]> git.donarmstrong.com Git - lilypond.git/blob - Documentation/ja/learning/tweaks.itely
Docs: update Japanese LM and AU
[lilypond.git] / Documentation / ja / learning / tweaks.itely
1 @c -*- coding: utf-8; mode: texinfo; documentlanguage: ja -*-
2
3 @ignore
4     Translation of GIT committish: 499a511d4166feaada31114e097f86b5e0c56421
5
6     When revising a translation, copy the HEAD committish of the
7     version that you are working on.  See TRANSLATION for details.
8 @end ignore
9
10 @c \version "2.12.0"
11
12
13 @c Translators: Yoshiki Sawada
14 @c Translation status: post-GDP
15
16
17 @node 出力を調整する
18 @chapter 出力を調整する
19 @translationof Tweaking output
20
21 この章では出力を変更する方法について議論します。LilyPond は本当にさまざまな設@c
22 定が可能です。もしかすると出力のすべての部分が変更されるかもしれません。
23
24 @menu
25 * 調整の基本::
26 * 内部リファレンス マニュアル::
27 * オブジェクトの見た目::
28 * オブジェクトの配置::
29 * オブジェクトの衝突::
30 * 更なる調整::
31 @end menu
32
33 @node 調整の基本
34 @section 調整の基本
35 @translationof Tweaking basics
36
37
38 @menu
39 * 調整の紹介::
40 * オブジェクトとインタフェイス::
41 * オブジェクトとプロパティの命名規約::
42 * 調整手段::
43 @end menu
44
45
46 @node 調整の紹介
47 @subsection 調整の紹介
48 @translationof Introduction to tweaks
49
50 @q{調整} は入力ファイルの解釈中にとられるアクションを変更し、譜刻される音楽の@c
51 見た目を変更するためにユーザが利用可能なさまざまな手段を指す LilyPond の@c
52 用語です。@c
53 いくつかの調整はとても簡単に使うことができます。@c
54 他の調整はもっと複雑です。@c
55 しかしながら、調整のために利用可能な手段を組み合わせることによって、@c
56 ほとんどいかなる望みの見た目を持った楽譜でも譜刻することが可能になります。
57
58 このセクションでは、調整を理解するのに必要な基礎となるコンセプトを@c
59 カバーします。@c
60 その後、コピーするだけで効果が得られる作成準備が完了している@c
61 さまざまなコマンドについての情報を提供し、同時に、あなたがあなた自身の調整を@c
62 開発する方法を学べるようにそれらのコマンドがどのように構築されるのかを示します。
63
64 この章を読み始める前に、あなたは @ref{コンテキストとエングラーバ} を@c
65 再読することを望むかもしれません。@c
66 なぜなら、コンテキスト、エングラーバとそれらの中に含まれるプロパティは@c
67 調整について理解し、調整を構成するための基礎だからです。
68
69
70 @node オブジェクトとインタフェイス
71 @subsection オブジェクトとインタフェイス
72 @translationof Objects and interfaces
73
74 @cindex object (オブジェクト)
75 @cindex grob (グラフィカル オブジェクト)
76 @cindex spanner (スパナ)
77 @cindex interface (インタフェイス)
78 @cindex properties, object (オブジェクト プロパティ)
79 @cindex object properties (オブジェクト プロパティ)
80 @cindex layout object (レイアウト プロパティ)
81 @cindex object, layout (レイアウト プロパティ)
82
83 調整には LilyPond プログラムの内部オペレーションと構造体への変更も含まれます。@c
84 そのため、我々はまずそれらの内部オペレーションと構造体を記述するために@c
85 使用されるいくつかの用語を導入しなければなりません。
86
87 @q{オブジェクト} という用語は入力ファイルを処理している最中に LilyPond に@c
88 よってビルドされる多くの内部構造体を参照するために使われる汎用的な用語です。@c
89 LilyPond が @code{@bs{}new Staff} のようなコマンドに遭遇した場合、@c
90 タイプ @code{Staff} の新しいオブジェクトを構築します。@c
91 その @code{Staff} オブジェクトは、その譜表のコンテキスト内部で機能するために@c
92 割り当てられているエングラーバの詳細とともに、その譜表に関連付けられている@c
93 すべてのプロパティ -- 例えば、その譜表の名前、調号 -- を保持します。@c
94 同様に、@code{Voice} オブジェクト、@code{Score} オブジェクト、@c
95 @code{Lyrics} オブジェクトなどの他のすべてのコンテキストのプロパティを@c
96 保持するためのオブジェクトが存在し、さらに、小節線、符頭、タイ、強弱記号などの@c
97 すべての記譜要素を表すためのオブジェクトも存在します。@c
98 各オブジェクトはそれ自体のプロパティ値のセットを持ちます。
99
100 いくつかのタイプのオブジェクトには特別な名前が与えられています。@c
101 符頭、符幹、スラー、タイ、運指記号、音部記号などの譜刻される出力上の記譜要素を@c
102 表すオブジェクトは @q{レイアウト オブジェクト} と呼ばれ、@c
103 しばしば @q{グラフィカル オブジェクト} 
104 あるいは短くして @q{グロッブ (Grob: GRaphical OBject)} と呼ばれます。@c
105 これらのオブジェクトも上記の汎用的な観点から見るとオブジェクトであり、@c
106 それゆえ、それらもまたそれらのオブジェクトに関連付けされたプロパティ -- 
107 そのオブジェクトの位置、サイズ、色など -- を持ちます。
108
109 いくつかのレイアウト オブジェクトも特別です。@c
110 フレージング スラー、クレッシェンド、オッターバ (訳者: オクターブ?) 記号、@c
111 他の多くのグラフィカル オブジェクトが置かれる場所は一点ではありません -- 
112 それらは開始点、終了点、そしておそらくそれらの形に関係する他のプロパティを@c
113 持ちます。@c
114 これらのオブジェクトのように形が伸長されるオブジェクトは 
115 @q{スパナ (Spanners)} と呼ばれます。
116
117 @q{インタフェイス} とは何なのかという説明が残っています。@c
118 多くのオブジェクト -- たとえそれらが非常に異なっていたとしても -- 
119 は同じ方法で処理される必要がある共通特徴 (common feature) を共有します。@c
120 例えば、すべてのグラフィカル オブジェクトは色、サイズ、位置などを持ち、@c
121 これらのプロパティはすべて LilyPond が入力ファイルを構文解釈する最中に@c
122 同じ方法で処理されます。@c
123 これらの内部オペレーションを簡潔にするために、これらの共通アクションと@c
124 プロパティは 1 つのグループとして 
125 @code{grob-interface} と呼ばれるオブジェクトにまとめられています。@c
126 これと同じような共有プロパティのグループ化が他にも多くあり、@c
127 それぞれに対して最後に @code{interface} が付く名前が与えられています。@c
128 そのようなインタフェイスの総数は 100 を越えます。@c
129 我々は後でなぜこれがユーザにとって利益となり、役に立つのかを見ていきます。
130
131 これらは、我々がこの章で使用するオブジェクトと関係する主要な用語です。
132
133
134 @node オブジェクトとプロパティの命名規約
135 @subsection オブジェクトとプロパティの命名規約
136 @translationof Naming conventions of objects and properties
137
138
139 @cindex naming conventions for objects (オブジェクトの命名規則)
140 @cindex naming conventions for properties (プロパティの命名規則)
141 @cindex objects, naming conventions (オブジェクトの命名規則)
142 @cindex properties, naming conventions (プロパティの命名規則)
143
144 我々は以前にも @ref{コンテキストとエングラーバ} で@c
145 いくつかのオブジェクト命名規約を見てきました。@c
146 ここで参照のために、最も一般的なオブジェクトとプロパティをリストアップし、@c
147 それに加えてそれらの命名規約と実際の名前の例を挙げます。@c
148 何らかの大文字のアルファベットを表すために @q{A} を使用し、@c
149 いくつかの小文字のアルファベットを表すために @q{aaa} を使用しています。@c
150 他の文字は実際の命名でもそのまま使用されます。
151
152 @multitable @columnfractions .33 .33 .33
153 @headitem オブジェクト/プロパティのタイプ
154   @tab 命名規約
155   @tab 例
156 @item コンテキスト
157   @tab Aaaa や AaaaAaaaAaaa
158   @tab Staff, GrandStaff
159 @item レイアウト オブジェクト
160   @tab Aaaa や AaaaAaaaAaaa
161   @tab Slur, NoteHead
162 @item エングラーバ
163   @tab Aaaa_aaa_engraver
164   @tab Clef_engraver, Note_heads_engraver
165 @item インタフェイス
166   @tab aaa-aaa-interface
167   @tab grob-interface, break-aligned-interface
168 @item コンテキスト プロパティ
169   @tab aaa や aaaAaaaAaaa
170   @tab alignAboveContext, skipBars
171 @item レイアウト オブジェクト プロパティ
172   @tab aaa や aaa-aaa-aaa
173   @tab direction, beam-thickness
174 @end multitable
175
176 これから見ていくのですが、タイプが異なるオブジェクトのプロパティは@c
177 異なるコマンドによって変更されます。@c
178 そのため、プロパティの名前からオブジェクトの種類を識別できるようになると@c
179 役に立ちます。
180
181
182 @node 調整手段
183 @subsection 調整手段
184 @translationof Tweaking methods
185
186 @cindex tweaking methods (調性手段)
187
188 @strong{@bs{}override コマンド}
189
190 @cindex override command (override コマンド)
191 @cindex override syntax (override 構文)
192
193 @funindex \override
194 @funindex override
195
196 我々はすでに @ref{コンテキスト プロパティを変更する} と 
197 @ref{エングラーバを追加 / 削除する} で@strong{コンテキスト}のプロパティを@c
198 変更したり、@strong{エングラーバ}を追加/削除したりするために使用するコマンド 
199 @code{@bs{}set} と @code{@bs{}with} を見てきました。@c
200 ここでは更に重要ないくつかのコマンドについて見ていきます。
201
202 @strong{レイアウト オブジェクト}のプロパティを変更するためのコマンドは 
203 @code{@bs{}override} です。このコマンドは LilyPond の奥深くにある@c
204 内部プロパティを変更しなければならないため、これまで見てきたコマンドのように@c
205 単純な構文ではありません。@c
206 どのコンテキストの中にあるどのオブジェクトのどのプロパティを@c
207 変更しなければならないのか、そこにセットする新しい値を何にするのかを@c
208 正確に知っている必要があります。@c
209 どのようにこれを行うのかを見ていきましょう。
210
211 このコマンドの一般的な構文は以下のようなものです:
212
213 @example
214 @bs{}override @var{Context}.@var{LayoutObject} #'@var{layout-property} =
215 #@var{value}
216 @end example
217
218 @noindent
219 これは @var{Context} コンテキストのメンバである 
220 @var{LayoutObject} という名前のレイアウトの 
221 @var{layout-property} という名前のプロパティに値 @var{value} をセットします。
222
223 必要とされているコンテキストが明白であり、それが最下位レベルの@c
224 コンテキストである -- @c
225 つまり、@code{Voice}, @code{ChordNames} や @code{Lyrics} である -- 場合、@c
226 その @var{Context} は省略可能可能であり (そして通常は省略されます)、@c
227 この後の例の多くでも省略します。@c
228 後ほど、コンテキストを指定しなければならない場合について見ていきます。
229
230 これから後のセクションでは広範囲に亘るプロパティとそれらの値を扱います。@c
231 しかしながら、そのフォーマットとそれらのコマンドの使用方法を示すためには、@c
232 容易に理解できる簡単なプロパティと値を 2, 3 使用してみるだけです。
233
234 今や、レイアウト プロパティの前に置かれなければならない @code{#'} や@c
235 プロパティ値の前に置かれなければならない @code{#} について心配する必要は@c
236 ありません。@c
237 これらは常にそのような形式で正確に記述されなければなりません。@c
238 これは調整では最も一般的に使用されるコマンドであり、この章の残りの部分の@c
239 大半ではプロパティ (変更コマンド) の使用方法を示すための例を記述しています。@c
240 ここでは符頭の色を変更する簡単な例を挙げます:
241
242
243 @cindex color property, example (color プロパティの例)
244 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
245
246 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
247 c d
248 \override NoteHead #'color = #red
249 e f g
250 \override NoteHead #'color = #green
251 a b c
252 @end lilypond
253
254
255 @strong{@bs{}revert コマンド}
256
257 @cindex revert command (revert コマンド)
258
259 @funindex \revert
260 @funindex revert
261
262 一旦オーバライドされると、そのプロパティは再度オーバライドされるか 
263 @code{@bs{}revert} コマンドに遭遇するまで新しい値のままでいます。@c
264 @code{@bs{}revert} コマンドは以下の構文を持ち、@c
265 プロパティの値をオリジナルのデフォルト値に戻します。@c
266 何度か @code{@bs{}override} コマンドが発行されている場合は、@c
267 前の値に戻すわけではないということに注意してください。
268
269
270 @example
271 @bs{}revert @var{Context}.@var{LayoutObject} #'@var{layout-property}
272 @end example
273
274 繰り返しますが、@code{@bs{}override} コマンドでの @var{Context} と同様に、@c
275 多くの場合で @var{Context} を記述する必要はありません。@c
276 以下の例の多くで、@var{Context} は省略されます。@c
277 ここでは、最後の 2 つの音符の符頭の色をデフォルトに戻します:
278
279 @cindex color property, example (color プロパティの例)
280 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
281
282 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
283 c d
284 \override NoteHead #'color = #red
285 e f g
286 \override NoteHead #'color = #green
287 a
288 \revert NoteHead #'color
289 b c
290 @end lilypond
291
292 @strong{@bs{}once prefix}
293
294 @funindex \once
295 @funindex once
296
297 @code{@bs{}override} コマンドと @code{@bs{}set} コマンドには両方とも@c
298 接頭辞 @code{@bs{}once} が付く可能性があります。@c
299 これはその後に続く @code{@bs{}override} や @code{@bs{}set} コマンドを@c
300 その場一回限り有効にし、その後にそのプロパティの値をデフォルト値に戻します。@c
301 上と同じ例を使って、以下のように 1 つだけの音符の色を変更することができます:
302
303 @cindex color property, example (color プロパティの例)
304 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
305
306 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
307 c d
308 \once \override NoteHead #'color = #red
309 e f g
310 \once \override NoteHead #'color = #green
311 a b c
312 @end lilypond
313
314 @strong{@bs{}overrideProperty コマンド}
315
316 @cindex overrideProperty command (overrideProperty コマンド)
317
318 @funindex \overrideProperty
319 @funindex overrideProperty
320
321 オーバライド コマンドには @code{@bs{}overrideProperty} という@c
322 もう 1 つのフォーマットがあり、時々必要となります。@c
323 完璧を期すためにここでこれに言及しましたが、@c
324 詳細は @ruser{Difficult tweaks} を参照してください。
325 @c Maybe explain in a later iteration  -td
326
327 @strong{@bs{}tweak コマンド}
328
329 @cindex tweak command (tweak コマンド)
330
331 @funindex \tweak
332 @funindex tweak
333
334 利用可能な最後の調整コマンドは @code{@bs{}tweak} です。@c
335 これは同じタイミングで起こるオブジェクト -- 和音の中にある音符などのように -- 
336 のプロパティを変更するために使用されます。@c
337 @code{@bs{}override} コマンドを使用すると和音の中にあるすべての音符に@c
338 影響を与えます。@c
339 一方、@code{@bs{}tweak} は入力ストリームの中でその @code{@bs{}tweak} の@c
340 すぐ後にある要素 1 つだけに影響を与えます。
341
342 ここで例を挙げます。@c
343 C メジャー コードの中にある真ん中の音符 (ミドル E) の符頭のサイズを@c
344 変更したいとします。@c
345 まず最初に、@code{@bs{}once @bs{}override} だとどうなるか見てみましょう:
346
347 @cindex font-size property, example (font-size プロパティの例)
348 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
349
350 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
351   <c e g>4
352   \once \override NoteHead #'font-size = #-3
353   <c e g>
354   <c e g>
355 @end lilypond
356
357 このオーバライドは和音の中にある@emph{すべて}の符頭に影響を与えています。@c
358 これは和音の中にあるすべての音符が同じ@emph{タイミング}で起こるためであり、@c
359 @code{@bs{}once} のアクションは @code{@bs{}override} と同様に同じタイミングで@c
360 起こる、指定されたタイプすべてのレイアウト オブジェクトへのオーバライドに@c
361 適用されます。
362
363 @code{@bs{}tweak} コマンドはこれとは異なるやり方で処理されます。@c
364 これは入力ストリームの中ですぐ後に続く要素にだけ作用します。@c
365 しかしながら、これは入力ストリームから直接作成されるオブジェクト -- 
366 本質的に符頭とアーティキュレーション -- にだけ効果を持ちます。@c
367 符幹や臨時記号などのオブジェクトは後で作成されるため、@c
368 この方法では調整できません。@c
369 さらに、@code{@bs{}tweak} が符頭に適用される場合、@c
370 それらは和音の内部になければ@emph{なりません} -- 
371 つまり、単一山括弧 @code{< .. >} の内部です。@c
372 そのため、単一の音符 (和音ではない音符) を調整するには、@c
373 @code{@bs{}tweak} コマンドはその音符とともに@c
374 単一の山括弧で囲わなければなりません。
375
376 それでは例に戻り、この方法で和音の真ん中の音符のサイズを変更します:
377
378 @cindex font-size property, example (font-size プロパティの例)
379 @cindex @code{@bs{}tweak}, example (@code{@bs{}tweak} の例)
380
381 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
382   <c e g>4
383   <c \tweak #'font-size #-3 e g>4
384 @end lilypond
385
386 @code{@bs{}tweak} の構文は @code{@bs{}override} コマンドの構文とは@c
387 異なるということに注意してください。@c
388 コンテキストもレイアウト オブジェクトも指定されません。@c
389 実際、それらを指定するとエラーになります。@c
390 これらは両方とも入力ストリームの中で後に続く要素によって示されます。@c
391 さらに、イコール記号を使うべきではないということに注意してください。@c
392 そのため、@code{@bs{}tweak} コマンドの一般的な構文は単純に以下のようになります:
393
394 @example
395 @bs{}tweak #'@var{layout-property} #@var{value}
396 @end example
397
398 さらに、@code{@bs{}tweak} コマンドは一連のアーティキュレーションの中にある@c
399 ただ 1 つのアーティキュレーションを変更されるためにも使用できます。@c
400 ここに例を挙げます:
401
402 @cindex color property, example (color プロパティの例)
403 @cindex @code{@bs{}tweak}, example (@code{@bs{}tweak} の例)
404
405 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
406 a ^Black
407   -\tweak #'color #red ^Red
408   -\tweak #'color #green _Green
409 @end lilypond
410
411 @noindent
412 @code{@bs{}tweak} コマンドは、まるでそれがアーティキュレーションの@c
413 一部であるかのように、アーティキュレーション マークの前に@c
414 置かれなければならないということに注意してください。
415
416 @cindex tuplets, nested (ネストされた連符)
417 @cindex triplets, nested (ネストされた 3 連符)
418 @cindex bracket, tuplet (連符の囲み)
419 @cindex bracket, triplet (3 連符の囲み)
420 @cindex tuplet bracket (連符の囲み)
421 @cindex triplet bracket (3 連符の囲み)
422
423 @funindex TupletBracket
424
425 さらに、@code{@bs{}tweak} コマンドは、同時に起こるネストされた@c
426 連符記号のセットのうちの 1 つの見た目を変更するためにも使用されます。@c
427 以下の例では、長い連符記号と 3 つの短い連符記号のうちの最初の連符記号が@c
428 同時に起こります。@c
429 そのため、@code{@bs{}override} コマンドだと両方の連符記号に@c
430 適用されてしまいます。@c
431 この例では、@code{@bs{}tweak} は 2 つの連符記号を区別するために@c
432 使用されています。@c
433 最初の @code{@bs{}tweak} コマンドは長い連符記号を音符の上に置くことを@c
434 指定していて、2 番目の @code{@bs{}tweak} コマンドは最初の短い連符記号の数字を@c
435 赤で描くことを指定しています。
436
437 @cindex @code{@bs{}tweak}, example (@code{@bs{}tweak} の例)
438 @cindex direction property, example (direction プロパティの例)
439 @cindex color property, example (color プロパティの例)
440
441 @lilypond[quote,ragged-right,verbatim,fragment,relative=2]
442 \tweak #'direction #up
443 \times 4/3 {
444   \tweak #'color #red
445   \times 2/3 { c8[ c8 c8] }
446   \times 2/3 { c8[ c8 c8] }
447   \times 2/3 { c8[ c8 c8] }
448 }
449 @end lilypond
450
451 ネストされた連符が同時に起こらない場合、それらの見た目は @code{@bs{}override} 
452 コマンドを用いた通常通りの方法で変更されるかもしれません:
453
454 @cindex text property, example (text プロパティの例)
455 @cindex tuplet-number function, example (tuplet-number 関数の例)
456 @cindex transparent property, example (transparent プロパティの例)
457 @cindex TupletNumber, example of overriding (TupletNumber をオーバライドする例)
458
459 @c NOTE Tuplet brackets collide if notes are high on staff
460 @c See issue 509
461 @lilypond[quote,ragged-right,verbatim,fragment,relative=1]
462 \times 2/3 { c8[ c c]}
463 \once \override TupletNumber
464   #'text = #tuplet-number::calc-fraction-text
465 \times 2/3 {
466   c[ c]
467   c[ c]
468   \once \override TupletNumber #'transparent = ##t
469   \times 2/3 { c8[ c c] }
470 \times 2/3 { c8[ c c]}
471 }
472 @end lilypond
473
474
475 @seealso
476 記譜法リファレンス:
477 @ruser{The tweak command}
478
479
480 @node 内部リファレンス マニュアル
481 @section 内部リファレンス マニュアル
482 @translationof The Internals Reference manual
483
484
485 @menu
486 * レイアウト オブジェクトのプロパティ::
487 * インタフェイスの中で見つかるプロパティ::
488 * プロパティのタイプ::
489 @end menu
490
491 @node レイアウト オブジェクトのプロパティ
492 @subsection レイアウト オブジェクトのプロパティ
493 @translationof Properties of layout objects
494
495 @cindex properties of layout objects (レイアウト オブジェクトのプロパティ)
496 @cindex properties of grobs (グラフィカル オブジェクトのプロパティ)
497 @cindex grobs, properties of (グラフィカル オブジェクトのプロパティ)
498 @cindex layout objects, properties of (レイアウト オブジェクトのプロパティ)
499 @cindex Internals Reference manual (内部リファレンス マニュアル)
500
501 あなたがスラーを楽譜に描き、そのスラーが細すぎるためにもう少し太くしたいと@c
502 思ったとします。@c
503 どうやってスラーを太くしますか?@c
504 以前に LilyPond の自由度の高さについて述べたので、@c
505 そのようなことが可能であることは知っています。@c
506 あなたはおそらく @code{@bs{}override} コマンドが必要であると推測するでしょう。@c
507 しかしながら、スラーの太さプロパティは存在するのでしょうか?@c
508 そして、それが存在するならどうやって変更するのでしょうか?@c
509 このようなことに内部リファレンス マニュアルは触れています。@c
510 内部リファレンス マニュアルには、あなたがスラーを太くするために必要な情報、@c
511 他のすべての @code{@bs{}override} コマンドを構築するために必要な情報が@c
512 含まれています。
513
514 内部リファレンスを見ていく前に一言警告です。@c
515 これは@strong{リファレンス} ドキュメントであり、@c
516 説明はほんの少しかまったく含まれていません: 
517 リファレンスの目的は情報を正確に、かつ簡潔に提供することです。@c
518 そのため、内部リファレンスを一見してひるんでしまうかもしれません。@c
519 しかし、心配しないでください!@c
520 ここにあるガイダンスと説明を読めば、少し練習するだけで、@c
521 内部リファレンスから必要な情報を取り出せるようになります。
522
523 @cindex override example (オーバライドの例)
524 @cindex Internals Reference, example of using (内部リファレンスの使用例)
525 @cindex @code{@bs{}addlyrics} example (@code{@bs{}addlyrics} の例)
526
527 実際の音楽からの簡単な断片を持つ具体例を使用していきましょう:
528
529 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
530 {
531   \time 6/8
532   {
533     r4 b8 b[( g]) g |
534     g[( e]) e d[( f]) a |
535     a g
536   }
537   \addlyrics {
538     The man who feels love's sweet e -- mo -- tion
539   }
540 }
541 @end lilypond
542
543 ここで、スラーをもう少し太くしようと決めたことにします。@c
544 それは可能でしょうか?@c
545 スラーは確かにレイアウト オブジェクトです。@c
546 そのため、その疑問は @q{スラーに属していて、太さを制御するプロパティは@c
547 存在するのか?} ということになります。@c
548 その答えを得るために内部リファレンス -- 縮めて IR -- を見なければなりません。
549
550 あなたが使用しているバージョンの LilyPond のための内部リファレンスは 
551 LilyPond ウェブサイト @uref{http://lilypond.org} で見つかるでしょう。@c
552 ドキュメント ページに行き、内部リファレンスへのリンクをクリックしてください。@c
553 学習目的のためには標準の HTML バージョンを使うべきであり、@c
554 @q{one big page} (@q{大きな 1 ページにまとめたもの}) や PDF を@c
555 使うべきではありません。@c
556 次の数段落を読めば、あなたが内部リファレンスを読むときに@c
557 実際にすべきことがわかるでしょう。
558
559 内部リファレンスの@strong{トップ ページ}下には 5 つのリンクがあります。@c
560 @emph{バックエンド} へのリンクを選択してください。@c
561 そこにはレイアウト オブジェクトについての情報があります。@c
562 @strong{バックエンド} 下にある @emph{すべてのレイアウト オブジェクト} への@c
563 リンクを選択してください。@c
564 そのページには、あなたが使用しているバージョンの LilyPond で使用される@c
565 すべてのレイアウト オブジェクトがアルファベット順で@c
566 リストアップされています。@c
567 Slur へのリンクを選択すると、Slur のプロパティがリスト アップされます。
568
569 記譜法リファレンスからこのページを見つける方法もあります。@c
570 スラーについて扱っているページで、内部リファレンスへのリンクが@c
571 見つかるかもしれません。@c
572 このリンクでこのページに直接行くことができます。@c
573 しかしながら、あなたが調整するレイアウト オブジェクトの名前を@c
574 想像できる場合は、すぐに内部リファレンスに行ってそこで探す方が簡単です。
575
576 内部リファレンスの Slur ページでは、まず Slur オブジェクトは 
577 @code{Slur_engraver} によって作成されるということが述べられています。@c
578 それから、標準設定がをリストアップされています。@c
579 標準設定はアルファベット順にはなって@strong{いない}ということに@c
580 注意してください。@c
581 太さを制御していそうなプロパティを探してブラウザを@c
582 スクロール ダウンさせていくと、以下が見つかります:
583
584 @example
585 @code{thickness} (number)
586      @code{1.2}
587      Line thickness, generally measured in @code{line-thickness}
588 @end example
589
590 これが太さを変更するプロパティのようです。@c
591 @code{thickness} の値は@emph{数}であり、デフォルト値は 1.2、@c
592 この値は他のプロパティでは @code{line-thickness} と@c
593 呼ばれるということがわかります。
594
595 前にも言ったように、内部リファレンスには説明がほとんど、@c
596 あるいはまったくありません。@c
597 しかしながら、すでにスラーの太さを変えるための十分な情報を持っています。@c
598 レイアウト オブジェクトの名前は @code{Slur} であり、変更するプロパティの名前は 
599 @code{thickness} であり、スラーをもっと太くするには@c
600 新しい値を 1.2 よりも大きくすべきであることがわかります。
601
602 今度は、レイアウト オブジェクト名で見つけた値を置き換えることによって 
603 @code{@bs{}override} コマンドを構築することができます。@c
604 コンテキストは省略します。@c
605 最初は太さに非常に大きな値を割り当ててみます。@c
606 それによって、そのコマンドが確かに機能していることを確かめることができます。@c
607 実行するコマンドは以下のようになります:
608
609 @example
610 @bs{}override Slur #'thickness = #5.0
611 @end example
612
613 プロパティ名の前に @code{#'} を付けること、@c
614 新しい値の前に @code{#} を付けることを忘れないでください!
