへ @code{cd} で移動するか、@c
4213 LilyPond アプリケーション上でコントロール クリックして
4214 @q{Show Package Contents} を選択します。
4215
4216 @item Windows
4217
4218 @example
4219 @file{@var{INSTALLDIR}/LilyPond/usr/share/lilypond/current/}
4220 @end example
4221 に進んでください。Windows Explorer を使います。
4222
4223 @end itemize
4224
4225 @strong{パッケージ マネージャからインストールした、あるいは、@c
4226 ソースからコンパイルした}
4227
4228 @file{@var{PREFIX}/share/lilypond/@var{X.Y.Z}/} に進んでください。@c
4229 @var{PREFIX} はパッケージ マネージャか @code{configure} スクリプトによって@c
4230 セットされるものであり、@var{X.Y.Z} は LilyPond のバージョン番号です。
4231
4232 @smallspace
4233
4234 このディレクトリの中に 2 つの興味深いサブディレクトリがあります:
4235
4236 @itemize
4237 @item @file{ly/} - LilyPond フォーマットに関するファイルを保持しています
4238 @item @file{scm/} -Scheme フォーマットに関するファイルを保持しています
4239 @end itemize
4240
4241 @file{ly/} の中にあるファイルから見ていきましょう。@c
4242 @file{ly/property-init.ly} をテキスト エディタで開いてください。@c
4243 エディタはあなたが普段 @code{.ly} ファイルを編集するために使っているもので@c
4244 結構です。@c
4245 このファイルは標準の LilyPond 定義済みコマンド
4246 -- @code{\stemUp} や @code{\slurDotted} など
4247 -- のすべての定義を保持しています。@c
4248 1 つまたは複数の @code{\override} コマンドを保持している@c
4249 変数の定義以外のものはないということがわかるでしょう。@c
4250 例えば、@code{\tieDotted} は以下のように定義されています:
4251
4252 @example
4253 tieDotted = @{
4254   \override Tie.dash-period = #0.75
4255   \override Tie.dash-fraction = #0.1
4256 @}
4257 @end example
4258
4259 あなたがこれらのデフォルト値を好まない場合、これらの定義済みコマンドを@c
4260 容易に再定義することができます --
4261 他の変数と同様に、入力ファイルの先頭で定義します。
4262
4263 以下のファイルは @file{ly/} で見つかる有用なファイルです:
4264
4265 @multitable @columnfractions .4 .6
4266 @headitem ファイル名
4267   @tab 内容
4268 @item @file{ly/engraver-init.ly}
4269   @tab エングラーバ コンテキストの定義
4270 @item @file{ly/paper-defaults-init.ly}
4271   @tab 紙面関係のデフォルトの仕様
4272 @item @file{ly/performer-init.ly}
4273   @tab パフォーマ コンテキストの定義
4274 @item @file{ly/property-init.ly}
4275   @tab すべての共通定義済みコマンドの定義
4276 @item @file{ly/spanner-init.ly}
4277   @tab スパナ関係の定義済みコマンドの定義
4278 @end multitable
4279
4280 他の設定 (マークアップ コマンドの定義など) は
4281 @code{.scm} (Scheme) ファイルとして保存されています。@c
4282 Scheme プログラミング言語は、LilyPond 内部処理へのプログラム可能な@c
4283 インタフェイスを提供するために使用されます。@c
4284 これらのファイルについての詳しい説明は、Scheme 言語についての知識が@c
4285 必要となるため、このマニュアルの範囲外です。@c
4286 Scheme 言語とこれらのファイルを理解するには、十分な知識や時間が@c
4287 必要であるということを知っておくべきです
4288 (@rextend{Scheme tutorial} を参照してください)。
4289
4290 あなたがこの知識を持っているのなら、興味を持つかもしれない Scheme ファイルは@c
4291 以下のものです:
4292
4293 @multitable @columnfractions .4 .6
4294 @headitem ファイル名
4295   @tab 内容
4296 @item @file{scm/auto-beam.scm}
4297   @tab サブ 連桁のデフォルト (訳者: 8 分音符には連桁だけが使用され、@c
4298 16 分音符やそれよりも短い音符には連桁とサブ 連桁が使われるのだと思います)
4299 @item @file{scm/define-grobs.scm}
4300   @tab Grob (グラフィカル オブジェクト) プロパティのデフォルト設定
4301 @item @file{scm/define-markup-commands.scm}
4302   @tab すべてのマークアップ コマンドの仕様
4303 @item @file{scm/midi.scm}
4304   @tab MIDI 出力のデフォルト設定
4305 @item @file{scm/output-lib.scm}
4306   @tab フレット、色、臨時記号、小節線などの見た目に影響を与える設定
4307 @item @file{scm/parser-clef.scm}
4308   @tab サポートされる音部記号の定義
4309 @item @file{scm/script.scm}
4310   @tab アーティキュレーションのデフォルト設定
4311 @end multitable
4312
4313
4314 @node Scheme を用いた高度な調整
4315 @subsection Scheme を用いた高度な調整
4316 @translationof Advanced tweaks with Scheme
4317
4318 @code{\override} と @code{\tweak} コマンドを用いることで@c
4319 多くのことが可能になりますが、LilyPond のアクションを変更するもっと強力な手段が
4320 LilyPond 内部処理へのプログラム可能なインタフェイスを通じて利用可能です。@c
4321 Scheme プログラミング言語で書かれたコードは LilyPond の内部処理に@c
4322 直接組み込むことができます。@c
4323 もちろん、それを行うには Scheme プログラミングについての基礎知識が必要であり、@c
4324 その手引きが @rextend{Scheme tutorial} で提供されています。
4325
4326 多くの実現可能なことの 1 つの例としては、プロパティに定数をセットする代わりに
4327 Scheme プロシージャをセットすることができます。@c
4328 このプロパティが LilyPond によってアクセスされたときに、@c
4329 このプロシージャが呼び出されます。@c
4330 このプロシージャが呼び出されたときに、このプロシージャによって決定された@c
4331 値を動的にそのプロパティにセットすることができます。@c
4332 以下の例では、符頭にその音符の譜上での位置に従って色を付けています:
4333
4334 @cindex x11-color function, example of using (x11-color 関数の使用方法)
4335 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
4336 @cindex color property, setting to Scheme procedure (Scheme プロシージャに color プロパティをセットする)
4337
4338 @c KEEP LY
4339 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
4340 #(define (color-notehead grob)
4341    "Color the notehead according to its position on the staff."
4342    (let ((mod-position (modulo (ly:grob-property grob 'staff-position)
4343                                7)))
4344      (case mod-position
4345        ;;   Return rainbow colors
4346        ((1) (x11-color 'red    ))  ; for C
4347        ((2) (x11-color 'orange ))  ; for D
4348        ((3) (x11-color 'yellow ))  ; for E
4349        ((4) (x11-color 'green  ))  ; for F
4350        ((5) (x11-color 'blue   ))  ; for G
4351        ((6) (x11-color 'purple ))  ; for A
4352        ((0) (x11-color 'violet ))  ; for B
4353        )))
4354
4355 \relative c' {
4356   % Arrange to obtain color from color-notehead procedure
4357   \override NoteHead.color = #color-notehead
4358   a2 b | c2 d | e2 f | g2 a |
4359 }
4360 @end lilypond
4361
4362 @rextend{Callback functions} に、これらのプログラム可能なインタフェイスの@c
4363 使い方を示している例がもっとあります。
4364
4365