615
616 最後の疑問は @q{このコマンドをどこに置くべきか?} ということです。@c
617 そのことについて不確かであり、学んでいる最中であるのならば、@c
618 ベストな答えはこうです @q{音楽表記の内部で、最初のスラーの直前}。@c
619 ではやってみましょう:
620
621 @cindex Slur example of overriding (Slur をオーバライドする例)
622 @cindex thickness property, example (thickness プロパティの例)
623
624 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
625 {
626   \time 6/8
627   {
628     % Increase thickness of all following slurs from 1.2 to 5.0
629     \override Slur #'thickness = #5.0
630     r4 b8 b[( g]) g |
631     g[( e]) e d[( f]) a |
632     a g
633   }
634   \addlyrics {
635     The man who feels love's sweet e -- mo -- tion
636   }
637 }
638 @end lilypond
639
640 @noindent
641 確かにスラーが太くなっています。
642
643 これが @code{@bs{}override} コマンドを構築する基本的な方法です。@c
644 これより後のセクションで遭遇するものはもう少し複雑ですが、@c
645 必要な要点はすべて知っています -- しかしながら、まだ練習が必要でしょう。@c
646 これは以下の例で提供されます。
647
648
649 @subheading コンテキストを見つけ出す
650
651 @cindex context, finding (コンテキストを見つけ出す)
652 @cindex context, identifying correct (正しいコンテキストを特定する)
653
654 しかしながら、まず最初にコンテキストを指定しなければならないとしたら@c
655 どうでしょうか?@c
656 指定すべきコンテキストは何でしょうか?@c
657 スラーとボイスは音楽表記の各行で明らかに関係が深いので、@c
658 スラーは @code{Voice} コンテキストの中にあると推測できるかもしれません。@c
659 しかし、それは確かでしょうか?@c
660 この問題を解決するには、Slur について記述している内部リファレンス ページの@c
661 先頭に戻ります。@c
662 そこには @q{Slur オブジェクトは Slur エングラーバによって作成される} と@c
663 書かれています。@c
664 そのため、スラーは @code{Slur_engraver} が存在しているコンテキストの@c
665 どれかで作成されるということになります。@c
666 @code{Slur_engraver} へのリンクを辿ります。@c
667 そのページの最後の方で @code{Slur_engraver} は 5 つのボイス コンテキスト -- 
668 標準のボイス コンテキストである @code{Voice} を含む -- の一部であることが@c
669 述べられています。@c
670 ですから、推測は正しかったのです。@c
671 そして、@code{Voice} は最下位のコンテキストの 1 つである -- このことは、@c
672 そこに音符を入力するという事実によって明らかに示されています -- ため、@c
673 ここではそのコンテキストを省略することができるのです。
674
675
676 @subheading 1 回だけオーバライドする
677
678 @cindex overriding once only (一度だけオーバライドする)
679 @cindex once override (一度だけオーバライドする)
680
681 @funindex \once
682 @funindex once
683
684 上記の最後の例では@emph{すべて}のスラーが太くなっています。@c
685 しかし、最初のスラーだけを太くしたい場合はどうでしょうか?@c
686 これは @code{@bs{}once} コマンドを使うことによって達成されます。@c
687 @code{@bs{}override} コマンドの直前に @code{@bs{}once} コマンドを@c
688 置くことによって、@code{@bs{}override} コマンドは@strong{直後にある}音符から@c
689 始まるスラーだけを変更するようになります。@c
690 直後にある音符がスラーの開始点ではない場合、そのコマンドは@c
691 まったく機能しません -- それがスラーに遭遇するまで保持されるということはなく、@c
692 ただ切り捨てられるだけです。@c
693 そのため、@code{@bs{}once} コマンド付きの @code{@bs{}override} コマンドは@c
694 以下のように上記の例とは異なる場所に置かなくてはなりません:
695
696 @cindex Slur, example of overriding (Slur をオーバライドする例)
697 @cindex thickness property, example (thickness プロパティの例)
698
699 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
700 {
701   \time 6/8
702   {
703     r4 b8
704     % Increase thickness of immediately following slur only
705     \once \override Slur #'thickness = #5.0
706     b[( g]) g |
707     g[( e]) e d[( f]) a |
708     a g
709   }
710   \addlyrics {
711     The man who feels love's sweet e -- mo -- tion
712   }
713 }
714 @end lilypond
715
716 @noindent
717 今度は、最初のスラーだけが太くなりました。
718
719 @code{@bs{}once} コマンドは @code{@bs{}set} コマンドの前でも@c
720 使用される可能性があります。
721
722
723 @subheading 元に戻す
724
725 @cindex revert (元に戻す)
726 @cindex default properties, reverting to (デフォルトのプロパティに戻す)
727
728 @funindex \revert
729 @funindex revert
730
731 最後に、最初の 2 つだけのスラーを太くしたい場合はどうでしょうか?@c
732 その場合、2 つのコマンド -- それぞれの前に @code{@bs{}once} を付けた -- 
733 をスラーが始まる音符の直前に置きます:
734
735 @cindex Slur, example of overriding (Slur をオーバライドする例)
736 @cindex thickness property, example (thickness プロパティの例)
737
738 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
739 {
740   \time 6/8
741   {
742     r4 b8
743     % Increase thickness of immediately following slur only
744     \once \override Slur #'thickness = #5.0
745     b[( g]) g |
746     % Increase thickness of immediately following slur only
747     \once \override Slur #'thickness = #5.0
748     g[( e]) e d[( f]) a |
749     a g
750   }
751   \addlyrics {
752     The man who feels love's sweet e -- mo -- tion
753   }
754 }
755 @end lilypond
756
757 @noindent
758 あるいは、@code{@bs{}once} コマンドを省略して、2 番目のスラーの後に 
759 @code{thickness} プロパティをデフォルト値に戻すために 
760 @code{@bs{}revert} コマンドを使うこともできます:
761
762 @cindex Slur, example of overriding (Slur をオーバライドする例)
763 @cindex thickness property, example (thickness プロパティの例)
764
765 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
766 {
767   \time 6/8
768   {
769     r4 b8
770     % Increase thickness of all following slurs from 1.2 to 5.0
771     \override Slur #'thickness = #5.0
772     b[( g]) g |
773     g[( e])
774     % Revert thickness of all following slurs to default of 1.2
775     \revert Slur #'thickness
776     e d[( f]) a |
777     a g
778   }
779   \addlyrics {
780     The man who feels love's sweet e -- mo -- tion
781   }
782 }
783 @end lilypond
784
785 @noindent
786 @code{@bs{}revert} コマンドは @code{@bs{}override} コマンドで@c
787 変更されたどのプロパティでもデフォルト値に戻すことができます。@c
788 状況に相応しい方を使用してください。
789
790 これで内部リファレンスと調整の基本的な方法についての紹介を終わりにします。@c
791 この章で後に続くセクションの中にあるいくつのかの例でも一部では、@c
792 内部リファレンスの特徴についての追加の紹介や、そこから情報を取り出すための@c
793 更なる練習を提供します。@c
794 それらの例ではガイダンスや説明のための言葉はずっと少ないでしょう。
795
796
797 @node インタフェイスの中で見つかるプロパティ
798 @subsection インタフェイスの中で見つかるプロパティ
799 @translationof Properties found in interfaces
800
801 @cindex interface (インタフェイス)
802 @cindex interface properties (インタフェイス プロパティ)
803 @cindex properties in interfaces (インタフェイス内のプロパティ)
804
805 今度は歌詞をイタリック体で譜刻したいということにします。@c
806 そうするには @code{@bs{}override} コマンドを@c
807 どのように使う必要があるのでしょうか?@c
808 以前と同様に、まず @q{すべてのレイアウト オブジェクト} をリストアップしている@c
809 内部リファレンス ページを開き、歌詞をコントロールしていそうなオブジェクトを@c
810 探します。@c
811 @code{LyricText} がそれであるようです。@c
812 これをクリックすると、歌詞のテキストに対してセットすることができる@c
813 プロパティが表示されます。@c
814 そこには @code{font-series} と @code{font-size} が含まれますが、@c
815 歌詞をイタリック体にするためのプロパティらしきものはありません。@c
816 これは、形に関するプロパティはすべてのフォント オブジェクトに共通なもの@c
817 であり、そのため、各レイアウト オブジェクトに含まれているのではなく、@c
818 他の同様な共通プロパティと一緒にグループ化されていて、@c
819 @strong{インタフェイス}の 1 つ @code{font-interface} の中に@c
820 置かれているからです。
821
822 そのため、インタフェイスのプロパティを見つける方法と、どのオブジェクトが@c
823 これらのインタフェイス プロパティを使うのかを調べる方法を学ぶ必要があります。
824
825 @code{LyricText} について記述している内部リファレンスのページを@c
826 再び開いてください。@c
827 そのページの最後に @code{LyricText} がサポートするインタフェイスへのリンクが@c
828 リスト アップされています。@c
829 そのリストには @code{font-interface} を含むいくつかの要素があります。@c
830 このリンクをクリックすると、このインタフェイスに@c
831 関連付けされているプロパティのところに行きます。@c
832 これらのプロパティは @code{LyricText} を含む @code{font-interface} を@c
833 サポートするすべてのオブジェクトのプロパティでもあります。
834
835 @code{font-shape(symbol)} を含むフォントを制御するユーザが@c
836 設定可能なプロパティをすべて見つけました。@c
837 @code{font-shape(symbol)} では @code{symbol} を @code{upright}, 
838 @code{italics}, あるいは @code{caps} にセットすることができます。
839
840 そこには、@code{font-series} と @code{font-size} もリスト アップされている@c
841 ことに気づくでしょう。@c
842 そこで次のような疑問が湧いてきます: 
843 共通フォントプロパティ @code{font-series} と @code{font-size} は 
844 @code{LyricText} とインタフェイス @code{font-interface} の両方で@c
845 リスト アップされているのに、なぜ @code{font-shape} はそうでないのか?@c
846 その答えは、@code{font-series} と @code{font-size} は、@c
847 @code{LyricText} オブジェクトが作成されるときに、@c
848 それらのグローバルなデフォルト値から変更されるのに対して、@c
849 @code{font-shape} はそうではないからです。@c
850 @code{LyricText} の中にあるエントリから @code{LyricText} に適用される@c
851 それら 2 つのプロパティの値がわかります。@c
852 @code{font-interface} をサポートする他のオブジェクトは、@c
853 それらのオブジェクトが作成されるときに、@c
854 それらのプロパティを異なる値にセットします。
855
856 今度は歌詞をイタリック体に変更するように @code{@bs{}override} コマンドを@c
857 構築できるかどうかを見ていきましょう。@c
858 オブジェクトは @code{LyricText} であり、@c
859 プロパティは @code{font-shape} であり、セットする値は @code{italic} です。@c
860 前と同様に、コンテキストを省略します。
861
862 話は逸れますが重要なことを 1 つ挙げます。@c
863 @code{font-shape} の値はシンボルなので、シングル アポストロフィ @code{'} を@c
864 付ける必要があるということに注意してください。@c
865 その理由は、以前の例での @code{thickness} や @code{font-shape} の前に@c
866 アポストロフィを付ける必要がある理由と同じです。@c
867 それらも両方ともシンボルです。@c
868 シンボルは LilyPond によって内部的に読み取られます。@c
869 それらのいくつかは @code{thickness} や @code{font-shape} のようなプロパティの@c
870 名前であり、他のものは @code{italic} のようにプロパティに与えられる値として@c
871 使用されます。@c
872 任意のテキスト文字列との違い -- 任意のテキスト文字列は @code{"a text string"} 
873 のような形で表記されます -- に注意してください。@c
874 シンボルと文字列についてのより詳細な説明は、@ref{Scheme チュートリアル} を@c
875 参照してください。
876
877 さて、それでは歌詞をイタリック体で譜刻するために必要となる 
878 @code{@bs{}override} コマンドは以下のようになります:
879
880 @example
881 \override LyricText #'font-shape = #'italic
882 @end example
883
884 @noindent
885 そして、これは以下のように影響を与える歌詞の前に、そして近くに置くべきです:
886
887 @cindex font-shape property, example (font-shape プロパティの例)
888 @cindex italic, example (italic の例)
889 @cindex LyricText, example of overriding (Lyric をオーバライドする例)
890 @cindex @code{\addlyrics}, example (@code{\addlyrics} の例)
891
892 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
893 {
894   \time 6/8
895   {
896     r4 b8 b[( g]) g |
897     g[( e]) e d[( f]) a |
898     a g
899   }
900   \addlyrics {
901     \override LyricText #'font-shape = #'italic
902     The man who feels love's sweet e -- mo -- tion
903   }
904 }
905 @end lilypond
906
907 @noindent
908 これで歌詞がすべてイタリック体で譜刻されました。
909
910
911 @subheading 歌詞モードの中でコンテキストを指定する
912
913 @cindex context, specifying in lyric mode (歌詞モード内でコンテキストを指定する)
914 @cindex lyric mode, specifying context (歌詞モード内でコンテキストを指定する)
915
916 歌詞の場合、以前のようなコマンドの発行の仕方の中でコンテキストを@c
917 指定しようとしても失敗するでしょう。@c
918 歌詞モードの中で入力される音節はスペース、改行、数字のいずれかで区切られます。@c
919 他のすべての文字は音節の一部と見なされます。@c
920 これが、終端の @code{@}} の前にはスペースか改行を@c
921 置かなければならない理由です。@c
922 そうしないと、終端の @code{@}} は最後の音節の一部に含まれてしまいます。@c
923 同様に、コンテキスト名とオブジェクト名を区切るために、@c
924 ピリオドまたはドット @q{.} の前と後ろにスペースを挿入しなければなりません。@c
925 さもないと 2 つの名前は一緒になってしまい、インタプリタはそれらを@c
926 認識できなくなります。@c
927 そのため、コマンドは以下のようにすべきです:
928
929 @example
930 @bs{}override Lyrics . LyricText #'font-shape = #'italic
931 @end example
932
933 @warning{歌詞の中では、最後の音節と終端の波括弧の間に常にスペースを@c
934 置いてください。}
935
936 @warning{歌詞の中のオーバライドでは、コンテキスト名とオブジェクト名の@c
937 間にあるドットの両側に常にスペースを置いてください。}
938
939
940 @seealso
941 学習マニュアル: @ref{Scheme チュートリアル}
942
943
944 @node プロパティのタイプ
945 @subsection プロパティのタイプ
946 @translationof Types of properties
947
948 @cindex property types (プロパティ タイプ)
949
950 これまでにプロパティのタイプを 2 つ見てきました: 
951 @code{number} と @code{symbol} です。@c
952 プロパティに与える値が有効であるためには、その値は正しいタイプであり、@c
953 そのタイプのルールに従っていなければなりません。@c
954 プロパティのタイプは内部リファレンスの中で常にプロパティ名の後の括弧の中に@c
955 表示されています。@c
956 ここに、あなたが必要になるであろうプロパティのタイプを、@c
957 そのタイプのルールといくつかの例と共にリスト アップします。@c
958 もちろん、@code{@bs{}override} コマンドの中でプロパティの値を入力する時は、@c
959 常にそれらの値の前にハッシュ記号 @code{#} を付け加える必要があります。
960
961 @multitable @columnfractions .2 .45 .35
962 @headitem プロパティ タイプ
963   @tab 規則
964   @tab 例
965 @item Boolean
966   @tab 真か偽のどちらかで、それぞれ #t と #f で表されます
967   @tab @code{#t}, @code{#f}
968 @item Dimension (譜表スペース)
969   @tab 正の小数 (譜表スペース単位)
970   @tab @code{2.5}, @code{0.34}
971 @item Direction
972   @tab 有効な向きを表す定数またはそれと等価な数値 (-1 から 1 までの小数が@c
973 許可されます)
974   @tab @code{LEFT}, @code{CENTER}, @code{UP},
975        @code{1}, @code{-1}
976 @item Integer
977   @tab 正の整数
978   @tab @code{3}, @code{1}
979 @item List
980   @tab 値のセット。@c
981 セットの値はスペースで区切られ、前にアポストロフィが付いた括弧で囲まれます
982   @tab @code{'(left-edge staff-bar)}, @code{'(1)},
983        @code{'(1.0 0.25 0.5)}
984 @item Markup
985   @tab 有効なマークアップ
986   @tab @code{@bs{}markup @{ \italic "cresc." @}}
987 @item Moment
988   @tab make-moment 関数で構築される全音符の分数
989   @tab @code{(ly:make-moment 1 4)},
990        @code{(ly:make-moment 3 8)}
991 @item Number
992   @tab 正または負の小数
993   @tab @code{3.5}, @code{-2.45}
994 @item (数の) Pair
995   @tab @q{スペース . スペース} で区切られ、前にアポストロフィが付いた括弧で@c
996 囲まれた 2 つの数値
997   @tab @code{'(2 . 3.5)}, @code{'(0.1 . -3.2)}
998 @item Symbol
999   @tab プロパティに許可されているシンボルのセットのいずれかであり、@c
1000 前にアポロストロフィを付けます
1001   @tab @code{'italic}, @code{'inside}
1002 @item Unknown
1003   @tab 手続き。何のアクションも起こさない場合は @code{#f}
1004   @tab @code{bend::print}, @code{ly:text-interface::print},
1005        @code{#f}
1006 @item Vector
1007   @tab 前にアポストロフィ-ハッシュ @code{'#} が付いた括弧で囲まれた 
1008 3 要素のリスト
1009   @tab @code{'#(#t #t #f)}
1010 @end multitable
1011
1012
1013 @seealso
1014 学習マニュアル: @ref{Scheme チュートリアル}
1015
1016
1017 @node オブジェクトの見た目
1018 @section オブジェクトの見た目
1019 @translationof Appearance of objects
1020
1021 いくつかの例を使ってこれまでに学んだことを練習して、譜刻される楽譜の見た目を@c
1022 変更するためにどのように調整が使われるのかを見ていきましょう。
1023
1024
1025 @menu
1026 * オブジェクトの可視性と色::
1027 * オブジェクトのサイズ::
1028 * オブジェクトの長さと太さ::
1029 @end menu
1030
1031
1032 @node オブジェクトの可視性と色
1033 @subsection オブジェクトの可視性と色
1034 @translationof Visibility and color of objects
1035
1036 教育目的の楽譜では、ある要素を省略した楽譜を譜刻して、学生にそれを付け足させる@c
1037 という訓練にしたいと思うかもしれません。@c
1038 簡単な例として、その訓練とは小節線の無い楽譜だと仮定してみましょう。@c
1039 しかしながら、通常、小節線は自動的に挿入されます。@c
1040 どうやって小節線が譜刻されることを防ぐのでしょうか?
1041
1042 このことに挑戦する前に、オブジェクト プロパティは@emph{インタフェイス}と@c
1043 呼ばれるものにグループ化されているということを思い出してください -- 
1044 @ref{インタフェイスの中で見つかるプロパティ} を参照してください。@c
1045 これはあるグラフィカル オブジェクトを調整するために一緒に@c
1046 使用されるかもしれないプロパティをグループ化したものです -- 
1047 あるオブジェクトに対してインタフェイス内のプロパティの 1 つを使うことが@c
1048 許可されるのなら、他のプロパティも許可されます。@c
1049 あるオブジェクトはいくつかのインタフェイス内にあるプロパティを使用し、@c
1050 別のオブジェクトはそれとは別のインタフェイス内にあるプロパティを使用します。@c
1051 ある特定のグラフィカルオブジェクトによって使用されるプロパティを保持している@c
1052 インタフェイスは、そのグラフィカル オブジェクトについて記述している@c
1053 内部リファレンス ページの最後にリスト アップされていて、@c
1054 それらのプロパティはそれらのインタフェイスを参照することによって閲覧できます。
1055
1056 グラフィカル オブジェクトについての情報を見つけ出す方法を 
1057 @ref{レイアウト オブジェクトのプロパティ} で説明しました。@c
1058 同じアプローチを使って、内部リファレンスで小節線を@c
1059 譜刻するレイアウト オブジェクトを見つけ出します。@c
1060 @emph{バックエンド}を経由して@emph{すべてのレイアウト オブジェクト}に行くと、@c
1061 そこに @code{BarLine} と呼ばれる@c
1062 レイアウト オブジェクトがあることがわかります。@c
1063 そのレイアウト オブジェクトのプロパティには小節線の可視性をコントロールする 
1064 2 つのプロパティが含まれています: @c
1065 @code{break-visibility} と @code{stencil} です。@c
1066 さらに、@code{BarLine} はインタフェイスのいくつかをサポートしています。@c
1067 @code{grob-interface} もサポートされていて、@c
1068 そこには @code{transparent} プロパティと @code{color} プロパティが@c
1069 含まれています。@c
1070 これらすべてが小節線の可視性に影響を与えます (そしてもちろん、@c
1071 拡大解釈すれば他の多くのレイアウト オブジェクトにも影響を与えます)。@c
1072 次はこれらのプロパティをそれぞれ見ていきましょう。
1073
1074
1075 @subheading ステンシル (stencil)
1076
1077 @cindex stencil property (stencil プロパティ)
1078
1079 このプロパティは譜刻すべきシンボル (グリフ) を指定することによって@c
1080 小節線の見た目を制御します。@c
1081 他の多くのプロパティでも共通に言えますが、このプロパティの値に 
1082 @code{#f} をセットすることによって何も譜刻させなくすることができます。@c
1083 ではやってみましょう。@c
1084 以前と同様に、暗黙のコンテキスト @code{Voice} は省略します:
1085
1086 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1087 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1088
1089 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1090 {
1091   \time 12/16
1092   \override BarLine #'stencil = ##f
1093   c4 b8 c d16 c d8 |
1094   g, a16 b8 c d4 e16 |
1095   e8
1096 }
1097 @end lilypond
1098
1099 小節線はまだ譜刻されています。@c
1100 何が間違っているのでしょうか?@c
1101 内部リファレンスに戻って、@code{BarLine} のプロパティを記述しているページを@c
1102 読み返してください。@c
1103 そのページの先頭に 
1104 @qq{BarLine オブジェクトは Bar_engraver によって作成されます} と@c
1105 記述されています。@c
1106 @code{Bar_engraver} ページに行ってください。@c
1107 そのページの最後で、@code{Bar_engraver} を保持するコンテキストが@c
1108 リスト アップされています。@c
1109 それらのコンテキストのタイプはすべて @code{Staff} です。@c
1110 ですから、@code{@bs{}override} コマンドが予期したように機能しなかったのは、@c
1111 @code{BarLine} はデフォルトの @code{Voice} コンテキストの中には@c
1112 いなかったからなのです。@c
1113 コンテキストが間違って指定された場合、そのコマンドは機能しません。@c
1114 エラー メッセージは生成されず、ログ ファイルには何もログが残りません。@c
1115 正しいコンテキストを付け加えることによってコマンドを修正してみましょう:
1116
1117 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1118 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1119
1120 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1121 {
1122   \time 12/16
1123   \override Staff.BarLine #'stencil = ##f
1124   c4 b8 c d16 c d8 |
1125   g, a16 b8 c d4 e16 |
1126   e8
1127 }
1128 @end lilypond
1129
1130 今度は小節線が消えました。
1131
1132
1133 @subheading 可視性の破棄 (break-visibility)
1134
1135 @cindex break-visibility property (break-visibility プロパティ)
1136
1137 内部リファレンスの @code{BarLine} のプロパティから 
1138 @code{break-visibility} プロパティには 3 つのブール値からなるベクトルが@c
1139 必要であることがわかります。@c
1140 これらはそれぞれ、小節線が行の最後、行の途中、行の最初に譜刻されるかどうかを@c
1141 制御します。@c
1142 以下の例ではすべての小節線を消したいので、必要となる値は 
1143 @code{'#(#f #f #f)} です。@c
1144 それではやってみましょう。@c
1145 @code{Staff} コンテキストを含めることを忘れないでください。@c
1146 また、この値を書くときに括弧を始める前に @code{#'#} を@c
1147 付ける必要があることにも注意してください。@c
1148 @code{'#} はベクトルを導入するときに値の一部として必要とされ、@c
1149 先頭の @code{#} は @code{@bs{}override} コマンドの中で常に値の前に@c
1150 置くことが必要とされます。
1151
1152 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1153 @cindex break-visibility property, example (break-visibility プロパティの例)
1154
1155 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1156 {
1157   \time 12/16
1158   \override Staff.BarLine #'break-visibility = #'#(#f #f #f)
1159   c4 b8 c d16 c d8 |
1160   g, a16 b8 c d4 e16 |
1161   e8
1162 }
1163 @end lilypond
1164
1165 今度もすべての小節線が消えました。
1166
1167
1168 @subheading 透過性 (transparent)
1169
1170 @cindex transparent property (transparent プロパティ)
1171 @cindex transparency (透明性)
1172
1173 内部リファレンスの @code{grob-interface} ページにあるプロパティから 
1174 @code{transparent} プロパティはブール値であることがわかります。@c
1175 これはグラフィカル オブジェクトを透明にする場合には @code{#t} に@c
1176 セットします。@c
1177 次の例では、小節線ではなく拍子記号を不可視にしてみましょう。@c
1178 そうするには、まず、拍子記号のグラフィカル オブジェクト名を@c
1179 見つける必要があります。@c
1180 @code{TimeSignature} レイアウト オブジェクトのプロパティを見つけるために@c
1181 内部リファレンスの @q{すべてのレイアウト オブジェクト} ページに@c
1182 戻ってください。@c
1183 @code{TimeSigunature} は @code{Time_signature_engraver} によって作り出され、@c
1184 さらに、@code{Time_signature_engraver} は @code{Staff} コンテキストに含まれ、@c
1185 さらに、@code{Staff} コンテキストは @code{grob-interface} を@c
1186 サポートしているということがわかります。@c
1187 そのため、拍子記号を透明にするためのコマンドは以下のようになります:
1188
1189 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1190 @cindex transparent property, example (transparent プロパティの例)
1191
1192 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1193 {
1194   \time 12/16
1195   \override Staff.TimeSignature #'transparent = ##t
1196   c4 b8 c d16 c d8 |
1197   g, a16 b8 c d4 e16 |
1198   e8
1199 }
1200 @end lilypond
1201
1202 @noindent
1203 拍子記号は消えました。@c
1204 しかしながら、このコマンドは拍子記号があるべき場所に隙間を残しています。@c
1205 たぶん、これは学生がその部分を埋めるための練習としては望ましいでしょうが、@c
1206 他の状況ではこの隙間は望ましくありません。@c
1207 この隙間を取り除くには、拍子記号の @code{transparent} の代わりに@c
1208 ステンシル (型、型紙) を @code{#f} にセットします:
1209
1210 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1211 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1212
1213 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1214 {
1215   \time 12/16
1216   \override Staff.TimeSignature #'stencil = ##f
1217   c4 b8 c d16 c d8 |
1218   g, a16 b8 c d4 e16 |
1219   e8
1220 }
1221 @end lilypond
1222
1223 @noindent
1224 違いは明白です: ステンシルを @code{#f} にセットすると、@c
1225 オブジェクト自体が削除されます。@c
1226 一方、オブジェクトを @code{transparent} (透明) にするとそのオブジェクトは@c
1227 消えますが、オブジェクトは不可視になっただけです。
1228
1229
1230 @subheading 色 (color)
1231
1232 @cindex color property (color プロパティ)
1233
1234 最後に、小節線の色を白にすることによって小節線を不可視にしてみましょう。@c
1235 (これには白い小節線が譜表線と交差したところで@c
1236 譜表線を見えたり見えなくしてしまうかもしれないという問題があります。@c
1237 以下のいくつかの例で、このことを予測することはできないと思うかもしれません。@c
1238 そうなる理由と、それを制御する方法についての詳細は、@c
1239 @ruser{Painting objects white} でカバーされています。@c
1240 しかしここでは色について学んでいるところなので、@c
1241 オブジェクトを白で描くことの限界を受け入れるだけにしてください。)
1242
1243 @code{grob-interface} はカラー プロパティの値はリストであると指定しています。@c
1244 しかしながら、そのリストが何であるべきなのかの説明はありません。@c
1245 カラー プロパティで必要とされるリストは実際のところ内部ユニットの中にある@c
1246 値のリストです。@c
1247 しかし、内部ユニットの中にある値を知らなくても済むように、@c
1248 カラーを指定するための手段がいくつか用意されています。@c
1249 最初の方法は @ruser{List of colors} にある最初の表でリスト アップされている 
1250 @q{標準} のカラーの 1 つを使用する方法です。@c
1251 小節線を白にするには以下のように記述します:
1252
1253 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1254 @cindex color property, example (color プロパティの例)
1255
1256 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1257 {
1258   \time 12/16
1259   \override Staff.BarLine #'color = #white
1260   c4 b8 c d16 c d8 |
1261   g, a16 b8 c d4 e16 |
1262   e8
1263 }
1264 @end lilypond
1265
1266 @noindent
1267 今度も再び小節線は見えなくなりました。@c
1268 @emph{white} の前にアポストロフィは付かないということに注意してください -- 
1269 これはシンボルではなく@emph{関数}です。@c
1270 この関数が呼び出されると、この関数はカラーを白にセットするために@c
1271 必要とされる内部値のリストを提供します。@c
1272 標準カラー リストにある他のカラーもまた関数です。@c
1273 これが機能していることをあなた自身が納得するために、@c
1274 カラーをこのリストの中にある他の関数の 1 に変更しようと思うかもしれません。
1275
1276 @cindex color, X11 (X11 カラー)
1277 @cindex X11 colors (X11 カラー)
1278
1279 @funindex x11-color
1280
1281 カラーを変えるための 2 番目の方法は、@ruser{List of colors} の 
1282 2 番目のリストの中にある X11 カラー名のリストを使用する方法です。@c
1283 しかしながら、以下のように、これらの前には X11 カラー名を内部値のリストに@c
1284 変更するもう 1 つの関数 -- @code{x11-color} -- がなければなりません:
1285
1286 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1287 @cindex color property, example (color プロパティの例)
1288
1289 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1290 {
1291   \time 12/16
1292   \override Staff.BarLine #'color = #(x11-color 'white)
1293   c4 b8 c d16 c d8 |
1294   g, a16 b8 c d4 e16 |
1295   e8
1296 }
1297 @end lilypond
1298
1299 @noindent
1300 この場合、関数 @code{x11-color} はシンボルを引数として扱うので、@c
1301 シンボルの前にはアポストロフィをつけなくてはならず、@c
1302 @code{x11-color} とシンボルは括弧で囲まれていなければならないということに@c
1303 注意してください。
1304
1305 @cindex rgb colors (RGB カラー)
1306 @cindex color, rgb (RGB カラー)
1307
1308 @funindex rgb-color
1309
1310 まだ 3 番目の方法が残っています。@c
1311 これは RGB 値を内部カラーに変換する @code{rgb-color} 関数を使用する方法です。@c
1312 この関数は赤、緑、青の輝度を表す 3 つの引数をとります。@c
1313 これらの引数は 0 から 1 までの値をとります。@c
1314 ですから、カラーを赤にセットする場合の値は @code{(rgb-color 1 0 0)} となり、@c
1315 白の場合は @code{(rgb-color 1 1 1)} となります:
1316
1317 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1318 @cindex color property, example (color プロパティの例)
1319
1320 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1321 {
1322   \time 12/16
1323   \override Staff.BarLine #'color = #(rgb-color 1 1 1)
1324   c4 b8 c d16 c d8 |
1325   g, a16 b8 c d4 e16 |
1326   e8
1327 }
1328 @end lilypond
1329
1330 最後に、X11 カラー セットの一部であるグレー スケールを用いる方法もあります。@c
1331 グレー スケールの範囲は黒 @code{'grey0'} から白 @code{'grey100'} まで 
1332 1 段階ずつあります。@c
1333 グレー スケールの使用方法を示すために、@c
1334 例の中にあるすべてのレイアウト オブジェクトのカラーをさまざまな濃度の@c
1335 グレーにセットしてみましょう:
1336
1337 @cindex StaffSymbol, example of overriding (StaffSymbol をオーバライドする例)
1338 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1339 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1340 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
1341 @cindex Stem, example of overriding (Stem をオーバライドする例)
1342 @cindex BarLine, example of overriding (BarLine をオーバライドする例)
1343 @cindex color property, example (color プロパティの例)
1344 @cindex x11-color, example of using (x11-color の使用例)
1345
1346 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1347 {
1348   \time 12/16
1349   \override Staff.StaffSymbol   #'color = #(x11-color 'grey30)
1350   \override Staff.TimeSignature #'color = #(x11-color 'grey60)
1351   \override Staff.Clef          #'color = #(x11-color 'grey60)
1352   \override Voice.NoteHead      #'color = #(x11-color 'grey85)
1353   \override Voice.Stem          #'color = #(x11-color 'grey85)
1354   \override Staff.BarLine       #'color = #(x11-color 'grey10)
1355   c4 b8 c d16 c d8 |
1356   g, a16 b8 c d4 e16 |
1357   e8
1358 }
1359 @end lilypond
1360
1361 @noindent
1362 各レイアウト オブジェクトに関連付けされているコンテキストに注意してください。@c
1363 これらのコンテキストを正しく取得することが重要であり、そうしなければコマンドは@c
1364 機能しません!@c
1365 コンテキストの中には特定のエングラーバが置かれているということを@c
1366 忘れないでください。@c
1367 エングラーバに対するデフォルト コンテキストを見つけ出すには、@c
1368 内部リファレンスのレイアウト オブジェクトからスタートして、@c
1369 そこからそれを作り出すエングラーバのページに行きます。@c
1370 エングラーバのページには、@c
1371 通常はどのコンテキストにそのエングラーバが含まれているのかが記述されています。
1372
1373
1374 @node オブジェクトのサイズ
1375 @subsection オブジェクトのサイズ
1376 @translationof Size of objects
1377
1378 @cindex changing size of objects (オブジェクトのサイズを変更する)
1379 @cindex size of objects (オブジェクトのサイズ)
1380 @cindex objects, size of (オブジェクトのサイズ)
1381 @cindex objects, changing size of (オブジェクトのサイズを変更する)
1382
1383 以前の例を見直すことから始めてみましょう (@ref{音楽表記をネストする} を@c
1384 参照してください)。@c
1385 そこでは @rglos{ossia} として新たに一時的な譜表を導入する方法が示されています。
1386
1387 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1388 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1389
1390 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1391 \new Staff ="main" {
1392        \relative g' {
1393          r4 g8 g c4 c8 d |
1394          e4 r8
1395          <<
1396            { f c c }
1397            \new Staff \with {
1398              alignAboveContext = #"main" }
1399            { f8 f c }
1400          >>
1401          r4 |
1402        }
1403      }
1404 @end lilypond
1405
1406 通常、オッシアは音部記号と拍子記号無しで記述され、メインの譜表よりもわずかに@c
1407 小さく譜刻されます。@c
1408 今度は、すでに音部記号と拍子記号を削除する方法を知っています -- 
1409 以下のようにそれぞれのステンシルを @code{#f} にセットするだけです:
1410
1411 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1412 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1413 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1414 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1415 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1416
1417 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1418 \new Staff ="main" {
1419   \relative g' {
1420     r4 g8 g c4 c8 d |
1421     e4 r8
1422     <<
1423       { f c c }
1424       \new Staff \with {
1425         alignAboveContext = #"main"
1426       }
1427       {
1428         \override Staff.Clef #'stencil = ##f
1429         \override Staff.TimeSignature #'stencil = ##f
1430         { f8 f c }
1431       }
1432     >>
1433     r4 |
1434   }
1435 }
1436 @end lilypond
1437
1438 @noindent
1439 ここで、@code{@bs{}with} 節の後にある追加の括弧のペアが、その括弧に@c
1440 囲まれているオーバライドと音楽がオッシア譜表に適用されることを保証するために、@c
1441 必要となります。
1442
1443 しかし、@code{@bs{}with} を使った譜表コンテキストの変更と 
1444 @code{@bs{}override} を使った音部記号と拍子記号のステンシルの変更との違いは@c
1445 何なのでしょうか?@c
1446 主な違いは、@code{@bs{}with} 節の中で行われた変更はそのコンテキストが@c
1447 作成されるときに行われ、そのコンテキストでは@strong{デフォルト}値として@c
1448 残ります。@c
1449 一方、音楽の中に埋め込まれた @code{@bs{}set} コマンドや 
1450 @code{@bs{}override} コマンドは動的です -- それらは音楽のある特定のポイントに@c
1451 同期して変更を行います。@c
1452 変更が @code{@bs{}unset} や @code{@bs{}revert} を使ってセットを解除されたり@c
1453 元に戻された場合、デフォルト値 -- これは @code{@bs{}with} 節で@c
1454 セットされていた場合はその値、そうでない場合は通常のデフォルト値 -- に戻ります。
1455
1456 いくつかのコンテキスト プロパティは @code{@bs{}with} 節でのみ変更可能です。@c
1457 これらは、コンテキストが作成された後では、変更されることのないプロパティです。@c
1458 @code{alignAboveContext} とそのパートナー @code{alignBelowContext} が@c
1459 そのようなプロパティです -- いったん譜表が作成されると、@c
1460 譜表のアラインメントは決定され、@c
1461 それを後で変更しようとすることには意味がありません。
1462
1463 レイアウト オブジェクトのデフォルト値は @code{@bs{}with} 節で@c
1464 セットすることもできます。@c
1465 通常の @code{@bs{}override} コマンドをコンテキスト名を省いて@c
1466 使用するだけです。@c
1467 コンテキスト名を省略するのは、そのコンテキストは明らかに 
1468 @code{@bs{}with} 節が変更しようとしているコンテキストだからです。@c
1469 実際、@code{@bs{}with} 節の中でコンテキストを指定するとエラーが発生します。
1470
1471 それでは上記の例を以下のように書き換えます:
1472
1473 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1474 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1475 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1476 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1477
1478 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1479 \new Staff ="main" {
1480   \relative g' {
1481     r4 g8 g c4 c8 d |
1482     e4 r8
1483     <<
1484       { f c c }
1485       \new Staff \with {
1486         alignAboveContext = #"main"
1487         % Don't print clefs in this staff
1488         \override Clef #'stencil = ##f
1489         % Don't print time signatures in this staff
1490         \override TimeSignature #'stencil = ##f
1491       }
1492         { f8 f c }
1493     >>
1494     r4 |
1495   }
1496 }
1497 @end lilypond
1498
1499 最後に、レイアウト オブジェクトのサイズを変更してみます。
1500
1501 いくつかのレイアウト オブジェクトはある書体から選択されたグリフとして@c
1502 作成されます。@c
1503 これには符頭、臨時記号、マークアップ、音部記号、拍子記号、強弱記号、@c
1504 歌詞が含まれます。@c
1505 それらのサイズは、これから見ていくように、@code{font-size} プロパティを@c
1506 変更することによって変更されます。@c
1507 スラーやタイのような他のレイアウト オブジェクト -- 一般には、@c
1508 スパナ オブジェクト (spanner objects) -- は個々に描かれるため、@c
1509 @code{font-size} プロパティとは関係がありません。@c
1510 一般に、それらのオブジェクトはそれらを取り付けられるオブジェクトからサイズを@c
1511 決定する (訳者: 例えば、スラーはそのスラーが付着する音符から@c
1512 そのスラーのサイズを決定する) ので、@c
1513 通常はサイズを手動で変更する必要はありません。@c
1514 さらに、符幹や小節線の長さ、連桁や他の線の太さ、譜表線の間隔などといった@c
1515 他のプロパティはすべて特別な方法で変更する必要があります。
1516
1517 オッシアの例に戻って、まず @code{font-size} を変更してみましょう。@c
1518 これを行うには 2 通りの方法があります。@c
1519 以下のようなコマンドで @code{NoteHead} のような各オブジェクト タイプの@c
1520 フォント サイズを変更する:
1521
1522 @example
1523 \override NoteHead #'font-size = #-2
1524 @end example
1525
1526 あるいは、@code{@bs{}set} を使って特別なプロパティ @code{fontSize} を@c
1527 設定するか、それを @code{@bs{}with} 節に含める 
1528 (ただし、@code{@bs{}set} は含めません) ことによって@c
1529 すべてのフォントのサイズを変更します:
1530
1531 @example
1532 \set fontSize = #-2
1533 @end example
1534
1535 これらの命令文は両方ともフォント サイズを前の値から 2 段階減らします。@c
1536 各段階でサイズはおよそ 12% 増減します。
1537
1538 それではオッシアの例でフォント サイズを変更してみましょう:
1539
1540 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1541 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1542 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1543 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1544 @cindex fontSize property, example (fontSize プロパティの例)
1545
1546 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1547 \new Staff ="main" {
1548   \relative g' {
1549     r4 g8 g c4 c8 d |
1550     e4 r8
1551     <<
1552       { f c c }
1553       \new Staff \with {
1554         alignAboveContext = #"main"
1555         \override Clef #'stencil = ##f
1556         \override TimeSignature #'stencil = ##f
1557         % Reduce all font sizes by ~24%
1558         fontSize = #-2
1559       }
1560         { f8 f c }
1561     >>
1562     r4 |
1563   }
1564 }
1565 @end lilypond
1566
1567 これでもまだ完璧ではありません。@c
1568 符頭とフラグは小さくなりましたが、符幹はそれに対して長すぎ、@c
1569 譜表線は離れすぎています。@c
1570 これらをフォント サイズの減少に比例してスケール ダウンさせる必要があります。@c
1571 次のサブ セクションでそれを行う方法について議論します。
1572
1573
1574 @node オブジェクトの長さと太さ
1575 @subsection オブジェクトの長さと太さ
1576 @translationof Length and thickness of objects
1577
1578 @cindex distances (距離)
1579 @cindex thickness (太さ)
1580 @cindex length (長さ)
1581 @cindex magstep
1582 @cindex size, changing (サイズを変更する)
1583 @cindex stem length, changing (符幹の長さを変更する)
1584 @cindex staff line spacing, changing (譜表線の間隔を変更する)
1585
1586 LilyPond では距離と長さは一般に譜表スペース -- 譜表の中の隣り合う線の間隔 -- 
1587 で測ります (特別な場合では、譜表スペースの半分で測ることもあります)。@c
1588 一方、たいていの @code{thickness} プロパティは @code{line-thickness} と@c
1589 呼ばれる内部プロパティを単位として測ります。@c
1590 例えば、デフォルトでは、ヘアピン (訳者: 強弱記号) の線の太さは 
1591 1 単位の @code{line-thickness} であり、@c
1592 音符の符幹の @code{thickness} は 1.3 です。@c
1593 けれども、それとは単位の異なる太さプロパティがあるということにも@c
1594 注意してください。@c
1595 例えば、連桁の太さプロパティは譜表スペースで測ります。
1596
1597 それでは、どうやって長さをフォント サイズに比例させるのでしょうか?@c
1598 これは、まさにこの目的のために提供されている @code{magstep} と呼ばれる@c
1599 特別な関数の助けを借りることによって達成できます。@c
1600 この関数は引数を 1 つ -- フォント サイズの変化 (前の例では #-2) -- 
1601 をとり、他のオブジェクトの縮小に比例したスケーリング ファクタを返します。@c
1602 以下のように使用します:
1603
1604 @cindex alignAboveContext property, example (alignAboveContext プロパティの例)
1605 @cindex @code{\with}, example (@code{\with} の例)
1606 @cindex Clef, example of overriding (Clef をオーバライドする例)
1607 @cindex TimeSignature, example of overriding (TimeSignature をオーバライドする例)
1608 @cindex fontSize property, example (fontSize プロパティの例)
1609 @cindex StaffSymbol, example of overriding (StaffSymbol をオーバライドする例)
1610 @cindex magstep function, example of using (magstep 関数の使用例)
1611 @cindex staff-space property, example (staff-space プロパティの例)
1612 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
1613
1614 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1615 \new Staff ="main" {
1616   \relative g' {
1617     r4 g8 g c4 c8 d |
1618     e4 r8
1619     <<
1620       { f c c }
1621       \new Staff \with {
1622         alignAboveContext = #"main"
1623         \override Clef #'stencil = ##f
1624         \override TimeSignature #'stencil = ##f
1625         fontSize = #-2
1626         % Reduce stem length and line spacing to match
1627         \override StaffSymbol #'staff-space = #(magstep -2)
1628       }
1629         { f8 f c }
1630     >>
1631     r4 |
1632   }
1633 }
1634 @end lilypond
1635
1636 @noindent
1637 符幹の長さと他の多くの長さに関係するプロパティは常に 
1638 @code{staff-space} プロパティの値と比例関係になるよう算出されるため、@c
1639 それらの長さも自動的にスケール ダウンされます。@c
1640 これはオッシアの垂直方向のスケールだけに効果を及ぼすということに@c
1641 注意してください -- 水平方向のスケールは、メインの音楽と同期するよう、@c
1642 メインの音楽のレイアウトによって決定されるため、水平方向のスケールは 
1643 @code{staff-space} の変更によっていかなる影響も受けません。@c
1644 もちろん、メインの音楽のすべてのスケールがこの方法で変更された場合、@c
1645 水平方向のスペースも影響を受けます。@c
1646 このことについては、後のレイアウト セクションで議論します。
1647
1648 そして、これでオッシアの作成は完了です。@c
1649 他のすべてのオブジェクトのサイズと長さが類似の方法で変更されるかもしれません。
1650
1651 上記の例のようなスケールのちょっとした変更に対して、小節線、連桁、ヘアピン、@c
1652 スラーなどのさまざまな描画線の太さは通常はグローバルな調節を必要としません。@c
1653 ある特定のレイアウト オブジェクトの太さを調節する必要がある場合、@c
1654 それを達成する最良の方法はそのオブジェクトの @code{thickness} プロパティを@c
1655 オーバライドすることです。@c
1656 スラーの太さを変更する例は @ref{レイアウト オブジェクトのプロパティ} で@c
1657 示されています。@c
1658 すべての描画オブジェクト (つまり、フォントから作り出される@c
1659 オブジェクトではないもの) の太さが同様の方法で変更されるかもしれません。
1660
1661
1662 @node オブジェクトの配置
1663 @section オブジェクトの配置
1664 @translationof Placement of objects
1665
1666
1667 @menu
1668 * 自動配置::
1669 * 譜表内部オブジェクト::
1670 * 譜表外部オブジェクト::
1671 @end menu
1672
1673
1674 @node 自動配置
1675 @subsection 自動配置
1676 @translationof Automatic behavior
1677
1678 @cindex within-staff objects (譜表内部オブジェクト)
1679 @cindex outside-staff objects (譜表内部オブジェクト)
1680 @cindex objects, within-staff (譜表内部オブジェクト)
1681 @cindex objects, outside-staff (譜表外部オブジェクト)
1682
1683 音楽記譜法には譜表に属するオブジェクトがいくつかあり、@c
1684 他のオブジェクトは譜表の外側に置かれるべきです。@c
1685 それらはそれぞれ譜表内部オブジェクトと譜表外部オブジェクトと呼ばれます。
1686
1687 譜表内部オブジェクトは譜表上に置かれます -- 
1688 符頭、符幹、臨時記号などです。@c
1689 通常、それらの位置は音楽自体によって決定されます -- 
1690 譜表内部オブジェクトは譜表のある特定の線と同じ垂直位置に置かれたり、@c
1691 そこに置かれるべき他のオブジェクトにくっつけられたりします。@c
1692 近接する和音の中にある符頭、符幹、臨時記号の衝突は普通は自動的に回避されます。@c
1693 これから見ていくように、この自動配置を変更することができるコマンドと@c
1694 オーバライドがあります。
1695
1696 譜表の外部にあるオブジェクトには、リハーサル記号、テキスト、@c
1697 強弱記号などがあります。@c
1698 LilyPond が持つ譜表外部オブジェクトの垂直位置のルールは、@c
1699 譜表外部オブジェクトをできるだけ譜表の近くに、しかし他のオブジェクトと@c
1700 衝突しない程度の近さに置くというものです。@c
1701 以下で示すように、LilyPond はオブジェクトを配置する順番を決定するために 
1702 @code{outside-staff-priority} プロパティを使用します。
1703
1704 最初に、LilyPond はすべての譜表内部オブジェクトを配置します。@c
1705 それから、@code{outside-staff-priority} に従って譜表外部オブジェクトを@c
1706 並べます。@c
1707 譜表外部オブジェクトは最小の @code{outside-staff-priority} を@c
1708 持つオブジェクトから順番に 1 つずつ並べられ、すでに配置されたオブジェクトと@c
1709 衝突しないように配置されます。@c
1710 つまり、2 つの譜表外部オブジェクトが同じスペースを巡って競合する場合、@c
1711 より小さな @code{outside-staff-priority} を持つオブジェクトが@c
1712 譜表の近くに配置されます。@c
1713 2 つのオブジェクトが同じ @code{outside-staff-priority} を持つ場合、@c
1714 先に発生するオブジェクトが譜表の近くに配置されます。
1715
1716 以下の例では、すべてのマークアップ テキストが同じ優先度を持っています 
1717 (なぜなら、優先度が明示的にセットされていないからです)。@c
1718 @q{Text3} が自動的に譜表の近く、@q{Text2} の@c
1719 すぐ下に納まるよう配置されていることに注意してください。
1720
1721 @cindex markup example (マークアップの例)
1722
1723 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1724 c2^"Text1"
1725 c^"Text2"
1726 c^"Text3"
1727 c^"Text4"
1728 @end lilypond
1729
1730 デフォルトでは、譜も互いにできるだけ近くなるよう配置されます 
1731 (最小間隔に従います)。@c
1732 音符が隣接する譜表に向かって長く突き出てている場合、譜を離さないと@c
1733 記譜したものが重なり合ってしまう場合にのみ譜は離されます。@c
1734 以下の例は譜の調整によって音符が @q{ぴったりと納まる} 様子を示しています:
1735
1736 @lilypond[quote,ragged-right,verbatim]
1737 <<
1738   \new Staff {
1739     \relative c' { c a, }
1740   }
1741   \new Staff {
1742     \relative c'''' { c a, }
1743   }
1744 >>
1745 @end lilypond
1746
1747
1748 @node 譜表内部オブジェクト
1749 @subsection 譜表内部オブジェクト
1750 @translationof Within-staff objects
1751
1752 これまでにコマンド @code{\voiceXXX} がスラー、タイ、運指法記号、@c
1753 符幹の向きに依存する他のすべてに対してどのように影響を与えるかを見てきました。@c
1754 これらのコマンドは、多声部音楽を記述しているときに上下する旋律を@c
1755 見分けられるようにすることを可能にするために不可欠なものです。@c
1756 しかしながら、この自動機能をオーバライドする必要がある場合もあります。@c
1757 このオーバライドは音楽全体に対しても、個々の音符に対してもできます。@c
1758 この自動機能を制御しているプロパティは各レイアウト オブジェクトの 
1759 @code{direction} プロパティです。@c
1760 まず、これは何をするのかを説明し、それから、作成済みのコマンドを@c
1761 いくつか紹介します。@c
1762 それらのコマンドを使うと、一般的な変更のための明示的なオーバライドを@c
1763 コードしなくて済みます。
1764
1765
1766 スラーやタイのようなレイアウト オブジェクトはカーブを描き、曲がり、@c
1767 上下します。@c
1768 符幹やフラグのような他のオブジェクトも上下の向きによって位置が左右します。@c
1769 @code{direction} がセットされているときは、これは自動的に制御されます。
1770
1771 @cindex down (下)
1772 @cindex up (上)
1773 @cindex center (中央)
1774 @cindex neutral (ニュートラル)
1775
1776 以下の例は、小節 1 で符幹のデフォルトの振る舞いを示しています。@c
1777 高い位置にある音符の符幹は下向きで、低い位置にある音符の符幹は上向きです。@c
1778 続いて 4 つの音符の符幹をすべて強制的に下向きにし、4 つの音符の符幹を@c
1779 すべて強制的に上向きにし、最後に 4 つの音符の符幹をデフォルトに戻します。
1780
1781 @cindex Stem, example of overriding (Stem をオーバライドする例)
1782 @cindex direction property, example (direction プロパティの例)
1783
1784 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
1785 a4 g c a
1786 \override Stem #'direction = #DOWN
1787 a g c a
1788 \override Stem #'direction = #UP
1789 a g c a
1790 \revert Stem #'direction
1791 a g c a
1792 @end lilypond
1793
1794 ここで定数 @code{DOWN} と @code{UP} を使っています。@c
1795 これらはそれぞれ値 @code{-1} と @code{+1} を持ち、定数の代わりに@c
1796 それらの数値を使うこともできまはす。@c
1797 さらに値 @code{0} を使う場合もあります。@c
1798 この値は符幹では @code{UP} を意味するものとして扱われますが、@c
1799 いくつかのオブジェクトでは @q{center} という意味になります。@c
1800 値 @code{0} を持つ定数に @code{CENTER} があります。
1801
1802 しかしながら、これらの明示的なオーバライドは普通は使われません。@c
1803 もっと簡単で定義済みのコマンドが利用可能だからです。@c
1804 ここに一般的なコマンドの表を挙げます。@c
1805 それぞれのコマンドの意味が明白でない場合は、そのコマンドの意味を述べています。
1806
1807 @multitable @columnfractions .2 .2 .25 .35
1808 @headitem 下/左
1809   @tab 上/右
1810   @tab 元に戻す
1811   @tab 効果
1812 @item @code{\arpeggioArrowDown}
1813   @tab @code{\arpeggioArrowUp}
1814   @tab @code{\arpeggioNormal}
1815   @tab 矢印が下に付く、上に付く、付かない
1816 @item @code{\dotsDown}
1817   @tab @code{\dotsUp}
1818   @tab @code{\dotsNeutral}
1819   @tab 譜表線を避けるための移動方向
1820 @item @code{\dynamicDown}
1821   @tab @code{\dynamicUp}
1822   @tab @code{\dynamicNeutral}
1823   @tab
1824 @item @code{\phrasingSlurDown}
1825   @tab @code{\phrasingSlurUp}
1826   @tab @code{\phrasingSlurNeutral}
1827   @tab Note: スラー コマンドとは別になります
1828 @item @code{\slurDown}
1829   @tab @code{\slurUp}
1830   @tab @code{\slurNeutral}
1831   @tab
1832 @item @code{\stemDown}
1833   @tab @code{\stemUp}
1834   @tab @code{\stemNeutral}
1835   @tab
1836 @item @code{\textSpannerDown}
1837   @tab @code{\textSpannerUp}
1838   @tab @code{\textSpannerNeutral}
1839   @tab スパナとして挿入されるテキストが譜表の下/上にくる
1840 @item @code{\tieDown}
1841   @tab @code{\tieUp}
1842   @tab @code{\tieNeutral}
1843   @tab
1844 @item @code{\tupletDown}
1845   @tab @code{\tupletUp}
1846   @tab @code{\tupletNeutral}
1847   @tab 連符記号が音符の下/上にくる
1848 @end multitable
1849
1850 これらの定義済みコマンドの前には @code{@bs{}once} が@c
1851 付か@strong{ない}かもしれません。@c
1852 コマンドの効果を単一の音符に制限したい場合、@c
1853 等価の @code{@bs{}once @bs{}override} コマンドを使用するか、@c
1854 あるいは、定義済みコマンドを使用して、効果を受けた音符の後に@c
1855 対応する @code{@bs{}xxxNeutral} コマンドを置かなければなりません。
1856
1857 @subheading 運指法記号 (Fingering)
1858
1859 @cindex fingering, placement (運指法記号の配置)
1860 @cindex fingering, chords (和音の運指法記号)
1861
1862 単一の音符に対する運指法記号の配置も @code{direction} プロパティによって@c
1863 制御できますが、@code{direction} を変更しても和音の運指法記号は影響を@c
1864 受けません。@c
1865 これから見ていくように、和音の中の個々の音符の運指法記号を制御するための@c
1866 特別なコマンドがあります。@c
1867 このコマンドを使うことで運指法記号を各音符の上、下、左、右に@c
1868 配置することができます。
1869
1870 まず、単一の音符の運指法記号に対する @code{direction} を効果を示します。@c
1871 最初の小節はデフォルト状態で、その後で @code{DOWN} と @code{UP} を@c
1872 指定したときの効果を示します:
1873
1874 @cindex Fingering, example of overriding (Fingering をオーバライドする例)
1875 @cindex direction property, example (direction プロパティの例)
1876
1877 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
1878 c-5 a-3 f-1 c'-5
1879 \override Fingering #'direction = #DOWN
1880 c-5 a-3 f-1 c'-5
1881 \override Fingering #'direction = #UP
1882 c-5 a-3 f-1 c'-5
1883 @end lilypond
1884
1885 しかしながら、@code{direction} プロパティをオーバライドすることは、@c
1886 手動で運指法記号を音符の上または下に配置するもっとも簡単な方法ではありません。@c
1887 運指法番号の前に @code{-} の代わりに @code{_} または @code{^} を使う方が@c
1888 普通は適切です。@c
1889 ここで、上記の例にこの方法を用いた例を挙げます:
1890
1891 @cindex fingering example (運指法記号の例)
1892
1893 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
1894 c-5 a-3 f-1 c'-5
1895 c_5 a_3 f_1 c'_5
1896 c^5 a^3 f^1 c'^5
1897 @end lilypond
1898
1899 @code{direction} プロパティは和音では無視されますが、@c
1900 方向を示す接頭辞 @code{_} と @code{^} は機能します。@c
1901 以下で示すように、デフォルトでは、運指法記号は和音の音符の@c
1902 上と下の両方に自動的に配置されます:
1903
1904 @cindex fingering example (運指法記号の例)
1905
1906 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
1907 <c-5 g-3>
1908 <c-5 g-3 e-2>
1909 <c-5 g-3 e-2 c-1>
1910 @end lilypond
1911
1912 @noindent
1913 しかし、以下で示すように、運指法番号のすべてまたはいずれかを手動で強制的に@c
1914 和音の上または下に配置するために、これはオーバライドされるかもしれません:
1915
1916 @cindex fingering example (運指法記号の例)
1917
1918 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
1919 <c-5 g-3 e-2 c-1>
1920 <c^5 g_3 e_2 c_1>
1921 <c^5 g^3 e^2 c_1>
1922 @end lilypond
1923
1924 @code{\set fingeringOrientations} コマンドを使うことによって和音の中に@c
1925 ある個々の音符の運指法記号の配置をより細かく制御することさえできます。@c
1926 このコマンドのフォーマットは以下のようなものです:
1927
1928 @example
1929 @code{\set fingeringOrientations = #'([up] [left/right] [down])}
1930 @end example
1931
1932 @noindent
1933 @code{fingeringOrientations} は @code{Voice} コンテキストのプロパティであり、@c
1934 @code{New_fingering_engraver} によって作成、使用されるため、@c
1935 @code{\set} が使用されます。
1936
1937 このプロパティには 1 つから 3 つまでの値のリストがセットされるかもしれません。@c
1938 このプロパティは運指法記号を上 (リストに @code{up} がある場合)、@c
1939 下 (リストに @code{down} がある場合)、@c
1940 左 (リストに @code{left} がある場合。リストに @code{right} がある場合は右) 
1941 に配置します。@c
1942 逆に配置位置がリストされていない場合、その位置に運指法記号は配置されません。@c
1943 LilyPond はこれらの制約を受け取り、
1944 後に続く和音の音符への運指法記号をうまく配置します。@c
1945 @code{left} と @code{right} は相互排他的であるということに注意してください -- 
1946 運指法記号は左右のどちらかにしか配置されないか、どちらにも配置されません。
1947
1948 @warning{このコマンドを使って単一の音符への運指法記号の配置を@c
1949 コントロールするには、その音符を山括弧で囲んで単一音符の和音として@c
1950 記述する必要があります。}
1951
1952 いくつか例を挙げます:
1953
1954 @cindex fingering example (運指法記号の例)
1955 @cindex @code{\set}, example of using (@code{\set} の使用例)
1956 @cindex fingeringOrientations property, example (fingeringOrientations プロパティの例)
1957
1958 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
1959 \set fingeringOrientations = #'(left)
1960 <f-2>
1961 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1962 \set fingeringOrientations = #'(left)
1963 <f-2>
1964 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1965 \set fingeringOrientations = #'(up left down)
1966 <f-2>
1967 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1968 \set fingeringOrientations = #'(up left)
1969 <f-2>
1970 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1971 \set fingeringOrientations = #'(right)
1972 <f-2>
1973 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1974 @end lilypond
1975
1976 @noindent
1977 運指法記号が少し込み合っているように見える場合は、@c
1978 @code{font-size} でサイズを下げることができます。@c
1979 デフォルト値は内部リファレンスの @code{Fingering} オブジェクトのページから 
1980 @code{-5} であることがわかるので、@code{-7} にセットしてみましょう:
1981
1982 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
1983 \override Fingering #'font-size = #-7
1984 \set fingeringOrientations = #'(left)
1985 <f-2>
1986 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1987 \set fingeringOrientations = #'(left)
1988 <f-2>
1989 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1990 \set fingeringOrientations = #'(up left down)
1991 <f-2>
1992 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1993 \set fingeringOrientations = #'(up left)
1994 <f-2>
1995 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1996 \set fingeringOrientations = #'(right)
1997 <f-2>
1998 < c-1  e-2 g-3 b-5 > 4
1999 @end lilypond 
2000
2001
2002 @node 譜表外部オブジェクト
2003 @subsection 譜表外部オブジェクト
2004 @translationof Outside-staff objects
2005
2006 譜表外部オブジェクトは自動的に衝突を回避するよう配置されます。@c
2007 小さな値の @code{outside-staff-priority} プロパティを持つオブジェクトは@c
2008 譜表の近くに配置され、他の譜表外部オブジェクトは衝突を避けるのに必要な分だけ@c
2009 離されます。@c
2010 @code{outside-staff-priority} は @code{grob-interface} の中で@c
2011 定義されているため、すべてのレイアウト  オブジェクトのプロパティです。@c
2012 デフォルトでは、すべての譜表内部オブジェクトの @code{outside-staff-priority} は 
2013 @code{#f} にセットされていて、譜表外部オブジェクトが作成されたときに@c
2014 その譜表外部オブジェクトの @code{outside-staff-priority} に適当な数値が@c
2015 セットされます。@c
2016 以下の表はデフォルトで @code{Staff} コンテキストまたは 
2017 @code{Voice} コンテキストの中に配置される@c
2018 いくつかの一般的な譜表外部オブジェクトのデフォルトの 
2019 @code{outside-staff-priority} 値を示しています。
2020
2021 @multitable @columnfractions .3 .3 .3
2022 @headitem レイアウト オブジェクト
2023   @tab 優先度
2024   @tab 以下のオブジェクトの配置を制御する:
2025 @item @code{MultiMeasureRestText}
2026   @tab @code{450}
2027   @tab 全休符上のテキスト
2028 @item @code{TextScript}
2029   @tab @code{450}
2030   @tab マークアップ テキスト
2031 @item @code{OttavaBracket}
2032   @tab @code{400}
2033   @tab オッターバ (オクターブを上下させる記号) の囲み
2034 @item @code{TextSpanner}
2035   @tab @code{350}
2036   @tab テキスト スパナ
2037 @item @code{DynamicLineSpanner}
2038   @tab @code{250}
2039   @tab すべての強弱記号
2040 @item @code{VoltaBracketSpanner}
2041   @tab @code{100}
2042   @tab Volta (番号付きのリピート) の囲み
2043 @item @code{TrillSpanner}
2044   @tab @code{50}
2045   @tab トリル記号
2046 @end multitable
2047
2048 これらのうちのいくつかのデフォルトでの配置を示している例を挙げます。
2049
2050 @cindex text spanner (テキスト スパナ)
2051 @cindex ottava bracket (オッターバ囲み)
2052
2053 @funindex \startTextSpan
2054 @funindex startTextSpan
2055 @funindex \stopTextSpan
2056 @funindex stopTextSpan
2057
2058 @cindex TextSpanner, example of overriding (TextSpanner をオーバライドする例)
2059 @cindex bound-details property, example (bound-details プロパティの例)
2060
2061 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
2062 % Set details for later Text Spanner
2063 \override TextSpanner #'(bound-details left text)
2064     = \markup { \small \bold Slower }
2065 % Place dynamics above staff
2066 \dynamicUp
2067 % Start Ottava Bracket
2068 \ottava #1
2069 c' \startTextSpan
2070 % Add Dynamic Text
2071 c\pp
2072 % Add Dynamic Line Spanner
2073 c\<
2074 % Add Text Script
2075 c^Text
2076 c c
2077 % Add Dynamic Text
2078 c\ff c \stopTextSpan
2079 % Stop Ottava Bracket
2080 \ottava #0
2081 c, c c c
2082 @end lilypond
2083
2084 この例はテキスト スパナ -- 音楽の上に置かれる延長線付きのテキスト -- の@c
2085 作成方法についても示しています。@c
2086 スパナは @code{@bs{}startTextSpan} コマンドから 
2087 @code{@bs{}stopTextSpan} コマンドまで延び、テキストのフォーマットは 
2088 @code{@bs{}override TextSpanner} コマンドによって定義されます。@c
2089 詳細は @ruser{Text spanners} を参照してください。
2090
2091 この例はさらにオッターバ囲みを作成する方法についても示しています。
2092
2093 @cindex tweaking bar number placement (小節番号の配置を調節する)
2094 @cindex bar numbers, tweaking placement (小節番号の配置を調節する)
2095 @cindex tweaking metronome mark placement (メトロノーム記号の配置を調節する)
2096 @cindex metronome mark, tweaking placement (メトロノーム記号の配置を調節する)
2097 @cindex tweaking rehearsal mark placement (リハーサル記号の配置を調節する)
2098 @cindex rehearsal marks, tweaking placement (リハーサル記号の配置を調節する)
2099
2100 小節番号、メトロノーム記号、リハーサル記号は示されていないということに@c
2101 注意してください。@c
2102 デフォルトでは、それらは @code{Score} コンテキストの中で作成され、@c
2103 それらの @code{outside-staff-priority} は @code{Staff} コンテキストの中で@c
2104 作成されるレイアウト オブジェクトとは異なり無視されます。@c
2105 小節番号、メトロノーム記号あるいはリハーサル記号を@c
2106 それらの @code{outside-staff-priority} に従って配置したいのなら、@c
2107 @code{Score} コンテキストからそれぞれ @code{Bar_number_engraver}, 
2108 @code{Metronome_mark_engraver}, @code{Mark_engraver} を削除して最上位の 
2109 @code{Staff} コンテキストに置く必要があります。@c
2110 そうした場合、それらの記号には@c
2111 以下のデフォルトの @code{outside-staff-priority} 値が与えられます:
2112
2113 @multitable @columnfractions .3 .3
2114 @headitem レイアウト オブジェクト           @tab 優先度
2115 @item @code{RehearsalMark}        @tab @code{1500}
2116 @item @code{MetronomeMark}        @tab @code{1000}
2117 @item @code{BarNumber}            @tab @code{ 100}
2118 @end multitable
2119
2120 @code{outside-staff-priority} のデフォルト値による配置が@c
2121 あなたの望みに合わない場合、いずれかのオブジェクトの優先度を@c
2122 オーバライドすることになるかもしれません。@c
2123 上記の例で、オッターバ囲みをテキスト スパナの下に配置したいとします。@c
2124 すべきことは、@code{OttavaBracket} は @code{Staff} コンテキストの中に@c
2125 作成されるということを思い出し、@code{OttavaBracket} の優先度を@c
2126 内部リファレンスか上記の表で調べて、それを @code{TextSpanner} の値よりも@c
2127 小さくすることです:
2128
2129 @cindex TextSpanner, example of overriding (TextSpanner をオーバライドする例)
2130 @cindex bound-details property, example (bound-details プロパティの例)
2131
2132 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
2133 % Set details for later Text Spanner
2134 \override TextSpanner #'(bound-details left text)
2135     = \markup { \small \bold Slower }
2136 % Place dynamics above staff
2137 \dynamicUp
2138 %Place following Ottava Bracket below Text Spanners
2139 \once \override Staff.OttavaBracket #'outside-staff-priority = #340
2140 % Start Ottava Bracket
2141 \ottava #1
2142 c' \startTextSpan
2143 % Add Dynamic Text
2144 c\pp
2145 % Add Dynamic Line Spanner
2146 c\<
2147 % Add Text Script
2148 c^Text
2149 c c
2150 % Add Dynamic Text
2151 c\ff c \stopTextSpan
2152 % Stop Ottava Bracket
2153 \ottava #0
2154 c, c c c
2155 @end lilypond
2156
2157 @cindex slurs and outside-staff-priority (スラーと outside-staff-priority)
2158 @cindex slurs and articulations (スラーとアーティキュレーション)
2159 @cindex articulations and slurs (アーティキュレーションとスラー)
2160
2161 スラーはデフォルトでは譜表内部オブジェクトに分類されています。@c
2162 しかしながら、譜表の上部に配置された音符に付くスラーは@c
2163 しばしば譜表の上に表示されます。@c
2164 このことは、スラーがまず最初に配置されるため、アーティキュレーションなどの@c
2165 譜表外部オブジェクトをあまりにも高い位置に押し上げる可能性があります。@c
2166 アーティキュレーションの @code{avoid-slur} プロパティに 
2167 @code{'inside} をセットすることでアーティキュレーションを@c
2168 スラーよりも内側に配置することができます。@c
2169 しかし、@code{avoid-slur} プロパティはアーティキュレーションの 
2170 @code{outside-staff-priority} が @code{#f} にセットされている場合にのみ@c
2171 効果を持ちます。@c
2172 代替手段として、スラーの @code{outside-staff-priority} に数値を@c
2173 セットすることによって、スラーを他の譜表外部オブジェクトとともに 
2174 @code{outside-staff-priority} 値に従って配置することができます。@c
2175 ここで、2 つの方法の効果を示す例を挙げます:
2176
2177 @lilypond[quote,verbatim,relative=2]
2178 c4( c^\markup\tiny\sharp d4.) c8
2179 c4(
2180 \once \override TextScript #'avoid-slur = #'inside
2181 \once \override TextScript #'outside-staff-priority = ##f
2182 c^\markup\tiny\sharp d4.) c8
2183 \once \override Slur #'outside-staff-priority = #500
2184 c4( c^\markup\tiny\sharp d4.) c8
2185 @end lilypond
2186
2187 @code{outside-staff-priority} は、個々のオブジェクトの垂直方向の配置を@c
2188 制御するために使用することもできます。@c
2189 しかしながら、その結果は常に望み通りになるわけではありません。@c
2190 @ref{自動配置} にある例で @qq{Text3} を @qq{Text4} の上に@c
2191 配置したいとします。@c
2192 すべきことは @code{TextScript} の優先度を内部リファレンスか上記の表で調べて、@c
2193 @qq{Text3} の優先度を大きくすることです:
2194
2195 @cindex TextScript, example of overriding (TextScript をオーバライドする例)
2196 @cindex outside-staff-priority property, example (outside-staff-priority プロパティの例)
2197
2198 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2199 c2^"Text1"
2200 c^"Text2"
2201 \once \override TextScript #'outside-staff-priority = #500
2202 c^"Text3"
2203 c^"Text4"
2204 @end lilypond
2205
2206 これはたしかに @qq{Text3} を @qq{Text4} の上に配置しています。@c
2207 しかし、@qq{Text3}を @qq{Text2} の上に配置して、@c
2208 @qq{Text4} を押し下げてもいます。@c
2209 おそらく、これはそれほど望ましい結果ではないでしょう。@c
2210 本当に望んでいることは、すべての注釈を@c
2211 譜表の上に譜表から同じ距離だけ離して配置することです。@c
2212 そうするには明らかに、テキストのためにもっと広いスペースを確保するために、@c
2213 音符を水平方向に広げる必要があります。@c
2214 これは @code{@bs{}textLengthOn} コマンドを用いることで達成できます。
2215
2216 @subheading \textLengthOn
2217
2218 @cindex notes, spreading out with text (テキストに合わせて音符の間隔を広げる)
2219
2220 @funindex \textLengthOn
2221 @funindex textLengthOn
2222 @funindex \textLengthOff
2223 @funindex textLengthOff
2224
2225 デフォルトでは、音楽のレイアウトが考慮されている限り、@c
2226 マークアップによって作り出されるテキストは水平方向のスペースと関係しません。@c
2227 @code{@bs{}textLengthOn} コマンドはこの動作を逆にして、@c
2228 テキストの配置に便宜をはかる必要がある限り、音符の間隔を広げます:
2229
2230 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2231 \textLengthOn  % Cause notes to space out to accommodate text
2232 c2^"Text1"
2233 c^"Text2"
2234 c^"Text3"
2235 c^"Text4"
2236 @end lilypond
2237
2238 デフォルトの動作に戻すためのコマンドは @code{@bs{}textLengthOff} です。@c
2239 @code{@bs{}once} は @code{@bs{}override}, @code{@bs{}set}, @code{@bs{}revert} 
2240 それに @code{@bs{}unset} だけに付けることができるということを@c
2241 思い出してください。@c
2242 そのため、@code{@bs{}textLengthOn} で @code{@bs{}once} を使うことはできません。
2243
2244 @cindex markup text, allowing collisions (マークアップ テキストの衝突を許可する)
2245
2246 マークアップ テキストは譜表の上に突き出している音符を避けます。@c
2247 このことが望ましくない場合、優先度を @code{#f} にセットすることによって@c
2248 上方向への自動再配置を Off にすることになるかもしれません。@c
2249 ここで、マークアップ テキストがそのような音符とどのように相互作用するかを@c
2250 示す例を挙げます。
2251
2252 @cindex TextScript, example of overriding (TextScript をオーバライドする例)
2253 @cindex outside-staff-priority property, example (outside-staff-priority プロパティの例)
2254
2255 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2256 % This markup is short enough to fit without collision
2257 c2^"Tex"
2258 c''2
2259 R1
2260 % This is too long to fit, so it is displaced upwards
2261 c,,2^"Text"
2262 c''2
2263 R1
2264 % Turn off collision avoidance
2265 \once \override TextScript #'outside-staff-priority = ##f
2266 c,,2^"Long Text   "
2267 c''2
2268 R1
2269 % Turn off collision avoidance
2270 \once \override TextScript #'outside-staff-priority = ##f
2271 \textLengthOn  % and turn on textLengthOn
2272 c,,2^"Long Text   "  % Spaces at end are honored
2273 c''2
2274 @end lilypond
2275
2276
2277 @subheading 強弱記号
2278
2279 @cindex tweaking dynamics placement (強弱記号の配置を調整する)
2280 @cindex dynamics, tweaking placement (強弱記号の配置を調整する)
2281
2282 通常、強弱記号は譜表の下に配置されます。@c
2283 しかしながら、@code{dynamicUp} コマンドを使うことで上に@c
2284 配置されるかもしれません。@c
2285 強弱記号は、その記号が付いている音符と垂直方向の関係で配置され、@c
2286 フレージング スラーや小節番号などの譜表内部オブジェクトのすべてよりも@c
2287 下 (あるいは上) に配置されます。@c
2288 このことは、以下の例のように、@c
2289 到底受け入れられない結果を生み出す可能性があります:
2290
2291 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=1]
2292 \clef "bass"
2293 \key aes \major
2294 \time 9/8
2295 \dynamicUp
2296 bes4.~\f\< \( bes4 bes8 des4\ff\> c16 bes\! |
2297 ees,2.~\)\mf ees4 r8 |
2298 @end lilypond
2299
2300 しかしながら、音符とそれに付けられた強弱記号が互いに近い場合、@c
2301 自動配置は後の方にある強弱記号を譜表から離すことによって衝突を避けます。@c
2302 しかし、以下のかなり不自然な例が示すように、@c
2303 それは最適な配置ではないかもしれません:
2304
2305 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2306 \dynamicUp
2307 a4\f b\mf c\mp b\p
2308 @end lilypond
2309
2310 @noindent
2311 @q{実際} の音楽で同じような状況があった場合、音符の間隔をもう少し広げて、@c
2312 すべての強弱記号が譜表から垂直方向に同じだけ離れるようにする方が@c
2313 望ましいかもしれません。@c
2314 マークアップ テキストの場合は @code{@bs{}textLengthOn} コマンドを@c
2315 用いることによってそうすることができますが、@c
2316 強弱記号には等価のコマンドがありません。@c
2317 そのため、@code{@bs{}override} コマンドを用いてそれを達成する方法を@c
2318 見出す必要があります。
2319
2320 @subheading グラフィカル オブジェクトのサイズ
2321
2322 @cindex grob sizing (グラフィカル オブジェクトのサイズを決定する)
2323 @cindex sizing grobs (グラフィカル オブジェクトのサイズを決定する)
2324
2325 まず最初に、グラフィカル オブジェクトのサイズがどのように決定されるかを@c
2326 学ばなくてはなりません。@c
2327 すべてのグラフィカル オブジェクトの内部では参照ポイントが定義され、@c
2328 それはそれらの親オブジェクトとの相対位置を決定するために使用されます。@c
2329 このポイントは親オブジェクトから垂直方向に @code{X-offset}、@c
2330 垂直方向に @code{Y-offset} 離れた位置になります。@c
2331 オブジェクトの水平方向の広がりは数値のペア @code{X-extent} で与えられ、@c
2332 そのペアはオブジェクトの左端と右端の参照ポイントとの相対関係について@c
2333 述べています。@c
2334 垂直方向の広がりも同様に数値のペア @code{Y-extent} によって与えられます。@c
2335 これらは @code{grob-interface} をサポートする@c
2336 すべてのグラフィカル オブジェクトが持つプロパティです。
2337
2338 @cindex @code{extra-spacing-width}
2339
2340 デフォルトでは、譜表外部オブジェクトには 0 の幅が与えられているため、@c
2341 水平方向で重なる可能性があります。@c
2342 これは @code{extra-spacing-width} に @code{'(+inf.0 . -inf.0)} を@c
2343 セットすることによって、左端の広がりにプラス無限大、右端の広がりに@c
2344 マイナス無限大を付け加えるというトリックによって達成されています。@c
2345 そのため、譜表外部オブジェクトが水平方向で重ならないことを保証するには、@c
2346 @code{extra-spacing-width} の値を @code{'(0 . 0)} に@c
2347 オーバライドする必要があります。@c
2348 これにより、本当の幅が明らかになります。@c
2349 以下は強弱記号テキストに対してこれを行うコマンドです:
2350
2351 @example
2352 \override DynamicText #'extra-spacing-width = #'(0 . 0)
2353 @end example
2354
2355 @noindent
2356 これが前の例で機能するかどうかを見てみましょう:
2357
2358 @cindex DynamicText, example of overriding (DynamicText をオーバライドする例)
2359 @cindex extra-spacing-width property, example (extra-spacing-width プロパティの例)
2360
2361 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2362 \dynamicUp
2363 \override DynamicText #'extra-spacing-width = #'(0 . 0)
2364 a4\f b\mf c\mp b\p
2365 @end lilypond
2366
2367 @noindent
2368 確かに強弱記号の再配置をストップさせています。@c
2369 しかし、2 つの問題が残っています。@c
2370 強弱記号を互いにもう少し離すべきであり、それらは譜表から@c
2371 同じ距離にあるほうが望ましいです。@c
2372 最初の問題は簡単に解決できます。@c
2373 @code{extra-spacing-width} を 0 にする代わりに、@c
2374 もう少し大きな値を与えるのです。@c
2375 単位は 2 本の譜表線の間隔なので、左端を 1 単位の半分だけ左に移動させ、@c
2376 右端を 1 単位の半分だけ右に移動させると解決になります:
2377
2378 @cindex DynamicText, example of overriding (DynamicText をオーバライドする例)
2379 @cindex extra-spacing-width property, example (extra-spacing-width プロパティの例)
2380
2381 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2382 \dynamicUp
2383 % Extend width by 1 staff space
2384 \override DynamicText #'extra-spacing-width = #'(-0.5 . 0.5)
2385 a4\f b\mf c\mp b\p
2386 @end lilypond
2387
2388 @noindent
2389 これで前よりも良くなりました。@c
2390 しかし、強弱記号が音符に合わせて上下するよりも、@c
2391 同じベースラインで揃っている方が望ましいでしょう。@c
2392 それを行うためのプロパティは @code{staff-padding} であり、@c
2393 後に続くセクションでカバーされています。
2394
2395
2396 @node オブジェクトの衝突
2397 @section オブジェクトの衝突
2398 @translationof Collisions of objects
2399
2400
2401 @menu
2402 * オブジェクトを移動させる::
2403 * 表記の重なりを修正する::
2404 * 実際の音楽からの例::
2405 @end menu
2406
2407
2408 @node オブジェクトを移動させる
2409 @subsection オブジェクトを移動させる
2410 @translationof Moving objects
2411
2412 @cindex moving overlapping objects (重なり合っているオブジェクトを移動させる)
2413 @cindex moving colliding objects (衝突しているオブジェクトを移動させる)
2414 @cindex moving colliding grobs (衝突しているグラフィカル オブジェクトを移動させる)
2415 @cindex objects, moving colliding (衝突しているオブジェクトを移動させる)
2416 @cindex grobs, moving colliding (衝突しているグラフィカル オブジェクトを移動させる)
2417
2418 これを聞いて驚くかもしれませんが、LilyPond は完璧ではありません。@c
2419 いくつかの記譜要素が重なりある可能性があります。@c
2420 これは遺憾なことですが、実際にはごく稀です。@c
2421 通常、オブジェクトを移動させる必要性は読みやすさや美しさのためです -- 
2422 オブジェクトの周りにもう少しスペースを多く/少なくとった方が@c
2423 より良くなるといった場合です。
2424
2425 記譜要素の重なりを解決する主要なアプローチが 3 つあります。@c
2426 それらは以下の順番で考慮されるべきです:
2427
2428 @enumerate
2429 @item
2430 重なり合っているオブジェクトの 1 つの @strong{direction} を 
2431 @ref{譜表内部オブジェクト} でリストアップした内部オブジェクトのための@c
2432 定義済みコマンドを用いて変更することになるかもしれません。@c
2433 符幹、スラー、連桁、タイ、強弱記号、テキスト、@c
2434 連符はこの方法で容易に再配置できるかもしれません。@c
2435 この方法の限界は配置の仕方の選択肢が 2 つしかないことであり、@c
2436 どちらも適当でないかもしれません。
2437
2438 @item
2439 LilyPond がレイアウト オブジェクトを配置するときに使用する@c
2440 @strong{オブジェクト プロパティ}を @code{@bs{}override} を用いて@c
2441 変更することになるかもしれません。@c
2442 オブジェクト プロパティに変更を加えることの利点は、@c
2443 (a) スペースをとる必要がある場合に他のいくつかのオブジェクトは@c
2444 自動的に移動させられます、@c
2445 (b) 1 回のオーバライドを同じオブジェクト タイプの@c
2446 インスタンスすべてに適用することができます。@c
2447 変更するプロパティには以下のものが含まれます:
2448
2449 @itemize
2450
2451 @item
2452 @code{direction}
2453
2454 これはすでに詳しくカバーされています -- 
2455 @ref{譜表内部オブジェクト} を参照してください。
2456
2457 @item
2458 @code{padding}, @code{left-padding},
2459 @code{right-padding}, @code{staff-padding}
2460
2461 @cindex padding (パディング)
2462 @cindex left-padding property (left-padding プロパティ)
2463 @cindex padding property (padding プロパティ)
2464 @cindex right-padding property (right-padding プロパティ)
2465 @cindex staff-padding property (staff-padding プロパティ)
2466
2467 あるオブジェクトが配置されるとき、そのオブジェクトの 
2468 @code{padding} プロパティが、そのオブジェクトとそのオブジェクトに@c
2469 最も隣接するオブジェクトの端との間に置かれる間隔を指定します。@c
2470 @strong{配置される最中}のオブジェクトの @code{padding} 値が@c
2471 使用されるということに注意してください。@c
2472 すでに配置されたオブジェクトの @code{padding} 値は無視されます。@c
2473 @code{padding} によって指定された間隔は @code{side-position-interface} を@c
2474 サポートするオブジェクトすべてに適用することができます。
2475
2476 臨時記号のグループの配置は、@code{padding} の代わりに、@code{left-padding} と 
2477 @code{right-padding} によって制御されます。@c
2478 これらのプロパティは @code{AccidentalPlacement} オブジェクトの中にあり、@c
2479 注意すべきことに、そのオブジェクトは 
2480 @strong{Staff} コンテキストの中にあります。@c
2481 譜刻プロセスでは、符頭が最初に譜刻され、臨時記号 (がある場合は) が@c
2482 次に符頭の左側に付け加えられます。@c
2483 このとき、臨時記号と符頭の間隔は 
2484 @code{right-padding} プロパティによって指定されます。@c
2485 そのため、@code{AccidentalPlacement} オブジェクトの 
2486 @code{right-padding} プロパティだけが臨時記号の配置に影響を与えます。
2487
2488 @code{staff-padding} プロパティは @code{padding} プロパティと@c
2489 深い関わりがあります: 
2490 @code{padding} プロパティは、@code{side-position-interface} を@c
2491 サポートするオブジェクトとそれに最隣接する他のオブジェクト 
2492 (一般には音符や譜表線) との間のスペースの最小量を制御します。@c
2493 一方、@code{staff-padding} は常に譜表の外側に配置される@c
2494 レイアウト オブジェクトにのみ適用されます -- 
2495 これは譜表の外側に配置されるオブジェクトと譜表の間に挿入されるべき@c
2496 スペースの最小量を制御します。@c
2497 @code{staff-paddin} は譜表ではなく音符との相対関係で配置されるオブジェクトには@c
2498 影響を与えないということに注意してください。@c
2499 そのようなオブジェクトに対して @code{staff-padding} のオーバライドを@c
2500 行ったとしてもエラーは起きないかもしれませんが、無視されます。
2501
2502 あなたが再配置しようとしているオブジェクトに対して求められる 
2503 @code{padding} プロパティはどれなのかを見つけるには、内部リファレンスに@c
2504 戻ってそのオブジェクトのプロパティを調べる必要があります。@c
2505 @code{padding} プロパティはあなたが再配置しようとしているオブジェクトの中には@c
2506 無いかもしれないということに注意してください。@c
2507 その場合は、そのオブジェクトに関係があるオブジェクトを調べてください。
2508
2509 すべての @code{padding} 値は譜表スペースで測られます。@c
2510 たいていのオブジェクトでは、この値はデフォルトで約 1.0 か@c
2511 それ以下にセットされています (それぞれのオブジェクトで値はさまざまです)。@c
2512 間隔を大きく (あるいは小さく) する必要がある場合、@c
2513 その値はオーバライドされるかもしれません。
2514
2515 @item
2516 @code{self-alignment-X}
2517
2518 @cindex self-alignment-X property (self-alignment-X プロパティ)
2519
2520 このプロパティを使うことで、親オブジェクトの参照ポイントに従って、@c
2521 オブジェクトを左、右、中央に揃えることができます。@c
2522 このプロパティは @code{self-alignment-interface} をサポートする@c
2523 オブジェクトすべてに対して使用することができます。@c
2524 一般に、テキストを保持するオブジェクトです。@c
2525 値は @code{Left}, @code{RIGHT}, @code{CENTER} です。@c
2526 代替手段として、@code{-1} から @code{+1} までの数値を@c
2527 指定することもできます。@c
2528 @code{-1} は左揃えであり、@code{+1} は右揃え、@c
2529 その間の数値は左揃えから右揃えへのテキストを移動させます 
2530 (訳者: @code{-0.5} であれば、左揃えと中央揃えの中間ということ)。@c
2531 @code{1} よりも大きな数値を指定することでテキストをさらに左へ、@c
2532 @code{-1} よりも小さな数値を指定することでテキストを@c
2533 さらに右へ移動させることができます。@c
2534 この値を @code{1} 増減することによる移動量はそのテキストの長さの半分です。
2535
2536 @item
2537 @code{extra-spacing-width}
2538
2539 @cindex extra-spacing-width property (extra-spacing-width プロパティ)
2540
2541 このプロパティは @code{item-interface} をサポートするオブジェクトすべてで@c
2542 利用可能です。@c
2543 このプロパティは 2 つの数値をとり、最初の数値はオブジェクトの左側に@c
2544 余白を追加し、2 番目の数値はオブジェクトの右側に余白を追加します。@c
2545 負値はオブジェクトの端を左に移動させ、正値は右に移動させます。@c
2546 そのため、オブジェクトを広くするには、最初の数値を負値にして、@c
2547 2 番目の数値を正値にする必要があります。@c
2548 すべてのオブジェクトが両方の数値を遵守するわけではないということに@c
2549 注意してください。@c
2550 例えば、@code{Accidental} オブジェクトは最初の数値 (左端) にしか@c
2551 注意を払いません。
2552
2553 @item
2554 @code{staff-position}
2555
2556 @cindex staff-position property (staff-position プロパティ)
2557
2558 @code{staff-position} は @code{staff-symbol-referencer-interface} の@c
2559 プロパティです。@c
2560 これは、譜表との相対関係で配置されるオブジェクトによってサポートされます。@c
2561 このプロパティはオブジェクトの垂直方向の位置を、譜表の中央にある譜表線から@c
2562 譜表スペースの半分を単位として、指定します。@c
2563 このプロパティは複数小節に亘る休符、タイ、異なるボイスの中にある音符といった@c
2564 レイアウト オブジェクトの衝突を解決する場合に有用です。
2565
2566 @item
2567 @code{force-hshift}
2568
2569 @cindex force-hshift property (force-hshift プロパティ)
2570
2571 和音の中で近接して配置された音符や異なるボイスの中にあって同時に起こる音符は、@c
2572 符頭の衝突を避けるために、2 つ (場合によってはそれ以上) の列に@c
2573 配置されます。@c
2574 この列は音符列と呼ばれ、その列に音符をレイアウトするために @code{NoteColumn} 
2575 と呼ばれるオブジェクトが作成されます。
2576
2577 @code{force-hshift} プロパティは @code{NoteColumn} のプロパティです 
2578 (実際には @code{note-column-interface} のプロパティです)。@c
2579 このプロパティを変更することで音符列を、音符列特有の単位 -- 
2580 すなわち、最初のボイスの中にある音符の符頭の幅 -- に従って、@c
2581 移動させることができます。@c
2582 このプロパティは、通常の 
2583 @code{@bs{}shiftOn} コマンド 
2584 (@ref{ボイスの明示的なインスタンス化} を参照してください) 
2585 が音符の衝突を解決できないような複雑な状況で使用されるべきです。@c
2586 この目的のためには、@code{extra-offset} プロパティを用いるよりも 
2587 @code{force-hshift} プロパティを用いる方が好ましいです。@c
2588 なぜなら、譜表スペースを単位とした距離を算出する必要が無く、@c
2589 @code{NoteColumn} の内外に音符を移動させることは符頭のマージといった@c
2590 他のアクションに影響を与えるからです。
2591
2592 @end itemize
2593
2594 @item
2595 最後に、他の方法がすべて失敗した場合、オブジェクトを手動で譜表の中央線からの@c
2596 垂直方向の相対位置に従って、あるいは新たに設定した位置との距離に従って、@c
2597 再配置することになるかもしれません。@c
2598 この方法の欠点は、再配置のための正確な値を算出する必要がある -- 
2599 しばしば、その算出はそれぞれのオブジェクトに対して個々に、トライ&エラーで@c
2600 行われます -- 必要があるということ、さらに、この方法による移動は 
2601 LilyPond が他のオブジェクトをすべて配置した後に行われるため、@c
2602 ユーザはその結果として起こるかもしれない衝突を@c
2603 すべて回避する責任があるということです。@c
2604 しかし、この方法の最大の問題点は、音楽が後で変更された場合に、@c
2605 再配置用の値を再び算出する必要があるということです。@c
2606 このタイプの手動再配置のために使用されるプロパティは以下のようなものです:
2607
2608 @table @code
2609 @item extra-offset
2610
2611 @cindex extra-offset property (extra-offset プロパティ)
2612
2613 このプロパティは @code{grob-interface} をサポートするレイアウト オブジェクトの@c
2614 いずれかに適用されます。@c
2615 このプロパティはペアになった数値をとり、それぞれの数値は@c
2616 水平方向と垂直方向の移動を指定します。@c
2617 負値はオブジェクトを左または下へ移動させます。@c
2618 単位は譜表スペースです。@c
2619 この移動はオブジェクトの譜刻が完了した後に行われるため、あるオブジェクトを@c
2620 任意の位置へ、他のオブジェクトに影響を与えることなく、再配置することができます。
2621
2622 @item positions
2623
2624 @cindex positions property (positions プロパティ)
2625
2626 このプロパティは、連桁、スラー、連符の傾きと高さを手動で調節するために@c
2627 最も有用なプロパティです。@c
2628 このプロパティはペアになった数値をとり、それぞれの数値は連桁、@c
2629 スラーなどの左端と右端の位置を譜表の中央線との距離で指定します。@c
2630 単位は譜表スペースです。@c
2631 けれども、スラーとフレージング スラーを任意の値で@c
2632 再配置することはできないということに注意してください。@c
2633 LilyPond はまずスラーが取り得る位置のリストを生成し、それからデフォルトでは 
2634 @qq{最良に見える} スラーを探します。@c
2635 @code{positions} がオーバライドされていた場合、@c
2636 そのリストの中からリクエストされた位置に最も近いスラーが選択されます。
2637 @end table
2638
2639 @end enumerate
2640
2641 あるオブジェクトがこれらのプロパティすべてを持っているわけではありません。@c
2642 内部リファレンスに行き、そのオブジェクトではどのプロパティが@c
2643 利用可能なのかを調べる必要があります。
2644
2645 @multitable @columnfractions .5 .5
2646 @headitem オブジェクト タイプ
2647   @tab オブジェクト名
2648 @item アーティキュレーション (Articulation)
2649   @tab @code{Script}
2650 @item 連桁 (Beam)
2651   @tab @code{Beam}
2652 @item 強弱記号 (Dynamic) (垂直方向)
2653   @tab @code{DynamicLineSpanner}
2654 @item 強弱記号 (Dynamic) (水平方向)
2655   @tab @code{DynamicText}
2656 @item 運指法記号 (Fingering)
2657   @tab @code{Fingering}
2658 @item リハーサル / テキスト記号 (Rehearsal / Text mark)
2659   @tab @code{RehearsalMark}
2660 @item スラー (Slur)
2661   @tab @code{Slur}
2662 @item テキスト -- つまり、@code{^"text"} (Text)
2663   @tab @code{TextScript}
2664 @item タイ (Tie)
2665   @tab @code{Tie}
2666 @item 連符 (Tuplet)
2667   @tab @code{TupletBracket}
2668 @end multitable
2669
2670
2671 @node 表記の重なりを修正する
2672 @subsection 表記の重なりを修正する
2673 @translationof Fixing overlapping notation
2674
2675 今度は、前のセクションで扱ったプロパティが記譜の重なりを解決する手助けを@c
2676 どのようにできるかを見ていきましょう。
2677
2678 @subheading padding プロパティ
2679
2680 @cindex padding (パディング)
2681 @cindex fixing overlapping notation (記譜要素の重なりを修正する)
2682 @cindex overlapping notation (重なり合っている記譜要素)
2683
2684 @code{padding} プロパティに値をセットすることによって、音符とその上または下に@c
2685 譜刻される記号との間の距離を増減することができます。
2686
2687 @cindex Script, example of overriding (Script をオーバライドする例)
2688 @cindex padding property, example (padding プロパティの例)
2689
2690 @lilypond[quote,fragment,relative=1,verbatim]
2691 c2\fermata
2692 \override Script #'padding = #3
2693 b2\fermata
2694 @end lilypond
2695
2696 @cindex MetronomeMark, example of overriding (MetronomeMark をオーバライドする例)
2697 @cindex padding property, example (padding プロパティの例)
2698
2699 @lilypond[quote,fragment,relative=1,verbatim]
2700 % This will not work, see below:
2701 \override MetronomeMark #'padding = #3
2702 \tempo 4=120
2703 c1
2704 % This works:
2705 \override Score.MetronomeMark #'padding = #3
2706 \tempo 4=80
2707 d1
2708 @end lilypond
2709
2710 2 番目の例では、ある特定のオブジェクトを扱うのはどのコンテキストなのかを@c
2711 突き止めることが重要であるということに注意してください。@c
2712 @code{MetronomeMark} オブジェクトは @code{Score} コンテキストの中で@c
2713 処理されるため、@code{Voice} コンテキストの中でのプロパティの変更は@c
2714 無視されます。@c
2715 更に詳細を知りたければ、@ruser{Modifying properties} を参照してください。
2716
2717 @code{outside-staff-priority} に従って配置されているオブジェクトの並びの中の@c
2718 あるオブジェクトの @code{padding} プロパティが増やされた場合、@c
2719 そのオブジェクトとそれよりも外側にあるすべてオブジェクトが移動させられます。
2720
2721
2722 @subheading left-padding と right-padding
2723
2724 @cindex left-padding property (left-padding プロパティ)
2725 @cindex right-padding property (right-padding プロパティ)
2726
2727 @code{right-padding} プロパティは臨時記号とそれが適用される音符との間の@c
2728 スペースに影響を与えます。@c
2729 このプロパティを変更することは必ずしも必要ではありませんが、@c
2730 以下の例は変更を必要とする状況の 1 つを示しています。@c
2731 B ナチュラルと B フラットの両方を保持する和音を譜刻したいとします。@c
2732 あいまいさ (あるいは多義: ここでは B が B ナチュラルと B フラットの両方に@c
2733 解釈できるということ) を避けるために、@c
2734 音符の前にナチュラル記号とフラット記号の両方を置くことにします。@c
2735 以下に、それを達成するための試みをいくつか挙げます:
2736
2737 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2738 <b bes>
2739 <b! bes>
2740 <b? bes>
2741 @end lilypond
2742
2743 どれもうまくいっていません。@c
2744 2 番目と 3 番目の (和) 音符では 2 つの記号が衝突しています。
2745
2746 これを達成するための方法の 1 つは、臨時記号のステンシルを、@c
2747 ナチュラル記号とフラット記号を望んでいる並びで保持しているマークアップで@c
2748 オーバライドすることです。@c
2749 以下のように:
2750
2751 @cindex Accidental, example of overriding (Accidental をオーバライドする例)
2752 @cindex text property, example (text プロパティの例)
2753 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
2754 @cindex AccidentalPlacement, example of overriding (AccidentalPlacement をオーバライドする例)
2755 @cindex right-padding property, example (right-padding プロパティの例)
2756
2757 @lilypond[quote,ragged-right,verbatim]
2758 naturalplusflat = \markup { \natural \flat }
2759 \relative c'' {
2760   \once \override Accidental
2761     #'stencil = #ly:text-interface::print
2762   \once \override Accidental #'text = #naturalplusflat
2763   \once \override Score.AccidentalPlacement #'right-padding = #1.5
2764   <b bes>
2765 }
2766 @end lilypond
2767
2768 @noindent
2769 これは必然的に臨時記号のステンシルをオーバライドすることになります。@c
2770 このオーバライドについては後々までカバーされません。@c
2771 ステンシル タイプは手続きでなければならず、ここでは @code{Accidental} の 
2772 @code{text} プロパティの内容 -- フラット記号が後に続くナチュラル記号 -- 
2773 を譜刻するように変更されています。@c
2774 それらの記号は @code{right-padding} のオーバライドによって@c
2775 符頭からさらに遠くへ移動させられています。
2776
2777 @noindent
2778
2779 @subheading staff-padding プロパティ
2780
2781 @cindex aligning objects on a baseline (オブジェクトをベースラインに揃える)
2782 @cindex objects, aligning on a baseline (オブジェクトをベースラインに揃える)
2783
2784 @code{staff-padding} を使うことで、強弱記号などのオブジェクトを、@c
2785 それらが取り付けられる音符の位置に依存した高さではなく、@c
2786 譜表上のある固定した高さのベースラインに揃えることができます。@c
2787 このプロパティは @code{DynamicText} のプロパティではなく、@c
2788 @code{DynamicSpanner} のプロパティです。@c
2789 この理由は、このベースラインは延長スパナを含む@strong{すべて}の強弱起動に@c
2790 等しく適用されるべきだからです。@c
2791 そのため、これは以前のセクションでの例の中にある強弱記号を@c
2792 揃えるための方法になります:
2793
2794 @cindex DynamicText, example of overriding (DynamicText をオーバライドする例)
2795 @cindex extra-spacing-width property, example (extra-spacing-width プロパティの例)
2796 @cindex DynamicLineSpanner, example of overriding (DynamicLineSpanner をオーバライドする例)
2797 @cindex staff-padding property, example (staff-padding プロパティの例)
2798
2799 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=2]
2800 \dynamicUp
2801 % Extend width by 1 unit
2802 \override DynamicText #'extra-spacing-width = #'(-0.5 . 0.5)
2803 % Align dynamics to a base line 2 units above staff
2804 \override DynamicLineSpanner #'staff-padding = #2
2805 a4\f b\mf c\mp b\p
2806 @end lilypond
2807
2808
2809 @subheading self-alignment-X プロパティ
2810
2811 以下の例はこのプロパティが、運指法記号オブジェクトの右端を親の音符の@c
2812 参照ポイントに揃えることによって、@c
2813 弦楽器の運指法記号オブジェクトと音符の符幹とのこのプロパティが衝突を@c
2814 解決している様子を示しています:
2815
2816 @cindex StringNumber, example of overriding (StringNumber をオーバライドする例)
2817 @cindex self-alignment-X property, example (self-alignment-X プロパティの例)
2818
2819 @lilypond[quote,fragment,ragged-right,verbatim,relative=3]
2820 \voiceOne
2821 < a \2 >
2822 \once \override StringNumber #'self-alignment-X = #RIGHT
2823 < a \2 >
2824 @end lilypond
2825
2826 @subheading staff-position プロパティ
2827
2828 @cindex object collision within a staff (譜内部でのオブジェクトの衝突)
2829
2830 あるボイスの中にある複数小節に亘る休符は他のボイスの中にある音符と@c
2831 衝突する可能性があります。@c
2832 このような休符は小節線と小節線の間の中央に譜刻されるため、@c
2833 LilyPond がそれと衝突するかもしれない音符を突き止めるのは非常に困難です。@c
2834 なぜなら、現在の音符間それに音符-休符間の衝突対応は、@c
2835 同時に起こる音符と休符に対してのみ行われるからです。@c
2836 以下に、このタイプの衝突の例を挙げます:
2837
2838 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right, relative=1]
2839 << {c c c c} \\ {R1} >>
2840 @end lilypond
2841
2842 ここでの最良の解決策は、複数小節に亘る休符を下へ移動させることです。@c
2843 なぜなら、その休符はボイス 2 の中にあるからです。@c
2844 @code{\voiceTwo} (すなわち、@code{<<@{...@} \\ @{...@}>>} 構造の 
2845 2 番目のボイス) のデフォルト状態では、@c
2846 @code{MultiMeasureRest} の @code{staff-position} は @code{-4} に@c
2847 セットされています。@c
2848 そのため、そのプロパティを、例えば半譜表スペース 4 つ分押し下げるには、@c
2849 @code{-8} に変更する必要があります。
2850
2851 @cindex MultiMeasureRest, example of overriding (MultiMeasureRest をオーバライドする例)
2852 @cindex staff-position property, example (staff-position プロパティの例)
2853
2854 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right, relative=1]
2855 <<
2856   {c c c c}
2857 \\
2858   \override MultiMeasureRest #'staff-position = #-8
2859   {R1}
2860 >>
2861 @end lilypond
2862
2863 これは、例えば @code{extra-offset} を使うよりも良い解決方法です。@c
2864 なぜなら、その休符の上に加線が自動的に挿入されるからです。
2865
2866 @subheading extra-offset プロパティ
2867
2868 @cindex positioning objects (オブジェクトの位置を決定する)
2869 @cindex positioning grobs (グラフィカル オブジェクトの位置を決定する)
2870 @cindex objects, positioning (オブジェクトの位置を決定する)
2871 @cindex grobs, positioning (グラフィカル オブジェクトの位置を決定する)
2872
2873 @code{extra-offset} プロパティは、あるオブジェクトの水平方向と垂直方向の@c
2874 配置を完全に制御します。
2875
2876 以下の例では、2 番目の運指法記号が少し左に、そして 1.8 譜表スペース下に@c
2877 移動させられています:
2878
2879
2880 @cindex Fingering, example of overriding (Fingering をオーバライドする例)
2881 @cindex extra-offset property, example (extra-offset プロパティの例)
2882
2883 @lilypond[quote,fragment,relative=1,verbatim]
2884 \stemUp
2885 f-5
2886 \once \override Fingering
2887     #'extra-offset = #'(-0.3 . -1.8)
2888 f-5
2889 @end lilypond
2890
2891
2892 @subheading positions プロパティ
2893
2894 @cindex controlling tuplets, slurs, phrasing slurs, and beams manually (連符、スラー、フレージング スラーそれに連桁を手動で制御する)
2895 @cindex manually controlling tuplets, slurs, phrasing slurs, and beams (連符、スラー、フレージング スラーそれに連桁を手動で制御する)
2896 @cindex tuplet beams, controlling manually (連譜の連桁を手動で制御する)
2897 @cindex slurs, controlling manually (スラーを手動で制御する)
2898 @cindex phrasing slurs, controlling manually (フレージング スラーを手動で制御する)
2899 @cindex beams, controlling manually (連桁を手動で制御する)
2900
2901 @code{positions} プロパティは連符、スラー、フレージング スラー、@c
2902 連桁の位置と傾きを手動で制御することを可能にします。@c
2903 ここで、装飾音符に付いたスラーを避けようとしているために@c
2904 醜いフレージング スラーを持つ例を挙げます。
2905
2906 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right,relative=1]
2907 r4  \acciaccatura e8\( d8 c ~c d c d\)
2908 @end lilypond
2909
2910 @noindent
2911 フレージング スラーを音符の上へ移動させることで、より良い結果が得られます:
2912
2913 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right,relative=1]
2914 r4
2915 \phrasingSlurUp
2916 \acciaccatura e8\( d8 c ~c d c d\)
2917 @end lilypond
2918
2919 @noindent
2920 しかし、何らかの理由でそうすることができない場合、それに代わる解決策は、@c
2921 @code{positions} プロパティを使ってフレージング スラーの左端を@c
2922 少し下げることです。@c
2923 この方法でも見栄えの悪さを解決できます。
2924
2925 @cindex PhrasingSlur, example of overriding (PhrasingSlur をオーバライドする例)
2926 @cindex positions property, example (positions プロパティの例)
2927
2928 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right,relative=1]
2929 r4
2930 \once \override PhrasingSlur #'positions = #'(-4 . -3)
2931 \acciaccatura
2932 e8\( d8 c ~c d c d\)
2933 @end lilypond
2934
2935 さらに、Chopin の 前奏曲 Op 28 No. 2 の左手の譜の開始部分から取った@c
2936 例を挙げます。@c
2937 連桁が上部にある音符と衝突しています:
2938
2939 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right]
2940 {
2941 \clef "bass"
2942 << {b,8 ais, b, g,} \\ {e, g e, g} >>
2943 << {b,8 ais, b, g,} \\ {e, g e, g} >>
2944 }
2945 @end lilypond
2946
2947 @noindent
2948 これは、譜表の中央線から 2 譜表スペース上の位置にある連桁の両端を、例えば、3 
2949 に手動で上げることによって解決することができます:
2950
2951 @cindex Beam, example of overriding (Beam をオーバライドする例)
2952 @cindex positions property, example (positions プロパティの例)
2953
2954 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right]
2955 {
2956   \clef "bass"
2957   <<
2958     \override Beam #'positions = #'(3 . 3)
2959     {b,8 ais, b, g,}
2960   \\
2961     {e, g e, g}
2962   >>
2963   << {b,8 ais, b, g,} \\ {e, g e, g} >>
2964 }
2965 @end lilypond
2966
2967 @noindent
2968 オーバライドの効果は継続して 2 番目のブロックのボイス 1 にも@c
2969 適用されていますが、ボイス 2 の連桁にはまったく適用されていないということに@c
2970 注意してください。
2971
2972 @subheading force-hshift プロパティ
2973
2974 @c FIXME: formatting stuff  (ie not important right now IMO)
2975 @c @a nchor Chopin finally corrected TODOgp
2976
2977 今や、@ref{私はボイスを聴いている} の最後で挙げた Chopin の例に@c
2978 どのように修正を加えるべきかを知っています。@c
2979 この例は以下のような状態でした:
2980
2981 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right]
2982 \new Staff \relative c'' {
2983   \key aes \major
2984   <<
2985     { c2 aes4. bes8 } \\
2986     { aes2 f4 fes   } \\
2987     { \voiceFour
2988       <ees c>2
2989       des2
2990     }
2991   >> |
2992   <c ees aes c>1 |
2993 }
2994 @end lilypond
2995
2996 @noindent
2997 最初の和音の下の方にある 2 つの音符 (つまり、3 番目のボイス (ボイス 4) の音符) 
2998 を上の方にある 2 つの音符の音符列からずらすべきではありません。@c
2999 これを修正するには、下の音符の @code{force-hshift} -- 
3000 これは @code{NoteColumn} のプロパティです -- を 0 にセットします。@c
3001 2 番目の和音の下の方の音符は、上の方の音符のすぐ右に置くのが最良です。@c
3002 そうするには、この音符の @code{force-hshift} を 0.5 にセットします -- 
3003 つまり、上の方の音符の音符列から符頭の幅の半分だけ右にずらします。
3004
3005 ここで、最終結果を挙げます:
3006
3007 @cindex NoteColumn, example of overriding (NoteColumn をオーバライドする例)
3008 @cindex force-hshift property, example (force-hshift プロパティの例)
3009
3010 @lilypond[quote,verbatim,fragment,ragged-right]
3011 \new Staff \relative c'' {
3012   \key aes \major
3013   <<
3014     { c2 aes4. bes8 } \\
3015     { aes2 f4 fes   } \\
3016     { \voiceFour
3017       \once \override NoteColumn #'force-hshift = #0 <ees c>2
3018       \once \override NoteColumn #'force-hshift = #0.5 des2
3019     }
3020   >> |
3021   <c ees aes c>1 |
3022 }
3023 @end lilypond
3024
3025
3026 @node 実際の音楽からの例
3027 @subsection 実際の音楽からの例
3028 @translationof Real music example
3029
3030 調整についてのセクションを、望みの出力を作り出すためにいくつかの調整を@c
3031 必要とするトリッキーな例を処理するときにとられるステップを示すことで@c
3032 締めくくります。@c
3033 この例は、記譜法についての普通ではない問題を解決するための記譜法リファレンスの@c
3034 使い方を示すために慎重に選ばれたものです。@c
3035 この例は一般的な譜刻プロセスを代表するものではありません。@c
3036 ですから、この例の複雑さでやる気を失わないでください!@c
3037 幸いなことに、このように複雑な問題は非常に稀です!
3038
3039 この例は Chopin の Première Ballade, Op. 23 の第 6 - 9 小節からとりました。@c
3040 序盤の Lento から Moderato へと移調する部分です。@c
3041 まず最初に望んでいる出力挙げますが、例があまりにも複雑になり過ぎないように@c
3042 強弱記号、運指法記号、ペダル記号は省きました。
3043
3044 @c The following should appear as music without code
3045 @c This example should not be indexed
3046 @lilypond[quote,ragged-right]
3047 rhMusic = \relative c'' {
3048   r2
3049   c4.\( g8 |
3050   \once \override Tie #'staff-position = #3.5
3051   bes1~ |
3052   \bar "||"
3053   \time 6/4
3054   \mergeDifferentlyHeadedOn
3055   \mergeDifferentlyDottedOn
3056   bes2.^\markup {\bold "Moderato"} r8
3057   <<
3058     {c,8[ d fis bes a] | }
3059   \\
3060     % Reposition the c2 to the right of the merged note
3061     {c,8~ \once \override NoteColumn #'force-hshift = #1.0
3062     % Move the c2 out of the main note column so the merge will work
3063     \shiftOnn c2}
3064   \\
3065     % Stem on the d2 must be down to permit merging
3066     {s8 \stemDown \once \override Stem #'transparent = ##t d2}
3067   \\
3068     {s4 fis4.}
3069   >>
3070   \mergeDifferentlyHeadedOff
3071   \mergeDifferentlyDottedOff
3072   g2.\)
3073 }
3074
3075 lhMusic = \relative c' {
3076   r2 <c g ees>2( |
3077   <d g, d>1)\arpeggio |
3078   r2. d,,4 r4 r |
3079   r4
3080 }
3081
3082 \score {
3083   \new PianoStaff <<
3084     \new Staff = "RH"  <<
3085       \key g \minor
3086       \rhMusic
3087     >>
3088     \new Staff = "LH" <<
3089       \key g \minor
3090       \clef "bass"
3091       \lhMusic
3092     >>
3093   >>
3094 }
3095 @end lilypond
3096
3097 まず、第 3 小節の右手パートには 4 つのボイスが必要であることに注目します。@c
3098 それぞれのボイスは、連桁でつながれた 5 つの 8 分音符、タイで結ばれた C、@c
3099 半音符の D -- これは 8 分音符の D とマージされています、@c
3100 付点 4 分音符の F シャープ -- これも同じピッチの 8 分音符とマージされています 
3101 -- です。@c
3102 他の部分はすべて単一のボイスなので、最も容易な方法は 4 つのボイスを@c
3103 必要になったときに一時的に導入する方法です。@c
3104 一時的に多声にする方法を忘れてしまったのならば、@c
3105 @ref{私はボイスを聴いている} を見てください。@c
3106 音符を 2 つの変数として入力し、譜表構造を @code{Score} ブロックの中で@c
3107 セットアップすることから始めて、それで LilyPond がデフォルトで@c
3108 どのような出力を作り出すのか見てみましょう:
3109
3110 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3111 rhMusic = \relative c'' {
3112   r2 c4. g8 |
3113   bes1~ |
3114   \time 6/4
3115   bes2. r8
3116   % Start polyphonic section of four voices
3117   <<
3118     {c,8 d fis bes a | }
3119   \\
3120     {c,8~ c2 | }
3121   \\
3122     {s8 d2 | }
3123   \\
3124     {s4 fis4. | }
3125   >>
3126   g2.
3127 }
3128
3129 lhMusic = \relative c' {
3130   r2 <c g ees>2 |
3131   <d g, d>1 |
3132   r2. d,,4 r4 r |
3133   r4
3134 }
3135
3136 \score {
3137   \new PianoStaff <<
3138     \new Staff = "RH"  <<
3139       \key g \minor
3140       \rhMusic
3141     >>
3142     \new Staff = "LH" <<
3143       \key g \minor
3144       \clef "bass"
3145       \lhMusic
3146     >>
3147   >>
3148 }
3149 @end lilypond
3150
3151 すべての音符は間違っていません。@c
3152 しかしながら、見た目は満足とは程遠いものです。@c
3153 タイは移調する拍子記号と衝突していて、第 3 小節の連桁の付け方は@c
3154 間違っていて、音符はマージされておらず、いくつかの記譜要素は欠けています。@c
3155 簡単なものから片付けていきましょう。@c
3156 連桁の付け方は手動で連桁を挿入することで修正でき、左手パートのスラーと@c
3157 右手パートのフレージング スラーは簡単に追加できます -- 
3158 なぜなら、これらはすべてチュートリアルでカバーされているからです。@c
3159 これらの修正を加えると、以下のようになります:
3160
3161 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3162 rhMusic = \relative c'' {
3163   r2 c4.\( g8 |
3164   bes1~ |
3165   \time 6/4
3166   bes2. r8
3167   % Start polyphonic section of four voices
3168   <<
3169     {c,8[ d fis bes a] | }
3170   \\
3171     {c,8~ c2 | }
3172   \\
3173     {s8 d2 | }
3174   \\
3175     {s4 fis4. | }
3176   >>
3177   g2.\)
3178 }
3179
3180 lhMusic = \relative c' {
3181   r2 <c g ees>2( |
3182   <d g, d>1) |
3183   r2. d,,4 r4 r |
3184   r4
3185 }
3186
3187 \score {
3188   \new PianoStaff <<
3189     \new Staff = "RH"  <<
3190       \key g \minor
3191       \rhMusic
3192     >>
3193     \new Staff = "LH" <<
3194       \key g \minor
3195       \clef "bass"
3196       \lhMusic
3197     >>
3198   >>
3199 }
3200 @end lilypond
3201
3202 第 1 小節は正しくなりました。@c
3203 第 2 小節にはアルペジオが含まれていて、2 重の小節線で終わります。@c
3204 この学習マニュアルではこれらのことは言及されてこなかったのに、@c
3205 どうやってやればいいのでしょうか?@c
3206 ここで、記譜法リファレンスに移行する必要があります。@c
3207 索引で @q{arpeggio} と @q{bar line} を探せばすぐに、アルペジオは 
3208 @code{@bs{}arpeggio} を和音の後に付け加えることによって作り出され、@c
3209 2 重小節線は @code{@bs{}bar "||"} コマンドによって作り出されることが@c
3210 わかります。@c
3211 それは簡単にできます。@c
3212 次に、タイと拍子記号の衝突を修正する必要があります。@c
3213 これはタイを上に移動させる方法が最善です。@c
3214 オブジェクトの移動については以前に @ref{オブジェクトを移動させる} でカバーしました。@c
3215 そこでは、譜表との相対位置で配置されるオブジェクトは、@c
3216 そのオブジェクトの @code{staff-position} プロパティを@c
3217 オーバライドすることによって、移動させることができると述べられています。@c
3218 このプロパティは譜表スペースの半分を単位として、譜表の中央線からの距離で@c
3219 指定されます。@c
3220 ですから、以下の以下のオーバライドをタイで結ばれる最初の音符の前に置けば、@c
3221 タイは中央線から 3.5 半譜表スペースだけ上の位置に移動させられます:
3222
3223 @code{\once \override Tie #'staff-position = #3.5}
3224
3225 これで第 2 小節の修正も完了で、以下のようになります:
3226
3227 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3228 rhMusic = \relative c'' {
3229   r2 c4.\( g8 |
3230   \once \override Tie #'staff-position = #3.5
3231   bes1~ |
3232   \bar "||"
3233   \time 6/4
3234   bes2. r8
3235   % Start polyphonic section of four voices
3236   <<
3237     {c,8[ d fis bes a] | }
3238   \\
3239     {c,8~ c2 | }
3240   \\
3241     {s8 d2 | }
3242   \\
3243     {s4 fis4. | }
3244   >>
3245   g2.\)
3246 }
3247
3248 lhMusic = \relative c' {
3249   r2 <c g ees>2( |
3250   <d g, d>1)\arpeggio |
3251   r2. d,,4 r4 r |
3252   r4
3253 }
3254
3255 \score {
3256   \new PianoStaff <<
3257     \new Staff = "RH"  <<
3258       \key g \minor
3259       \rhMusic
3260     >>
3261     \new Staff = "LH" <<
3262       \key g \minor
3263       \clef "bass"
3264       \lhMusic
3265     >>
3266   >>
3267 }
3268 @end lilypond
3269
3270 第 3 小節 -- Moderato セクションの開始部分 -- に取り掛かります。@c
3271 チュートリアルで @code{@bs{}markup} コマンドを使ってボールド体のテキストを@c
3272 付け加える方法を示しましたので、@q{Moderato} をボールド体で付け加えることは@c
3273 容易です。@c
3274 しかし、異なるボイスの中にある音符をマージするにはどうするのでしょうか?@c
3275 ここで、助けを求めて記譜法リファレンスに移行する必要があります。@c
3276 記譜法リファレンスで @qq{merge} を探せばすぐに、@c
3277 @ruser{Collision resolution} で符頭や付点の付き方が異なる音符を@c
3278 マージするためのコマンドにたどり着きます。@c
3279 今回の例では、多声部セクションで両方のタイプの音符をマージする 
3280 (異なる符頭を持つ音符のマージと、付点の付き方が異なる音符のマージ) 
3281 必要があるので、記譜法リファレンスで見つけた情報を使って、以下のコマンド:
3282
3283 @example
3284 \mergeDifferentlyHeadedOn
3285 \mergeDifferentlyDottedOn
3286 @end example
3287
3288 @noindent
3289 を多声部セクションの開始点に置き、以下のコマンド:
3290
3291 @example
3292 \mergeDifferentlyHeadedOff
3293 \mergeDifferentlyDottedOff
3294 @end example
3295
3296 @noindent
3297 をセクションの終了点に置きます。これで、例は以下のようになります:
3298
3299 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3300 rhMusic = \relative c'' {
3301   r2 c4.\( g8 |
3302   \once \override Tie #'staff-position = #3.5
3303   bes1~ |
3304   \bar "||"
3305   \time 6/4
3306   bes2.^\markup {\bold "Moderato"} r8
3307   \mergeDifferentlyHeadedOn
3308   \mergeDifferentlyDottedOn
3309   % Start polyphonic section of four voices
3310   <<
3311     {c,8[ d fis bes a] | }
3312   \\
3313     {c,8~ c2 | }
3314   \\
3315     {s8 d2 | }
3316   \\
3317     {s4 fis4. | }
3318   >>
3319   \mergeDifferentlyHeadedOff
3320   \mergeDifferentlyDottedOff
3321   g2.\)
3322 }
3323
3324 lhMusic = \relative c' {
3325   r2 <c g ees>2( |
3326   <d g, d>1)\arpeggio |
3327   r2. d,,4 r4 r |
3328   r4
3329 }
3330
3331 \score {
3332   \new PianoStaff <<
3333     \new Staff = "RH"  <<
3334       \key g \minor
3335       \rhMusic
3336     >>
3337     \new Staff = "LH" <<
3338       \key g \minor
3339       \clef "bass"
3340       \lhMusic
3341     >>
3342   >>
3343 }
3344 @end lilypond
3345
3346 オーバライドは 2 つの F シャープの音符をマージしましたが、@c
3347 2 つの D をマージしませんでした。@c
3348 なぜマージしなかったのでしょうか?@c
3349 その答えは記譜法リファレンスの同じセクションにあります -- 
3350 マージされる音符は反対向きの符幹を持っていなくてはならず、@c
3351 同じ音符列に 3 つ目の音符がある場合は 2 つの音符をマージさせることは@c
3352 できません。@c
3353 今回の例では、2 つの D は両方とも上向きの符幹を持っていて、@c
3354 3 つ目の音符 -- C -- が存在します。@c
3355 我々は @code{@bs{}stemDown} を用いて符幹の向きを変更する方法を知っていて、@c
3356 記譜法リファレンスも C を移動させる方法について述べています -- 
3357 @code{@bs{}shift} コマンドの 1 つを用いてシフトを行います。@c
3358 しかし、どのシフトを行えばよいのでしょうか?@c
3359 C はシフト off のボイス 2 の中にあり、2 つの D はボイス 1 とボイス 3 -- 
3360 それぞれ、シフト off とシフト on -- の中にあります。@c
3361 ですから、C が 2 つの D と衝突するのを避けるために、@c
3362 @code{@bs{}shiftOnn} を用いて C を更にシフトさせる必要があります。@c
3363 これらの変更を加えると、以下のようになります:
3364
3365 @cindex Tie, example of overriding
3366 @cindex staff-position property, example
3367
3368 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3369 rhMusic = \relative c'' {
3370   r2 c4.\( g8 |
3371   \once \override Tie #'staff-position = #3.5
3372   bes1~ |
3373   \bar "||"
3374   \time 6/4
3375   bes2.^\markup {\bold "Moderato"} r8
3376   \mergeDifferentlyHeadedOn
3377   \mergeDifferentlyDottedOn
3378   % Start polyphonic section of four voices
3379   <<
3380     {c,8[ d fis bes a] | }
3381   \\
3382     % Move the c2 out of the main note column so the merge will work
3383     {c,8~ \shiftOnn c2 | }
3384   \\
3385     % Stem on the d2 must be down to permit merging
3386     {s8 \stemDown d2 | }
3387   \\
3388     {s4 fis4. | }
3389   >>
3390   \mergeDifferentlyHeadedOff
3391   \mergeDifferentlyDottedOff
3392   g2.\)
3393 }
3394
3395 lhMusic = \relative c' {
3396   r2 <c g ees>2( |
3397   <d g, d>1)\arpeggio |
3398   r2. d,,4 r4 r |
3399   r4
3400 }
3401
3402 \score {
3403   \new PianoStaff <<
3404     \new Staff = "RH"  <<
3405       \key g \minor
3406       \rhMusic
3407     >>
3408     \new Staff = "LH" <<
3409       \key g \minor
3410       \clef "bass"
3411       \lhMusic
3412     >>
3413   >>
3414 }
3415 @end lilypond
3416
3417 もうちょっとです。@c
3418 残っている問題は 2 つだけです: 
3419 マージされた D の下向きの符幹はあるべきではなく、C は D の右側に配置した方が@c
3420 良いということです。@c
3421 以前に行った調整からこれらを行う方法を両方とも知っています: 
3422 符幹を透明にして、@code{force-hshift} プロパティを用いて C を移動させます。@c
3423 ここで、最終結果を示します:
3424
3425 @cindex NoteColumn, example of overriding
3426 @cindex force-hshift property, example
3427 @cindex Stem, example of overriding
3428 @cindex transparent property, example
3429
3430 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3431 rhMusic = \relative c'' {
3432   r2
3433   c4.\( g8 |
3434   \once \override Tie #'staff-position = #3.5
3435   bes1~ |
3436   \bar "||"
3437   \time 6/4
3438   bes2.^\markup {\bold "Moderato"} r8
3439   \mergeDifferentlyHeadedOn
3440   \mergeDifferentlyDottedOn
3441   <<
3442     {c,8[ d fis bes a] | }
3443   \\
3444     % Reposition the c2 to the right of the merged note
3445     {c,8~ \once \override NoteColumn #'force-hshift = #1.0
3446     % Move the c2 out of the main note column so the merge will work
3447     \shiftOnn c2}
3448   \\
3449     % Stem on the d2 must be down to permit merging
3450     {s8 \stemDown \once \override Stem #'transparent = ##t d2}
3451   \\
3452     {s4 fis4.}
3453   >>
3454   \mergeDifferentlyHeadedOff
3455   \mergeDifferentlyDottedOff
3456   g2.\)
3457 }
3458
3459 lhMusic = \relative c' {
3460   r2 <c g ees>2( |
3461   <d g, d>1)\arpeggio |
3462   r2. d,,4 r4 r |
3463   r4
3464 }
3465
3466 \score {
3467   \new PianoStaff <<
3468     \new Staff = "RH"  <<
3469       \key g \minor
3470       \rhMusic
3471     >>
3472     \new Staff = "LH" <<
3473       \key g \minor
3474       \clef "bass"
3475       \lhMusic
3476     >>
3477   >>
3478 }
3479 @end lilypond
3480
3481
3482 @node 更なる調整
3483 @section 更なる調整
3484 @translationof Further tweaking
3485
3486
3487 @menu
3488 * 調整のその他の使用方法::
3489 * 調整のために変数を使用する::
3490 * スタイル シート::
3491 * その他の情報源::
3492 * 処理に時間のかかる調整を避ける::
3493 * Scheme を用いた高度な調整::
3494 @end menu
3495
3496 @node 調整のその他の使用方法
3497 @subsection 調整のその他の使用方法
3498 @translationof Other uses for tweaks
3499
3500 @cindex transparent property, use of (transparent プロパティの使用方法)
3501 @cindex objects, making invisible (オブジェクトを不可視にする)
3502 @cindex removing objects (オブジェクトを削除する)
3503 @cindex objects, removing (オブジェクトを削除する)
3504 @cindex hiding objects (オブジェクトを隠す)
3505 @cindex objects, hiding (オブジェクトを隠す)
3506 @cindex invisible objects (不可視のオブジェクト)
3507 @cindex objects, invisible (不可視のオブジェクト)
3508 @cindex tying notes across voices (異なるボイスの中にある音符をタイで結ぶ)
3509
3510 @subheading 異なるボイスの中にある音符をタイで結ぶ
3511
3512 以下の例は異なるボイスの中にある音符をタイで結ぶ方法を示しています。@c
3513 通常、タイで結べるのは同じボイスの中にある 2 つ音符だけです。@c
3514 2 つのボイスを使い、そのうちの 1 つにタイで結んだ音符を置きます:
3515
3516 @lilypond[quote,fragment,relative=2]
3517 << { b8~ b8\noBeam }
3518 \\ { b[ g8] }
3519 >>
3520 @end lilypond
3521
3522 @noindent
3523 そして、そのボイスの最初の上向き符幹を消します。@c
3524 これで、タイはボイスをまたがっているように見えます:
3525
3526 @cindex Stem, example of overriding (Stem をオーバライドする例)
3527 @cindex transparent property, example (transparent プロパティの例)
3528
3529 @lilypond[quote,fragment,relative=2,verbatim]
3530 <<
3531   {
3532     \once \override Stem #'transparent = ##t
3533     b8~ b8\noBeam
3534   }
3535 \\
3536   { b[ g8] }
3537 >>
3538 @end lilypond
3539
3540 符幹は表示されなくなっただけなので、タイの長さが十分ではありません。@c
3541 符幹の @code{length} を @code{8} にセットすることで符幹を伸ばすことができます:
3542
3543 @lilypond[quote,fragment,relative=2,verbatim]
3544 <<
3545   {
3546     \once \override Stem #'transparent = ##t
3547     \once \override Stem #'length = #8
3548     b8~ b8\noBeam
3549   }
3550 \\
3551   { b[ g8] }
3552 >>
3553 @end lilypond
3554
3555 @subheading MIDI でフェルマータをシミュレートする
3556
3557 @cindex stencil property, use of (stencil プロパティの使用方法)
3558 @cindex fermata, implementing in MIDI (MIDI でフェルマータ を実装する)
3559
3560 譜表外部オブジェクトを出力から削除しようとする場合、そのオブジェクトの 
3561 @code{transparent} プロパティではなく @code{stencil} プロパティを@c
3562 オーバライドする方が通常は望ましいです。@c
3563 あるオブジェクトの @code{stencil} プロパティを 
3564 @code{#f} にセットすると、@c
3565 そのオブジェクトは出力から完全に削除されます。@c
3566 このことは、削除されたオブジェクトがそのオブジェクトとの相対位置で@c
3567 配置される他のオブジェクトの配置にまったく影響を及ぼさないということを@c
3568 意味します。
3569
3570 例えば、MIDI 出力でフェルマータをシミュレートするためにメトロノーム設定を@c
3571 変更したいとします。@c
3572 その場合、メトロノーム記号を出力に表示させたくありません。@c
3573 そして、それが 2 つのシステム (小節とその中にある表記) 間のスペースと、@c
3574 譜表上にある隣接する注釈の位置に影響を与えることを望みません。@c
3575 そのため、そのメトロノーム記号の @code{stencil} プロパティを 
3576 @code{#f} にセットする方法が最良です。@c
3577 ここで、2 つの手法の結果を示します:
3578
3579 @cindex MetronomeMark, example of overriding (MetronomeMark をオーバライドする例)
3580 @cindex transparent property, example (transparent プロパティの例)
3581
3582 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3583 \score {
3584   \relative c'' {
3585     % Visible tempo marking
3586     \tempo 4=120
3587     a4 a a
3588     \once \override Score.MetronomeMark #'transparent = ##t
3589     % Invisible tempo marking to lengthen fermata in MIDI
3590     \tempo 4=80
3591     a\fermata
3592     % New tempo for next section
3593     \tempo 4=100
3594     a a a a
3595   }
3596   \layout { }
3597   \midi { }
3598 }
3599 @end lilypond
3600
3601 @cindex MetronomeMark, example of overriding (MetronomeMark をオーバライドする例)
3602 @cindex stencil property, example (stencil プロパティの例)
3603
3604 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3605 \score {
3606   \relative c'' {
3607     % Visible tempo marking
3608     \tempo 4=120
3609     a4 a a
3610     \once \override Score.MetronomeMark #'stencil = ##f
3611     % Invisible tempo marking to lengthen fermata in MIDI
3612     \tempo 4=80
3613     a\fermata
3614     % New tempo for next section
3615     \tempo 4=100
3616     a a a a
3617   }
3618   \layout { }
3619   \midi { }
3620 }
3621 @end lilypond
3622
3623 @noindent
3624 両方の手段とも、フェルマータ部分の演奏時間を伸ばすメトロノーム記号を@c
3625 出力から削除していて、両方とも MIDI の演奏に必要な効果を与えています。@c
3626 しかし、1 番目の例の透明なメトロノーム記号がそれに続く拍子指示を@c
3627 上に押し上げているのに対して、2 番目のメトロノーム記号 (ステンシルが@c
3628 削除されたもの) は押し上げていません。
3629
3630
3631 @node 調整のために変数を使用する
3632 @subsection 調整のために変数を使用する
3633 @translationof Using variables for tweaks
3634
3635 @cindex variables, using for tweaks (調整のために変数を使用する)
3636 @cindex using variables for tweaks (調整のために変数を使用する)
3637 @cindex tweaks, using variables for (調整のために変数を使用する)
3638
3639 オーバライド コマンドはしばしば長く、入力するのが大変なものになります。@c
3640 そして、それらは完全に正しく記述されなければなりません。@c
3641 同じオーバライドが何度も使用される場合、それらを保持する変数を定義すると@c
3642 非常に役に立ちます。
3643
3644 歌詞の中のある特定の単語をボールド イタリック体で譜刻することによって、@c
3645 それらを強調したいと仮定します。@c
3646 歌詞の中では、@code{@bs{}italic} と @code{@bs{}bold} は (書式を) 変更したい@c
3647 単語や文と一緒に @code{@bs{}markup} ブロックの中に入れた場合にのみ@c
3648 機能しますが、それを毎回入力するのは大変です。@c
3649 埋め込む必要のある単語自体が、2 つのコマンドを簡単な変数を用いて使うことを@c
3650 妨げます。@c
3651 代替手段として、@code{@bs{}override} コマンドと @code{@bs{}revert} コマンドを@c
3652 使うことはできないでしょうか?
3653
3654 @example
3655 @code{\override Lyrics . LyricText #'font-shape = #'italic}
3656 @code{\override Lyrics . LyricText #'font-series = #'bold}
3657
3658 @code{\revert Lyrics . LyricText #'font-shape}
3659 @code{\revert Lyrics . LyricText #'font-series}
3660 @end example
3661
3662 これらも、強調する必要のある単語がたくさんある場合、入力するのが@c
3663 非常に大変です。@c
3664 しかしながら、これらは 2 つの変数として定義することが@emph{でき}、@c
3665 それらの変数で単語を囲むことによって使ってその単語を強調することが@c
3666 @emph{できます}。@c
3667 これらのオーバライドに変数を用いることのもう 1 つの利点は、@c
3668 ドットの両側にスペースを置く必要が無いことです。@c
3669 なぜなら、これらのオーバライドは @code{@bs{}lyricmode} の中で@c
3670 直接解釈されるわけではないからです。@c
3671 ここで変数を用いる例を挙げますが、実際には早く打ち込めるように@c
3672 もっと短い変数名を使用します:
3673
3674 @cindex LyricText, example of overriding (LyricText をオーバライドする例)
3675 @cindex font-shape property, example (font-shape プロパティの例)
3676 @cindex font-series property, example (font-series プロパティの例)
3677
3678 @lilypond[quote,verbatim]
3679 emphasize = {
3680   \override Lyrics.LyricText #'font-shape = #'italic
3681   \override Lyrics.LyricText #'font-series = #'bold
3682 }
3683 normal = {
3684   \revert Lyrics.LyricText #'font-shape
3685   \revert Lyrics.LyricText #'font-series
3686 }
3687
3688 global = { \time 4/4 \partial 4 \key c \major}
3689 SopranoMusic   = \relative c' { c4 | e4. e8 g4  g  | a a g }
3690 AltoMusic  = \relative c' { c4 | c4. c8 e4  e  | f f e }
3691 TenorMusic = \relative c  { e4 | g4. g8 c4. b8 | a8 b c d e4 }
3692 BassMusic  = \relative c  { c4 | c4. c8 c4  c  | f8 g a b c4 }
3693 VerseOne   = \lyrics { E -- | ter -- nal \emphasize Fa -- ther, \normal | strong to save, }
3694 VerseTwo   = \lyricmode { O | \emphasize Christ, \normal whose voice the | wa -- ters heard, }
3695 VerseThree = \lyricmode { O | \emphasize Ho -- ly Spi -- rit, \normal | who didst brood }
3696 VerseFour  = \lyricmode { O | \emphasize Tri -- ni -- ty \normal of | love and pow'r }
3697
3698 \score {
3699   \new ChoirStaff <<
3700     \new Staff <<
3701       \clef "treble"
3702       \new Voice = "Soprano"  { \voiceOne \global \SopranoMusic }
3703       \new Voice = "Alto" { \voiceTwo \AltoMusic }
3704       \new Lyrics \lyricsto "Soprano" { \VerseOne   }
3705       \new Lyrics \lyricsto "Soprano" { \VerseTwo   }
3706       \new Lyrics \lyricsto "Soprano" { \VerseThree }
3707       \new Lyrics \lyricsto "Soprano" { \VerseFour  }
3708     >>
3709     \new Staff <<
3710       \clef "bass"
3711       \new Voice = "Tenor" { \voiceOne \TenorMusic }
3712       \new Voice = "Bass"  { \voiceTwo \BassMusic  }
3713     >>
3714   >>
3715 }
3716 @end lilypond
3717
3718
3719 @node スタイル シート
3720 @subsection スタイル シート
3721 @translationof Style sheets
3722
3723 LilyPond が作り出す出力にはさまざまな変更を加えることができます 
3724 (詳細は @ref{出力を調整する} を参照してください)。@c
3725 しかしながら、調整を加えたい入力ファイルがたくさんあるとしたらどうでしょう?@c
3726 また、単に調整を実際の音楽表記から分離したいとしたらどうでしょう?@c
3727 これはとても簡単なことです。
3728
3729 以下の例を見てみましょう。@c
3730 @code{#()} を持つ部分を理解できなくても心配しないでください。@c
3731 @ref{Scheme を用いた高度な調整} で説明されています。
3732
3733 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
3734 mpdolce = #(make-dynamic-script (markup #:hspace 1 #:translate (cons 5 0)
3735   #:line(#:dynamic "mp" #:text #:italic "dolce" )))
3736 tempoMark = #(define-music-function (parser location markp) (string?)
3737 #{
3738   \once \override Score . RehearsalMark #'self-alignment-X = #left
3739   \once \override Score . RehearsalMark #'extra-spacing-width = #'(+inf.0 . -inf.0)
3740   \mark \markup { \bold $markp }
3741 #})
3742
3743 \relative c'' {
3744   \tempo 4=50
3745   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a | b4 bes a2
3746   \tempoMark "Poco piu mosso"
3747   cis4.\< d8 e4 fis | g8(\! fis)-. e( d)-. cis2
3748 }
3749 @end lilypond
3750
3751 この例には出力が重なり合うという問題がいくつかあり、@c
3752 @ref{オブジェクトを移動させる} のテクニックを使ってそれらを修正しています。@c
3753 そこで、さらに @code{mpdolce} 定義と @code{tempoMark} 定義に関して@c
3754 何かしてみましょう。@c
3755 それらは望みの出力を作り出していますが、@c
3756 それらを別の楽曲で使いたいとします。@c
3757 単純にそれらを各ファイルの先頭部分にカット&ペーストすることもできますが、@c
3758 わずらわしいです。@c
3759 その方法では定義は依然として入力ファイルの中にあり、@c
3760 私は個人的にすべての @code{#()} は何か醜いと感じます。@c
3761 それらを他のファイルの中に隠すことにしましょう:
3762
3763 @example
3764 %%% save this to a file called "definitions.ly"
3765 %%% これを "definitions.ly" というファイル名で保存してください
3766 mpdolce = #(make-dynamic-script (markup #:hspace 1 #:translate (cons 5 0)
3767   #:line(#:dynamic "mp" #:text #:italic "dolce" )))
3768 tempoMark = #(define-music-function (parser location markp) (string?)
3769 #@{
3770   \once \override Score . RehearsalMark #'self-alignment-X = #left
3771   \once \override Score . RehearsalMark #'extra-spacing-width = #'(+inf.0 . -inf.0)
3772   \mark \markup @{ \bold $markp @}
3773 #@})
3774 @end example
3775
3776 今度は音楽ファイルを変更しましょう 
3777 (このファイルを @file{"music.ly"} として保存してください)。
3778
3779 @c  We have to do this awkward example/lilypond-non-verbatim
3780 @c  because we can't do the \include stuff in the manual.
3781
3782 @example
3783 \include "definitions.ly"
3784
3785 \relative c'' @{
3786   \tempo 4=50
3787   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a | b4 bes a2
3788   \once \override Score.RehearsalMark #'padding = #2.0
3789   \tempoMark "Poco piu mosso"
3790   cis4.\< d8 e4 fis | g8(\! fis)-. e( d)-. cis2
3791 @}
3792 @end example
3793
3794 @lilypond[quote,ragged-right]
3795 mpdolce = #(make-dynamic-script (markup #:hspace 1 #:translate (cons 5 0)
3796   #:line(#:dynamic "mp" #:text #:italic "dolce" )))
3797 tempoMark = #(define-music-function (parser location markp) (string?)
3798 #{
3799   \once \override Score . RehearsalMark #'self-alignment-X = #left
3800   \once \override Score . RehearsalMark #'extra-spacing-width = #'(+inf.0 . -inf.0)
3801   \mark \markup { \bold $markp }
3802 #})
3803
3804 \relative c'' {
3805   \tempo 4=50
3806   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a | b4 bes a2
3807   \once \override Score.RehearsalMark #'padding = #2.0
3808   \tempoMark "Poco piu mosso"
3809   cis4.\< d8 e4 fis | g8(\! fis)-. e( d)-. cis2
3810 }
3811 @end lilypond
3812
3813 これで前よりも良くなりましたが、いくつか変更を加えることにします。@c
3814 グリッサンド (訳者: 第 1 小節の C シャープと A の間) は見え難いので、@c
3815 もっと太く、符頭に近づけます。@c
3816 メトロノーム記号を、最初の音符の上ではなく、@c
3817 音部記号の上に持ってきます。@c
3818 最後に、私の作曲の先生は @q{C} 拍子記号を嫌っているので、@c
3819 @q{4/4} に変更した方が良さそうです。
3820
3821 @file{music.ly} には変更を加えないでください。@c
3822 @file{definitions.ly} を以下のように書き換えます:
3823
3824 @example
3825 %%%  definitions.ly
3826 mpdolce = #(make-dynamic-script (markup #:hspace 1 #:translate (cons 5 0)
3827   #:line( #:dynamic "mp" #:text #:italic "dolce" )))
3828 tempoMark = #(define-music-function (parser location markp) (string?)
3829 #@{
3830   \once \override Score . RehearsalMark #'self-alignment-X = #left
3831   \once \override Score . RehearsalMark #'extra-spacing-width = #'(+inf.0 . -inf.0)
3832   \mark \markup @{ \bold $markp @}
3833 #@})
3834
3835 \layout@{
3836   \context @{ \Score
3837     \override MetronomeMark #'extra-offset = #'(-9 . 0)
3838     \override MetronomeMark #'padding = #'3
3839   @}
3840   \context @{ \Staff
3841     \override TimeSignature #'style = #'numbered
3842   @}
3843   \context @{ \Voice
3844     \override Glissando #'thickness = #3
3845     \override Glissando #'gap = #0.1
3846   @}
3847 @}
3848 @end example
3849
3850 @lilypond[quote,ragged-right]
3851 mpdolce = #(make-dynamic-script (markup #:hspace 1 #:translate (cons 5 0)
3852   #:line( #:dynamic "mp" #:text #:italic "dolce" )))
3853 tempoMark = #(define-music-function (parser location markp) (string?)
3854 #{
3855   \once \override Score . RehearsalMark #'self-alignment-X = #left
3856   \once \override Score . RehearsalMark #'extra-spacing-width = #'(+inf.0 . -inf.0)
3857   \mark \markup { \bold $markp }
3858 #})
3859
3860 \layout{
3861   \context { \Score
3862     \override MetronomeMark #'extra-offset = #'(-9 . 0)
3863     \override MetronomeMark #'padding = #'3
3864   }
3865   \context { \Staff
3866     \override TimeSignature #'style = #'numbered
3867   }
3868   \context { \Voice
3869     \override Glissando #'thickness = #3
3870     \override Glissando #'gap = #0.1
3871   }
3872 }
3873
3874 \relative c'' {
3875   \tempo 4=50
3876   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a | b4 bes a2
3877   \once \override Score.RehearsalMark #'padding = #2.0
3878   \tempoMark "Poco piu mosso"
3879   cis4.\< d8 e4 fis | g8(\! fis)-. e( d)-. cis2
3880 }
3881 @end lilypond
3882
3883 もっと良くなりました!@c
3884 今度はこれを公表したいとします。@c
3885 私の作曲の先生は @q{C} 拍子記号を嫌っていますが、@c
3886 私は幾分好きです。@c
3887 現在の @code{definitions.ly} を @code{web-publish.ly} にコピーして、@c
3888 それにを変更を加えてみましょう。@c
3889 この音楽はスクリーンに表示される PDF を作り出すことを意図したものなので、@c
3890 出力のフォントを全体に大きくすることにします。
3891
3892 @example
3893 %%%  definitions.ly
3894 mpdolce = #(make-dynamic-script (markup #:hspace 1 #:translate (cons 5 0)
3895   #:line( #:dynamic "mp" #:text #:italic "dolce" )))
3896 tempoMark = #(define-music-function (parser location markp) (string?)
3897 #@{
3898   \once \override Score . RehearsalMark #'self-alignment-X = #left
3899   \once \override Score . RehearsalMark #'extra-spacing-width = #'(+inf.0 . -inf.0)
3900   \mark \markup @{ \bold $markp @}
3901 #@})
3902
3903 #(set-global-staff-size 23)
3904 \layout@{
3905   \context @{ \Score
3906     \override MetronomeMark #'extra-offset = #'(-9 . 0)
3907     \override MetronomeMark #'padding = #'3
3908   @}
3909   \context @{ \Staff
3910   @}
3911   \context @{ \Voice
3912     \override Glissando #'thickness = #3
3913     \override Glissando #'gap = #0.1
3914   @}
3915 @}
3916 @end example
3917
3918 @lilypond[quote,ragged-right]
3919 mpdolce = #(make-dynamic-script (markup #:hspace 1 #:translate (cons 5 0)
3920   #:line( #:dynamic "mp" #:text #:italic "dolce" )))
3921 tempoMark = #(define-music-function (parser location markp) (string?)
3922 #{
3923   \once \override Score . RehearsalMark #'self-alignment-X = #left
3924   \once \override Score . RehearsalMark #'extra-spacing-width = #'(+inf.0 . -inf.0)
3925   \mark \markup { \bold $markp }
3926 #})
3927
3928 #(set-global-staff-size 23)
3929 \layout{
3930   \context { \Score
3931     \override MetronomeMark #'extra-offset = #'(-9 . 0)
3932     \override MetronomeMark #'padding = #'3
3933   }
3934   \context { \Voice
3935     \override Glissando #'thickness = #3
3936     \override Glissando #'gap = #0.1
3937   }
3938 }
3939
3940 \relative c'' {
3941   \tempo 4=50
3942   a4.\mpdolce d8 cis4--\glissando a | b4 bes a2
3943   \once \override Score.RehearsalMark #'padding = #2.0
3944   \tempoMark "Poco piu mosso"
3945   cis4.\< d8 e4 fis | g8(\! fis)-. e( d)-. cis2
3946 }
3947 @end lilypond
3948
3949 音楽ファイルの中では、単に @code{@bs{}include "definitions.ly"} を 
3950 @code{@bs{}include "web-publish.ly"} に置き換えるだけです。@c
3951 もちろん、これをもっと便利なようにすることができます。@c
3952 @file{definitions.ly} ファイルには 
3953 @code{mpdolce} と @code{tempoMark} の定義だけを持たせて、@c
3954 @file{web-publish.ly} ファイルには@c
3955 上で記述した @code{@bs{}layout} セクションだけを持たせ、@c
3956 @file{university.ly} ファイルには@c
3957 私の先生の好む出力を作り出すための調整だけを持たせます。@c
3958 @file{music.ly} の先頭部分は以下のようになります:
3959
3960 @example
3961 \include "definitions.ly"
3962
3963 %%%  Only uncomment one of these two lines!
3964 \include "web-publish.ly"
3965 %\include "university.ly"
3966 @end example
3967
3968 このアプローチは、@c
3969 あなたがパーツ一式を作っているだけだとしても役に立つ可能性があります。@c
3970 私は自分のプロジェクトのために@c
3971 半ダースの @q{スタイル シート} ファイルを使います。@c
3972 私はそれぞれの音楽ファイルを 
3973 @code{@bs{}include "../global.ly"} で始め、@c
3974 @file{gloval.ly} には以下の内容を記述しています:
3975
3976 @example
3977 %%%   global.ly
3978 \version @w{"@version{}"}
3979 #(ly:set-option 'point-and-click #f)
3980 \include "../init/init-defs.ly"
3981 \include "../init/init-layout.ly"
3982 \include "../init/init-headers.ly"
3983 \include "../init/init-paper.ly"
3984 @end example
3985
3986
3987 @node その他の情報源
3988 @subsection その他の情報源
3989 @translationof Other sources of information
3990
3991 内部リファレンスは LilyPond についての多くの情報を持っていますが、@c
3992 LilyPond の内部ファイルを調べることによってさらに多くの情報を収集することが@c
3993 できます。@c
3994 内部ファイルを探究するには、まずあなたの使っているシステム特有のディレクトリを@c
3995 見つけ出す必要があります。@c
3996 このディレクトリの場所は、(a) あなたが lilypond.org からコンパイル済みの@c
3997 バイナリをダウンロードすることによって LilyPond を手に入れたのか、@c
3998 それとも、パッケージ マネージャから LilyPond をインストールした 
3999 (つまり、Linux と一緒に配布されたか、fink や cygwin でインストールされた) 
4000 のか、(b) LilyPond はどの OS 上で使用されているのか、に依存します:
4001
4002 @strong{lilypond.org からダウンロードした}
4003
4004 @itemize @bullet
4005 @item Linux
4006
4007 @file{@var{INSTALLDIR}/lilypond/usr/share/lilypond/current/} に進んでください
4008
4009 @item MacOS X
4010
4011 @file{@var{INSTALLDIR}/LilyPond.app/Contents/Resources/share/lilypond/current/}
4012 に進んでください。@c
4013 ターミナルからこのディレクトリへ @code{cd} で移動するか、@c
4014 LilyPond アプリケーション上でコントロール クリックして 
4015 @q{Show Package Contents} を選択します。
4016
4017 @item Windows
4018
4019 @file{@var{INSTALLDIR}/LilyPond/usr/share/lilypond/current/} に@c
4020 進んでください。Windows Explorer を使います。
4021
4022
4023 @end itemize
4024
4025 @strong{パッケージ マネージャからインストールした、あるいは、@c
4026 ソースからコンパイルした}
4027
4028 @file{@var{PREFIX}/share/lilypond/@var{X.Y.Z}/} に進んでください。@c
4029 @var{PREFIX} はパッケージ マネージャか @code{configure} スクリプトによって@c
4030 セットされるものであり、@var{X.Y.Z} は LilyPond のバージョン番号です。
4031
4032 @smallspace
4033
4034 このディレクトリの中に 2 つの興味深いサブディレクトリがあります:
4035
4036 @itemize
4037 @item @file{ly/} - LilyPond フォーマットに関するファイルを保持しています
4038 @item @file{scm/} -Scheme フォーマットに関するファイルを保持しています
4039 @end itemize
4040
4041 @file{ly/} の中にあるファイルから見ていきましょう。@c
4042 @file{ly/property-init.ly} をテキスト エディタで開いてください。@c
4043 エディタはあなたが普段 @code{.ly} ファイルを編集するために使っているもので@c
4044 結構です。@c
4045 このファイルは標準の LilyPond 定義済みコマンド -- @code{@bs{}stemUp} や 
4046 @code{@bs{}slurDotted} など -- のすべての定義を保持しています。@c
4047 1 つまたは複数の @code{@bs{}override} コマンドを保持している@c
4048 変数の定義以外のものはないということがわかるでしょう。@c
4049 例えば、@code{@bs{}tieDotted} は以下のように定義されています:
4050
4051 @example
4052 tieDotted = @{
4053   \override Tie #'dash-period = #0.75
4054   \override Tie #'dash-fraction = #0.1
4055 @}
4056 @end example
4057
4058 あなたがこれらのデフォルト値を好まない場合、これらの定義済みコマンドを@c
4059 容易に再定義することができます -- 
4060 他の変数と同様に、入力ファイルの先頭で定義します。
4061
4062 以下のファイルは @file{ly/} で見つかる有用なファイルです:
4063
4064 @multitable @columnfractions .4 .6
4065 @headitem ファイル名
4066   @tab 内容
4067 @item @file{ly/engraver-init.ly}
4068   @tab エングラーバ コンテキストの定義
4069 @item @file{ly/paper-defaults-init.ly}
4070   @tab 紙面関係のデフォルトの仕様
4071 @item @file{ly/performer-init.ly}
4072   @tab パフォーマ コンテキストの定義
4073 @item @file{ly/property-init.ly}
4074   @tab すべての共通定義済みコマンドの定義
4075 @item @file{ly/spanner-init.ly}
4076   @tab スパナ関係の定義済みコマンドの定義
4077 @end multitable
4078
4079 他の設定 (マークアップ コマンドの定義など) は 
4080 @code{.scm} (Scheme) ファイルとして保存されています。@c
4081 Scheme プログラミング言語は、LilyPond 内部処理へのプログラム可能な@c
4082 インタフェイスを提供するために使用されます。@c
4083 これらのファイルについての詳しい説明は、Scheme 言語についての知識が@c
4084 必要となるため、このマニュアルの範囲外です。@c
4085 Scheme 言語とこれらのファイルを理解するには、十分な知識や時間が@c
4086 必要であるということを知っておくべきです 
4087 (@ref{Scheme チュートリアル} を参照してください)。
4088
4089 あなたがこの知識を持っているのなら、興味を持つかもしれない Scheme ファイルは@c
4090 以下のものです:
4091
4092 @multitable @columnfractions .4 .6
4093 @headitem ファイル名
4094   @tab 内容
4095 @item @file{scm/auto-beam.scm}
4096   @tab サブ 連桁のデフォルト (訳者: 8 分音符には連桁だけが使用され、@c
4097 16 分音符やそれよりも短い音符には連桁とサブ 連桁が使われるのだと思います)
4098 @item @file{scm/define-grobs.scm}
4099   @tab Grob (グラフィカル オブジェクト) プロパティのデフォルト設定
4100 @item @file{scm/define-markup-commands.scm}
4101   @tab すべてのマークアップ コマンドの仕様
4102 @item @file{scm/midi.scm}
4103   @tab MIDI 出力のデフォルト設定
4104 @item @file{scm/output-lib.scm}
4105   @tab フレット、色、臨時記号、小節線などの見た目に影響を与える設定
4106 @item @file{scm/parser-clef.scm}
4107   @tab サポートされる音部記号の定義
4108 @item @file{scm/script.scm}
4109   @tab アーティキュレーションのデフォルト設定
4110 @end multitable
4111
4112
4113 @node 処理に時間のかかる調整を避ける
4114 @subsection 処理に時間のかかる調整を避ける
4115 @translationof Avoiding tweaks with slower processing
4116
4117 LilyPond は入力ファイルの処理中に追加のチェックを行うことができます。@c
4118 これらのチェックは実行時間を伸ばしますが、適切な結果を得るのに必要とされる@c
4119 手動調整を減らすかもしれません。@c
4120 テキストや歌詞の一部が余白まではみ出す場合、これらのチェックは@c
4121 楽譜のその行を縮めてマージンの内側に収まるようにします。
4122
4123 すべての状況下で有効にするには、以下のように、音楽の中の行ではなく 
4124 @code{Score} の @code{@bs{}with} ブロックの中に@c
4125 これらのチェックのオーバライドを置くことによって、@c
4126 動作可能な状態にする必要があります:
4127
4128 @example
4129 \new Score \with @{
4130   % Makes sure text scripts and lyrics are within the paper margins
4131   \override PaperColumn #'keep-inside-line = ##t
4132   \override NonMusicalPaperColumn #'keep-inside-line = ##t
4133 @} @{
4134    ..
4135 @}
4136 @end example
4137
4138
4139 @node Scheme を用いた高度な調整
4140 @subsection Scheme を用いた高度な調整
4141 @translationof Advanced tweaks with Scheme
4142
4143 @code{@bs{}override} と @code{@bs{}tweak} コマンドを用いることで@c
4144 多くのことが可能になりますが、LilyPond のアクションを変更するもっと強力な手段が 
4145 LilyPond 内部処理へのプログラム可能なインタフェイスを通じて利用可能です。@c
4146 Scheme プログラミング言語で書かれたコードは LilyPond の内部処理に@c
4147 直接組み込むことができます。@c
4148 もちろん、それを行うには Scheme プログラミングについての基礎知識が必要であり、@c
4149 その手引きが @ref{Scheme チュートリアル} で提供されています。
4150
4151 多くの実現可能なことの 1 つの例としては、プロパティに定数をセットする代わりに 
4152 Scheme プロシージャをセットすることができます。@c
4153 このプロパティが LilyPond によってアクセスされたときに、@c
4154 このプロシージャが呼び出されます。@c
4155 このプロシージャが呼び出されたときに、このプロシージャによって決定された@c
4156 値を動的にそのプロパティにセットすることができます。@c
4157 以下の例では、符頭にその音符の譜表上での位置に従って色を付けています:
4158
4159 @cindex x11-color function, example of using (x11-color 関数の使用方法)
4160 @cindex NoteHead, example of overriding (NoteHead をオーバライドする例)
4161 @cindex color property, setting to Scheme procedure (Scheme プロシージャに color プロパティをセットする)
4162
4163 @lilypond[quote,verbatim,ragged-right]
4164 #(define (color-notehead grob)
4165   "Color the notehead according to its position on the staff."
4166   (let ((mod-position (modulo (ly:grob-property grob 'staff-position) 7)))
4167     (case mod-position
4168       ;;   Return rainbow colors
4169       ((1) (x11-color 'red    ))  ; for C
4170       ((2) (x11-color 'orange ))  ; for D
4171       ((3) (x11-color 'yellow ))  ; for E
4172       ((4) (x11-color 'green  ))  ; for F
4173       ((5) (x11-color 'blue   ))  ; for G
4174       ((6) (x11-color 'purple ))  ; for A
4175       ((0) (x11-color 'violet ))  ; for B
4176     )
4177   )
4178 )
4179
4180 \relative c' {
4181   % Arrange to obtain color from color-notehead procedure
4182   \override NoteHead #'color = #color-notehead
4183   c2 c' |
4184   b4 g8 a b4 c |
4185   c,2 a' |
4186   g1 |
4187 }
4188 \addlyrics {
4189   Some -- where o -- ver the Rain -- bow, way up high,
4190 }
4191 @end lilypond
4192
4193 @ref{Tweaking with Scheme} に、これらのプログラム可能なインタフェイスの@c
4194 使い方を示している例がもっとあります。
4195
4196